奇麗なお姉さんと出会ったのよ!PART2

 私は箕輪まどか。中学生だけど、優れた霊能者よ。


 あれ? 美少女は言わないの?


 霊能者は強調しなくて良いから、「美少女」は忘れないでよ。


 あ、私、誰と話してるのかしら?




 という事で、夏休み。


 私と絶対彼氏の江原耕司君は、家の近くにあるM市の市営プールに来ている。


 プールデートと言いたいところなんだけど、今日の目的は除霊。


 親友の近藤明菜が彼氏の美輪幸治君と来た時、幽霊騒ぎがあったのだ。


 昔から、市営プールにはその手の話はある。


 私は何回も来ているけど、見た事がないので、都市伝説だと思っていた。


 でも、明菜と美輪君の話を聞くと、そうでもないらしい事がわかって来た。


「いるわね、確かに」


 私は、ビキニの水着をバッチリ決めて言った。


 誰よ、今「パット詰め過ぎだぞ」って言ったの? 失礼ね!


「ああ、確かにいるね。女の子だ」


 隣に立つ江原ッチも、小島○しおバリのブーメランパンツだ。


 目のやり場に困るんですけど……。


 え? さっきからジッと見てるじゃないか、ですって!?


 バ、馬鹿な事言わないでよ! そ、そんな訳ないでしょ!


「カッコいい、誰あの子?」


 周りにいる同年代の女子達が江原君に向ける熱い視線を感じて、私は優越感に浸った。


「こっちだよ、まどかりん」


 江原ッチが私の手を握って駆け出す。周囲から、


「イヤーッ!」


と絶叫が聞こえた。ムフフ。勝ったわ。


 


 私達が辿り着いたのは、流れるプールの中にある渦巻きプールだった。


 そこは十五歳未満禁止のところだ。別にエッチなところではない。


 すぐ隣には、水深五メートルのプールがある。


「あそこ」


 江原ッチが指差す。私もしゃがんでいる女の子の霊に気づいた。小学校五年生。去年の夏にここで溺死している。


「でもあの子、悪霊じゃないよ、江原ッチ。只あそこにいるだけみたい」


「そうだね。アッキーナと美輪の話が、大袈裟だったのかな?」


 江原ッチは腕組みして考え込んだ。私は女の子の霊に話しかけようと彼女に近づいた。


「来るな!」


 急に女の子の顔つきが変わる。


「な、何だ!?」


 江原ッチも女の子の異変に気づいた。


「わわ!」


 突然、深いプールの水が竜巻のように巻き上げられた。


 辺りにいた人達が仰天して逃げ出す。


「何なの、一体!?」


 私は女の子に話しかけた。しかし、女の子は収まらない。


「うるさい! 来るな!」


 女の子の顔は、まさに悪霊そのものになっていた。


 何がきっかけなのかわからず、私と江原ッチはその場を離れた。


「あれ?」


 すると、女の子はまた穏やかな顔になり、その場にしゃがんだ。


 高く上がっていた水も元に戻った。


「どういう事?」


 私と江原ッチは顔を見合わせてしまった。


「こういう事です」


 後ろで声がした。


 振り返ると、ボン、キュ、ボンという音が似合う、凄いプロポーションのお姉さんが立っていた。


 但し、水着は着ていない。黒いスーツとスカート姿なのに、スタイルの良さがわかる。


 しかも、かけている眼鏡も黒。何だか、カッコいい。


「見ていてね」


 そのお姉さんが女の子に近づいたが、女の子はしゃがんだままだ。


「わかった、まどかちゃん?」


「は?」


 どうしてこの人、私の事を知ってるの?


「この子は他の子が自分と同じ目に遭わないように、十五歳未満の子が近づくと怒ったのよ」


 お姉さんの解説で、私と江原ッチは納得した。


「ところで、貴女は?」


 私はデレデレしている江原ッチを睨みつけてから、お姉さんに尋ねた。


「私は、小松崎こまつざき瑠希弥るきや。西園寺先生のところで修行中の霊能者よ」


「ああ!」


 そうか、この人が蘭子お姉さんのお弟子さん?


 凄い。オーラが「パねえ」っす。


「ありがとう。でも、貴女ももう行くべきところに行かないとね」


 私はその女の子の優しさに感動したのだが、やはり諭さなければならない。


「うん。ありがとう、まどかお姉さん」


 その子はニコッと微笑むと、天へと昇って行った。


「お見事です。さすが、西園寺先生が誉めておられただけの事はありますね」


 小松崎さんが手を叩いて言ってくれた。


「いやあ、それほどでも……」


 私は照れ臭くなって、頭を掻いた。すると小松崎さんはニコッとして、


「それじゃ、私はこれで……」


と立ち去りかけたのだが、


「キャーッ!」


と叫ぶと、流れるプールに落ちてしまった。


「……」


 私と江原ッチは顔を見合わせてしまった。


 何で落ちたの? つまずいた様子はなかったのに?


 もしかして、芸人体質?


「ああん、ずぶ濡れェ」


 そう言いながらプールから上がった小松崎さんを素早く助ける江原ッチ。


「大丈夫ですか、瑠希弥さん?」


 何故名前で呼ぶの、江原ッチ!?


「ええ。ありがとう」


 小松崎さんは江原ッチをチワワのような目で見る。 


「いえ、どういたしまして……」


 赤くなる江原ッチ。


 まさかとは思うけど、この人、恋のライバル?


 天然ぽいところが、余計に気になる。


 


 ここへ来て急に不安なまどかだった。

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