今度は美人の先生が登場なのよ!

 私は箕輪まどか。中学二年の霊能者。


 先日、産休の先生の代わりに私のクラスの副担任として現れた大沢一人先生。


 大沢先生は、女子達を一瞬にして虜にしてしまったイケメン先生だったが、教頭先生を虜にして、何とクラス担任の藤本先生を追い落とし、自分がクラス担任になった。


 その揚げ句、全校の女子生徒と女性の先生方を体育館に集め、洗脳をし始めた。


 私と同級生のボクッの柳原まりさん、そして私の彼氏の江原耕司君の妹さんの靖子ちゃん、それから靖子ちゃんの彼氏で、私のクラスメートでもある力丸卓司君は、大沢先生の野望を阻止するために体育館に乗り込んだ。


 大沢先生の気で操られている女子達が私達に襲い掛かって来たが、私のお師匠様である小松崎瑠希弥さんの助言で、私の真言と柳原さんの気を合体させて、大沢先生の洗脳を吹き飛ばした。


 大沢先生は逃亡しようとしたが、江原ッチと靖子ちゃんのお母さんである菜摘さんが瑠希弥さんと共に現れ、それを阻止した。


 それにしても、さすが菜摘さん。強いっす。憧れるっす。


 


「箕輪、柳原、本当にありがとうな」


 クラス担任に復帰した藤本先生は、大きい顔をクシャクシャにして涙を流した。


 私と柳原さんは苦笑いをするしかなかった。


 そして、大沢先生の代わりに違う先生が来るらしい。


 今度は菜摘さんが間に入り、前回のような変態先生が来ないようにしてくれた。


 ところがだ!


 別の意味で心配事が増えそうな結果になるのだ。


 


「今度、このクラスの副担任を務めることになりました、椿つばき直美です。よろしくお願いします」


 そう自己紹介したのは、まだ二十四歳の髪は栗色でロングの若い女性の先生。


 スタイルは、瑠希弥さんほどではないけど、健康的な感じの先生。


 要するに巨乳だ。しかも、美人。何人か殺気立っている女子もいる。


「み、みんな、よろしくな」


 何故か顔を赤くして言い添える藤本先生。


 傍らで、ムッとしている藤本先生の奥さんの霊が見えた。


 全く、男って奴は……。


「はい!」


 リッキー以下、クラスのバカ男子共は今にもよだれを垂らさんばかりに返事をした。


 ホームルームが終わり、私が教科書を鞄から出していると、


「箕輪さん」


と椿先生が声をかけて来た。それを羨ましそうに見るアホ男子達。


「はい、何でしょうか?」


 私は立ち上がって先生を見る。先生から、微かだけど霊能力を感じたからだ。


「気づいたのですね。私も実は見えちゃう人なんです」


 椿先生はニコッとして小声で言った。やっぱり……。


「江原菜摘先生に、貴女と協力するように言われました。よろしくね」


 椿先生は右手を差し出して来た。


「よろしくお願いします」


 椿先生と握手をした途端、私は仰天した。


(この人、もしかして瑠希弥さん以上?)


 そう、椿先生は自分の力を完璧に押さえる事ができるのだ。


 菜摘さんが指名した理由がわかった。


 事によったら、あの西園寺蘭子さんより凄い人かも……。


「まどかさん」


 するとそこへ、何かを感じ取ったのか、柳原さんが近づいて来た。


「柳原さん、貴女とも協力をするように菜摘先生に言い付かって来ました。よろしくね」


 椿先生は柳原さんにも握手を求めた。


「あ、はい」


 あれ、柳原さん、何故か顔が赤い。えええ?


 そして、柳原さんも椿先生と握手をして、先生の凄さに気づいたようだ。


「じゃあ、また英語の授業でね」


 椿先生はウィンクして教室を出て行った。


 柳原さんは、椿先生の本当の実力を知って、呆然としている。


「いいなあ、箕輪と柳原さん。椿先生と握手してたろ?」


 リッキーがアホな事を言って近づいて来た。


「靖子ちゃんに言いつけるぞ!」


 私は久しぶりに呪文を唱えた。


「ひいい!」


 リッキーは慌てて逃げて行った。


「かっこいい、椿先生。気をあそこまで自在に操れるなんて」


 柳原さんは尊敬の眼差しになっていた。


 確かに気の扱いに関して言えば、椿先生は相当な達人だ。


 サヨカ会残党がまだいるのを考えると頼もしい人。


 でも、あの胸と顔は困る。


 何でかと言うと……。


 


 放課後。


 江原ッチと下校デートをするため、いつものコンビニに向かう。


 その途中、江原ッチからメールが来た。


「まどかりん、今度来た代理の先生、美人なんだって? 写メ撮って送ってよ」


 バカめ! 何考えてるのよ、全く!


 すぐに返信する。


「後でじっくりお話しましょう、江原耕司さん」


 今頃江原ッチは絶叫しているだろう。


 


 心配事が増えたり減ったりのまどかだった。

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