今日は里見まゆ子さんと遊園地よ!

 私は箕輪まどか。小学六年生。霊感少女と呼ばれている。


 本当は「アラフォー」ではないかと噂されるほど耳年増な美少女である。


 耳年増の使い方が間違っているとかの非難は受け付けないので悪しからず。




 この前、悪知恵の働くお兄ちゃんのせいで、蘭子さんと会えなかった私。


 あのエロ兄貴、いつか仕返ししてやる。


 そうだ、同僚のまゆ子さんに言いつけてやろう。


 彼女はお兄ちゃんに「ほの字」なのだ。


 え? 今時そんな古い言い回し使わない?


 悪かったわね、お父さんに教わったのよ。


 まゆ子さん、お兄ちゃんと一緒に仕事がしたくて鑑識を希望したらしいの。


 私はまゆ子さんを応援したい。


 その理由。それをこれから話しちゃおうと思う。




 私はお兄ちゃんに騙されて、その日遊園地に行った。


 その日はG県民の日で、学校が休みだった。


 蘭子さんが来て欲しいと連絡をよこしたと言われたのだ。


 本当なら疑うべきなのだが、一日無料券をもらったので、あのケチなお兄ちゃんの罠だとは夢にも思わなかったのだ。


 後で考えてみると、甘かった。


 あのエロ兄貴は、エロのためならカネに糸目をつけない性格なのだ。


 蘭子さんと二人で出かけるためなら、遊園地の只券くらいいくらでも買うだろう。




 遊園地に行くと、入口のところにまゆ子さんがいた。


「あれ、まゆ子さん。どうしたんですか?」


 私は本当に偶然会ったのだと思い、不思議に思って尋ねた。


「あ、ま、まどかちゃん。ぐ、偶然ね」


 その仕草の不自然さから、私はすぐに「はめられた」と悟った。


「お兄ちゃんですか?」


「え?」


 健気にとぼけるまゆ子さん。いじらしい。


「お兄ちゃんに頼まれたんですか?」


「……」


 困った顔で黙り込んでしまうまゆ子さん。


 私はまゆ子さんがお兄ちゃんの頼みを断れないのを知っていたので、無性に腹が立った。


「ごめんなさい、まどかちゃん」


 まゆ子さんは頭を下げて言った。私はビックリして、


「まゆ子さんが悪いわけじゃないですから。悪いのはあのエロ兄貴です」


「え?」


 あ。


 もしかすると、まゆ子さんはエロ兄貴が蘭子さんと出かけようとしている事を知らないのかな?


 知ったらショックだろうから、言うのやめよう。


「と、とにかくこんなところで会ったのも何かの縁だから、一緒に楽しみましょ、まどかちゃん」


 尚もエロ兄貴が主犯だと認めないホントに健気なまゆ子さん。


 涙が出ちゃう。女の子だもん。


 古いとか言わないでよね。




 そんなわけで、私とまゆ子さんはその日一日、遊園地を満喫した。


 ジェットコースターは平気なのに、お化け屋敷では小学生の私の陰に隠れてしまうまゆ子さんは最高だった。


「楽しかったわ、まどかちゃん」


 まゆ子さんは素敵な笑顔で言った。


 私はほんの少しいたずら心が働いて、


「まゆ子さんがお姉さんだったらいいのに」


と言ってみた。するとまゆ子さんは真っ赤になって、


「え、やだ、何言うのよ、まどかちゃん、そんな、お姉さんだなんて、困るわ、いきなり……」


 予想以上の動揺に悪い事をしたと思った。


 でもお姉さんになって欲しいと思ったのは本当だよ。


 ただ、あのエロ兄貴の奥さんだと、苦労が絶えないかもね。


 それだけが心配。

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