本当に久しぶりにあいつが現れたのよ!
私は箕輪まどか。中二の霊能者。ちなみに「厨二病」ではない。
小倉冬子さんがサヨカ会残党に襲われ、冬子さんの幼馴染の濱口わたるさんが現れ、冬子さんを救った。
その力は、私の尊敬する西園寺蘭子さんに匹敵すると思われた。
わたるさんが倒した残党の男は、サヨカ会のかつての幹部で、職を失って路頭に迷い、冬子さんを襲ったらしい。
「サヨカ会の幹部の多くも、鴻池大仙に操られていたに過ぎません。彼らのケアも考えないと、事件が拡大してしまいますね」
私の絶対彼氏の江原耕司君のお父さんの雅功さんが言った言葉だ。
確かに、只敵を倒すだけでは、何も解決しないのだと思い知らされた。
で、ケアって何? え? やっぱり中二だな、ですって? うるさいわね!
わたるさんはしばらく江原家に留まるらしい。
みんなの準備が出来次第、一緒に新潟県の村上市に向かう予定だそうだ。
冬子さんは恋する乙女モード全開だ。
エロ兄貴が見たら、ちょっとだけショックを受けるかも。
兄貴ったら、冬子さんがすっかり回復して、昔の美貌を取り戻したのを知って、
「高校生の時に知っていれば……」
などと不届きな事を抜かしていた。
彼女の里見まゆ子さんに言いつけちゃおうかしら?
私と江原ッチの妹さんの靖子ちゃんは、コンビニで待ち合わせて一緒に登校。
途中で、親友の近藤明菜とその彼氏である美輪幸治君と合流する。
「さ、行きましょう」
私がそう言った時だった。
「お久しぶりね、箕輪さん」
目の前に美少女が現れた。
誰? マジでわかんないんすけど。
「忘れたんかい!」
その子はムッとして怒鳴る。
「あんた、性懲りもなく!」
明菜が切れる。どうしたの?
何故か、美輪君がビクッとして明菜の後ろに隠れる。
靖子ちゃんも私の後ろに隠れた。
「綾小路さやか、何の用よ!?」
明菜の怒りの理由がわかった。
そうか、こいつ、綾小路さやかか。すっかり記憶から消していた。
かつて私と付き合っていたかも知れない気がする牧野徹君と本格的に付き合い始めた女だ。
「ハリ○ンボンのお二人には用はないわ」
「何ですって!?」
私と明菜は同時に切れた。それは一番言われたくない台詞。
「私が用があるのは、あ・な・た」
さやかは美輪君に熱視線を送った。決して安○地帯ではない。
「……」
美輪君は全身総毛だったみたいだ。震えている。
「困るのよ、貴方が箕輪さん達と一緒にいると。付き合いをやめてくれない?」
さやかはニコッとして酷い事を言う。
「どういう意味よ!?」
私は嫌な予感がして、ズイッと前に進み出た。
さやかはフッと笑って私を見ると、
「決まってるじゃない? サヨカ会復活の邪魔になるからよ」
「何ですって!?」
「何だって!?」
私達は異口同音に叫んだ。
さやかはにやりとした。まるで魔女みたいな顔だ。
「さあ、美輪君、私と一緒に行きましょう」
「はい」
美輪君はさやかの術中だ。すがりつく明菜を振り払い、さやかに近づく。
「さやか、あんたって人は!」
私は激怒した。メロスでなくても、怒髪天だ。
「やる気、箕輪さん?」
さやかが気を解放した。
元々私より力は上だったけど、以前にも増して強くなっている。
サヨカ会残党のせい?
それにどうして、さやかが?
「インダラヤソワカ」
さやかが帝釈天の真言を唱える。
「危ない!」
私は靖子ちゃんと明菜を庇い、雷撃から逃れた。
「ご機嫌よう」
その隙を突き、さやかは美輪君と共に歩き去ろうとする。
「待ちなさいよ!」
私は明菜と靖子ちゃんを下がらせ、さやかを追った。
「オンマカキャラヤソワカ」
さやかが大黒天の真言を唱えた。
「く!」
私は辛うじてそれを回避し、また追いかけようと足を踏み出す。
「あんたねえ、いい加減にしなさいよ!」
明菜が私より早くさやかに追いつき、美輪君をビビらせたと噂のビンタを繰り出した。
「きゃ!」
さやかはそれをまともに食らい、地面に倒れた。
「美輪君、しっかりしなさい!」
そして明菜は美輪君にも愛のビンタ。美輪君はハッとした。
「アッキーナ」
「良かった」
明菜は美輪君が正気を取り戻したので、ニコッとした。
そして、起き上がろうとしているさやかを仁王立ちで見下ろし、
「あんたね! まどかをさんざん虐めて、牧野君と付き合うようになって、それでも飽き足らず、まだ私達にチョッカイ出そうって言うのなら、この場で私が叩きのめしてあげるわ!」
明菜の迫力には、美輪君だけでなく、私も靖子ちゃんもビビッた。
「く……」
さやかは悔しそうに明菜を睨んでいる。
「明菜さん、許してあげて」
そこにラブラブカップルの冬子さんとわたるさんが現れた。
今度は明菜がビビッた。トラウマはそう簡単には抜けないのだ。
「私には、その子の悲しみがわかるの。だから、許してあげて」
冬子さんはそう言うとさやかに近づき、彼女を立ち上がらせ、抱きしめた。
「うわあああ!」
その途端、さやかが泣き出した。大泣きだ。うるさいくらい。
「その子は、小さい頃から誰かを虐める事で、自分が人と違う能力を持っている事を忘れようとして来たんです。だから、まどかさんには彼女の味方でいて欲しい」
わたるさんは爽やかな笑顔で言った。何だか、キュンとしてしまった。
「まどかちゃんは以前、私が八木麗華さんと戦った時、私を庇ってくれたわよね。あの時は本当に嬉しかった。だから、この子にもその優しさで接してほしいの」
冬子さんは涙ぐんで私を見る。私も涙ぐみそうになった。
「はい」
私は零れ落ちた涙を拭い、頷いた。
今回はいろいろと思い出したまどかだった。
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