サヨカ会残党退治に出かけるのよ!

 私は箕輪まどか。中二の霊能者。ちなみに、美少女でもある。


 ……。


 本日は、ノーコメントで。


 


 この前、かつての同級生の綾小路さやかが久しぶりに現れ、私達を追いつめた。


 しかし、彼氏の美輪幸治君を思う近藤明菜の怒りがさやかの力を凌駕し、勝利した。


 そこにやって来た小倉冬子さんと幼馴染みの浜口わたるさんの計らいで、さやかは明菜の制裁を免れた。


 考えてみれば、さやかも犠牲者なのだ。


 きっと操られていたのだろう。


 と、思った。


 放課後、大人しくなったさやかを連れて、私の彼氏の江原耕司君の邸にある道場に行くと、意外な事実がわかった。


「さやかさんは洗脳されていませんよ。自分の意志でサヨカ会復活を手助けしようとしたのです」


 さやかを霊視し、深層心理まで覗いた結果を、江原ッチのお父さんである雅功さんが教えてくれた。


「こいつ、やっぱりそういう奴なのよ!」


 明菜が激高する。さやかはすっかり怯え、私の陰に隠れた。


「それは違います。さやかさんは言葉巧みにサヨカ会に誘導されたのです」


 雅功さんは明菜を落ち着かせて続ける。明菜はキョトンとしてしまった。


「どういう事ですか?」


 美輪君が代わりに尋ねた。


「さやかさんは、孤独に対する恐怖が普通の人に比べて強いのです。彼等はそこを巧みに突き、さやかさんを仲間に引き入れたのですよ」


 雅功さんは私達を見渡して答えてくれた。


 そうか。さやかは強がりを言うけど、本当は寂しがり屋だったのか。


 私と一緒ね。


「それは違う」


 私の陰に隠れているくせに、さやかは私の心の声を盗み聞き、そう囁く。


「何がよ!?」


 私は思わず大声でさやかに言う。


「だって、あんた、寂しがりなんかじゃないでしょ?」


 さやかは涙目で抗議するように言った。


 うう。そう言われると、一言もない。


「何故そんな事をしたのでしょうか?」


 小松崎瑠希弥さんが尋ねた。


 相変わらず、瑠希弥さんが話すと、江原ッチと美輪君がうっとりするのはムカつく。


 明菜は美輪君の脇腹を思い切りつねった。


「いて!」

 

 美輪君は思わず飛び上がる。


「江原耕司さん、後でお話があります」


 私はいつもより怖い言い方で江原ッチの背後で囁く。


「ひいい!」


 江原ッチは痙攣けいれんしそうになった。


「それは、さやかさんの力を必要としたからです。操ったままでは、さやかさんは力を発揮できないからです」


 雅功さんが答えた。


「なるほど」


 私達は揃って納得した。


「急がないといけません。サヨカ会残党は、日本各地で霊能者を拉致しているようです。彼等が力を蓄える前に叩かないと」


 江原ッチのお母さんの菜摘さんが言った。


「週末、新潟県の村上市に行きます」


 雅功さんは瑠希弥さんと私を見た。そして、最後に美輪君を見る。


「今回の戦いには、美輪君の力が不可欠です。是非、同行して下さい」


 雅功さんの言葉が終わらないうちに、明菜が叫ぶ。


「だったら、私も連れて行って下さい」


 雅功さんは、明菜の申し出に思わず菜摘さんと顔を見合わせた。


「俺からもお願いします。アッキーナが近くにいた方が、守り易いですから」


 美輪君が進み出て言う。明菜は感激しているようだ。


「わかりました」


 雅功さんは菜摘さんに目配せして応じ、続ける。


「浜口さんには先に出かけてもらって、西園寺さん達と落ち合ってもらう手筈です」


「私はここに残り、靖子、冬子さん、まどかさんのお兄さんを守ります」


 菜摘さんが言った。え? エロ兄貴もヤバいの?


 でも、菜摘さんと靖子ちゃんと冬子さんとエロ兄貴だと、靖子ちゃんは大丈夫だろうけど、冬子さんと菜摘さんが、別の意味で危ないかも知れない。


 そう思った私はある提案をした。


「兄の恋人の里見まゆ子さんも一緒に守ってあげて下さい」


「そうですね。そうしましょう」


 菜摘さんは、私が何故そんな事を提案したのか理由を聞かずに受け入れてくれた。


 良かった、面倒臭い事にならなくて。


 私達はサヨカ会対策を練り、フォーメーションを考えた。


 雅功さんの運転で、美輪君と明菜と江原ッチ。


 瑠希弥さんの運転で、私とさやか。


 私は江原ッチと別々なのが悲しいが、瑠希弥さんと江原ッチを同じ車内にしたくないので諦めた。


 さやかは、今度こそ本当に反省したようなので、メンバーに加えたのだが、明菜が未だに敵視しているので、この中では比較的顔見知りの私と一緒に行く事になったのだ。


「俺もまどかりんと同じ車がいいなあ」


 江原ッチは嬉しい事を言ってくれたが、その目は私ではなく、瑠希弥さんを見ていた。


「江原耕司様、後でお話を致したく存じます」


 さっきよりも怖い敬語で言う。


 江原ッチは蒼ざめた。


 いよいよ最終決戦。


 まさか、とうとう最終回が近いのかと、また不安になるまどかだった。

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