運命の出会いよ! イケメン転校生よ!

 私は箕輪まどか。


 小学校六年生にして、優れた霊能力を持ち合わせた上、超が付くくらいの美少女である。


 そして、くどいようだけど、決してお笑い芸人ではない。


 もちろん、死神でもない。


 但し、私の事を「かまど」と呼ぶ奴に対してはある意味「死神」に近い存在にはなる。




 エロ兄貴の罠にはまって、エロ兄貴に「ほの字」の里見まゆ子さんと遊園地を満喫してから数日後の事だ。


 私のクラスに転校生がやって来た。


 テレビの学園ドラマとかだと、私のような美少女とか、超イケメンとかが転校して来る。


 でも、現実の世界ではそんな事は普通あり得ない。


 そう、あり得ないのだ。


 ところが、私の通う小学校は、どうやら普通の小学校ではないらしい。


 転校して来たのは、まさしく超イケメンだったのだ。


「僕の名前は白鳥慎之介です。趣味は乗馬で、特技は……」


 何という事だろう。これこそが運命の出会い。


 白鳥君に比べれば、以前もしかすると付き合っていたかも知れないような気がする牧野君はゴミ。


 遂に私と釣り合いの取れる男子が現れたのだ。


 白鳥君の登場で、クラスの女子全員が色めき立ち、アホな男共全員がメラメラと無駄なヤキモチの炎を燃え上がらせた。


 白鳥君は、私の読み通り、隣の席に着いた。


 そこが空いていたからではない。


 運命だからだ。


 そこ、妄想とか言わない!


 白鳥君は、他の女子には決して見せないような笑顔で私に語りかけた。


「よろしくね」


 私はごく冷静に対応した。


「こ、こ、こちらこそよろすく」


 どうよ、この完璧な返し。


 ……。


 わかってるわよ、しくじったのは!


 うん? 


 うそ。そんな、まさか。


 見えてしまった。


 こんな時だけは、私は自分の優れた能力を怨んでしまう。


 白鳥君の背後に、薄汚い格好のジジイの霊が見えたのだ。


 何でこんな汚いジジイが白鳥君に取り憑いてるのよ?


 私は尊敬する霊能者である蘭子お姉さんに教わった方法で、そのジジイの霊に語りかけた。手っ取り早く言ってしまえば、「テレパシー」って奴ね。


『貴方は誰? 何故白鳥君に取り憑いているの?』


 すると霊はとんでもない事を言った。


『私は慎之介の祖父だ』


 そふ? そーふ? ああ、おじいちゃん? ええ?


 何でよ? 何で白鳥君のおじいちゃんがこんな薄汚いジジイなのよ?


『娘よ、心の声は皆聞こえている。人の悪口はもっと小さい声で言え』


 あらま、それは失礼しました。


『何で白鳥君のそばにいるのよ? どっか行きなさいよ』


『慎之介に悪い女が近づかないように見張っているのだ』


『悪い女? 大丈夫よ、それなら私が代わりに白鳥君を守るから』


『お前が一番危ない』


「何ですって!?」


 つい、声に出してしまった。白鳥君は唖然としている。


 先生はカンカン。


 私は顔真っ赤。


『もう、恥かいたじゃないのよ。私は悪い女じゃないわ。貴方の味方よ。どうしてそばについていないといけないのか、理由わけを教えてよ』


『わかった』


 白鳥君のおじいちゃんは、どうして白鳥君のそばにいるのか話してくれた。




 白鳥家は代々霊感が強い家系で、おじいちゃんは霊能者だったそうだ。


 しかし、白鳥君のお父さんは全く霊感がなく、霊の存在も信じない人らしい。


 で、白鳥君には霊感がある。


 但し、彼は私や蘭子お姉さんと違い、自分の力をわかっていないという。


 それはとても危険なのだと。


 確かに。私も霊感が強い事を知る前には、とにかく只怖いだけだったし。


『心配しないで、私が彼を守るわ。こう見えても、免許皆伝の霊能者なのよ』


『どんな免許皆伝だ。大体、免許皆伝の意味をわかって言っておるのか?』


 さすがにジジイは年の功で、変なところで詳しかったりする。


『まあ、お前の能力が高い事はわかった。では任せる。音を上げるなよ』


 おじいちゃんはそう言って消えた。


 この私を見くびらないでもらいたい。


 お兄ちゃんお得意のゼータガン○ムの中の誰かのセリフを真似てみた。




 ところが……。


 私は一時間もしないうちに音を上げそうになった。


 おじいちゃんがいなくなった途端、クラスの女子達の生き霊が集まり始めたのだ。


 そうか、白鳥君て、女の霊を呼び込む体質なのか。


 しかも生きていようと死んでいようと関係ないのだ。


『それなら!』


 私は蘭子お姉さん直伝の真言を念じた。確か、摩利支天(まりしてん)の真言だ。


『オンマリシエイソワカ』


 するとたちまちバカな女子達の生き霊は白鳥君から離れた。


 さっすが蘭子お姉さん! さっすが私!


 などと見えないところで奮闘しているうちに、授業は終わった。


「箕輪さん」


 えっ? 早速白鳥君が話しかけて来た。


「な、何?」


 私は必要以上に瞬きを素早くしている自分に気づいた。


「ちょっといいかな?」


「は、はい」


 白鳥君は教室を出て、私を人気のない廊下の端に連れて行った。


 何、何? 何が起こるの?


 私はドキドキしていた。


 白鳥君はその吸い込まれそうなくらい美しい瞳で私を見つめ、言った。


「箕輪さんて、悪霊に取り憑かれているよ」


 何ーっ!? 自覚あるんじゃん! 霊、見えてるんじゃん!


「でも大丈夫。僕が守ってあげるから」


「……」


 私はそのまま倒れそうになった。でも、倒れると我慢してるおしっこを漏らしそうなので、何とか堪えた。


「これからもよろしくね、霊感少女さん」


 白鳥君はどこか怖い眼でそう言って教室に戻って行った。


 彼、完全に信用していいのかな?


 不安な美少女まどかだった。

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