エロ兄貴が蘭子お姉さんを騙したのよ!
私は西園寺蘭子。霊能者。
先日、廃校になった小学校の事件で知り合った箕輪まどかちゃんという小学生の女の子がいます。
彼女も霊能者で、年齢の割には相当な力を持っています。
そのまどかちゃんから、メールが届きました。
あれ以来全然連絡がなかったので、嫌われたかなと思っていたのですが。
少しだけホッとしたのも束の間、内容に驚きました。
ある山で殺人事件があり、その遺体を結界で見つからないようにした術者がいると。
殺人事件は無事解決したらしいのですが、その術者の正体は依頼した犯人も知らないとの事。
殺害現場で知り合い、話を持ちかけられたようです。
詳しい話をしたいので直接会いたいと書かれていました。
私は早速まどかちゃんの住むG県に向かいました。
「確かこの辺だったような……」
私はまどかちゃんの気を探りながら車をゆっくりと進めました。
霊感は鋭いつもりですが、方向音痴なので。
「あ」
私は見覚えのある家の前に着きました。そして、見覚えのある男性が手を振っているのに気づきました。確か、まどかちゃんのお兄さんです。
「お待ちしてました。私はまどかの兄の慶一郎です。よろしく」
お兄さんは私が何も言っていないのにそう挨拶しました。私は車を降りて、
「よろしくお願いします、西園寺蘭子です」
とお辞儀をしました。
「お顔も素敵ですが、お名前も素敵ですね、蘭子さん」
お兄さんは妙に顔を近づけて言いました。
「あ、ありがとうございます」
私は同世代の男性とこんな至近距離で話した事がないので、ドキドキしてしまいました。
それにお兄さんは所謂イケメンで、相当モテる方のように見えました。
女性の生霊がたくさん憑いているのです。
まどかちゃんには見えないのかしら?
「では、参りましょうか」
お兄さんはさっさと助手席のドアを開いて乗り込んでしまいました。
「あの、まどかちゃんは?」
私も慌てて運転席に乗り込みました。するとお兄さんは、
「妹には危険なので、今回は私が同行いたします」
「そうですか。それで、詳しいお話は?」
「現場に向かいながらしましょう。結構遠いのですよ」
「はい……」
マイペースなところはよく似ている兄妹のようです。
お兄さんの話では、結界に使われたお札は陰陽道系だそうです。
ちょっと厄介かも。
「それで、お兄さんは霊感は?」
私は気になっていたことを尋ねました。
「お兄さんだなんて他人行儀ですよ、蘭子さん。慶君と呼んでください」
「はあ」
私は帰りたくなって来ました。でもそうもいきません。お兄さんは前髪を掻き揚げてから、
「残念ながら霊感はからっきしです。見えない、聞こえないです」
「……」
この人は何のために同行しているのだろう? 麗華だったら叩き出してるかも。
「危険ですよ、お兄さん」
「慶君でお願いします」
「では、慶君」
私は恥ずかしいのを我慢して言いました。「慶君」は嬉しそうです。
「大丈夫です。貴女と死ねるのなら本望です」
いえ、私は死にませんから。そう言いたいのをグッと堪えました。
「それから、妹が言うには、かなり大きな組織だと」
「大きな組織?」
「宗教臭がしたそうです」
私は目を見張った。まさか?
別件で八木麗華と追っている悪質な霊感商法をしている宗教法人があるのです。
そこの祭神は「安倍晴明」。ムチャクチャやな、と麗華は言っていました。
「そうですか。もしかすると……」
私は考え込みました。麗華も呼ばないと。攻撃力は彼女の方が上だから。
「後編に続くですか?」
「はい?」
お兄さんの突拍子もない発言に私はキョトンとしてしまいました。
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