壮絶な展開になったのよ!
私は箕輪まどか。中学一年生。彼氏あり、まだキスはしてない。
ああ。今までとは別の意味で恥ずかしいわ。
今までは、「どんだけ傲慢?」っていう自己紹介だったけど、今回は何よ!?
どうして私が、キスは未経験だって事まで暴露されなければならないのよ!
え? 牧野君とはどうなのかって?
ノーコメント。何もお答えする立場にはありません。
テレビで偉い人達がよく言っているのを真似てみたわ。
先日、あの悪役の権化である綾小路さやかが、また私の「抵抗勢力」になりつつあるのを知った。
内閣が変わったからって、あいつまで変わる必要ないのにね。
私だって、新聞くらい読むのよ。
綾小路じゃなくて、O沢って苗字にすればお似合いだわ。
オホホホ。
私は第一級警戒態勢を敷き、登校した。
しかし、さやかは挨拶こそしたが、何も仕掛けて来ないし、話しかけても来ない。
引っかかった? あいつ、私をからかっただけなの?
何かムカつくんですけど。
「まあ、何事もないようで、良かったじゃない」
親友の近藤明菜が言ってくれた。
彼女は、私の彼の江原耕司君の親友である美輪幸治君と付き合い始めたらしい。
だから最近、妙にテンションが高いのだ。
江原君と美輪君は、「やり過ぎコウジ」と呼ばれ、付近の不良達に恐れられているとか。
美輪君はイケメンなのに目つきが鋭くて、そんな雰囲気なんだけど、江原ッチに関しては、どうしてもそうは見えない。
霊感が強いもの同士だから余計わかるのだが、彼は美輪君に付き合って喧嘩をしているだけのようだ。
美輪君は小学校低学年の時に苛められていた江原ッチを守ってくれたのだ。
義理堅い江原ッチは、その恩に報いているのだという。
でも、喧嘩は良くない。
私はダブルデートをした時、江原ッチと美輪君に切々と喧嘩をしないように言った。
明菜も同調してくれて、江原ッチと美輪君は、喧嘩をしない約束をしてくれた。
「まどかりんも、喧嘩するなよ」
江原ッチに言われてしまった。どうやら、明菜がチクッたらしい。
「わ、私は喧嘩じゃなくて、説得をしただけだよ」
何とか誤魔化そうとしたが、江原ッチはニヤッとして、
「説得するのに、金○蹴り上げるのは良くないよ、まどかりん」
私は真っ赤になって明菜を睨んだ。
何でそんな事まで喋るのよ、この! 明菜は知らん顔だ。
そんな事があったりしたが、私達二人はその後も何回か仲良くダブルデートをし、江原ッチ達も喧嘩をしなくなったようだ。
ホッとした。
しかし、ホッとしたのも束の間だった。
(まどかりん、助けてくれ!)
江原ッチの叫び声が聞こえた。
(どうしたの、江原ッチ?)
慌てて呼びかけたが、彼からの返事はなかった。
不安になった私は、明菜と共に江原ッチの中学校に向かった。
「え?」
以前感じた、嫌な気。それが、彼の中学校全体を覆いつくしている。
それは、あの綾小路さやかの気だ。
あいつ、江原ッチに何をしたのよ!?
怒りに震えながら、私は校庭に駆け込んだ。
「あーら、お早いお着きね、箕輪さん」
さやかがいた。しかも何故か、江原ッチと手を繋いだ状態で。
やられた。牧野君の時と同じ手だ。
どこまでいやらしい性格なの、さやか!
「江原君は、私と付き合いたいんですって、箕輪さん。どうする?」
さやかが憎たらしい笑みで私を挑発する。
「綾小路、あんたねえ!」
明菜が切れている。ところが、
「アッキーナ、邪魔しちゃいけないよ。江原はさやかさんと付き合うって決めたんだからさ」
何と美輪君までさやかの術中だ。明菜は呆然としている。
どうしたらいいの!?
「負け犬は、サッサと自分の小屋にお帰りなさいな」
さやかは更に挑発して来る。力ではあいつには勝てない。
まどか最大のピンチだ。
その時だった。
「私の可愛い妹を苛めるのは誰?」
禍々しい妖気と共に、そんな声が轟いた。
誰? などとボケる必要もない。
この妖気、そして、私の事を「妹」と呼ぶのは、多分あの人。
また復活したのか……。めげない人ね。
「だ、誰!?」
さやかもその尋常ではない妖気を感じて、辺りを見回す。
「私よ」
校門のところに、まるで明子姉ちゃんのようにひっそりと立つ黒尽くめの服の女性。
「冬子さん!」
予想通りとは言え、この人の登場シーンは怖い。明菜はビックリして動かない。
周囲で見ていた子達が、一斉に逃げ出す。
「あんた、誰!?」
ビビりながらも、さやかは冬子さんに怒鳴った。
「私は小倉冬子。まどかちゃんのお兄さんの婚約者よ」
「は?」
さやかは呆気に取られたようだ。それはそうだ。誰でもそうなる。
「まどかちゃんを苛める悪い子。私が成敗してあげるわ」
冬子さんはユラーッとさやかに近づく。
「ひっ!」
さやかはその動きに仰天し、後ずさりした。そして、江原ッチを見捨てて逃げ出してしまったのだ。
「いやーっ!」
冬子さんは戦わずして勝ってしまった。
「まどかちゃん」
冬子さんは、恐らく微笑んだのだと思うが、それは顔が痙攣したようにしか見えなかった。
「は、はい」
私は緊張した。いくら冬子さんが私に敵意がないからと言って、安心はできないのだ。
「今度苛められたら、これを吹いて。そうすれば、私はどこからでも駆けつけるから」
「はい」
私はオカリナを手渡された。冬子さんに似合い過ぎて怖いほどのアイテムだ。
「じゃあね」
冬子さんは不気味な笑みを浮かべてから、スーッと立ち去ってしまった。
こうして、江原ッチと美輪君は、冬子さんのおかげでさやかの呪縛から解き放たれた。
「凄い人がいるんだね」
江原ッチは身震いして言った。私は苦笑いして、
「そうね」
としか言えなかった。
助かったのだろうか、私達は? 大いなる疑問だった。
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