第8話 これにて

 これにて、消えたアタッシュケース事件は解決し俺の夜は明けていったはずなのだが、なんだ、まだ終わらないのか。


 暇つぶし程度にどうでもいい補足をしておくと、今晩一緒にいた中林は、マッド☆ハッタ―の一人にして首領こと帽子屋が化けた姿で、本物の中林はファミレスの控室奥にある女子更衣室の中ですやすや寝ていた。


 まあ、本当にどうでもいい情報ではあるが。


 それよりも気になるのは、中林を含めた銀代、伊丹の三人組が今回の「消えたアタッシュケース」事件の犯人だったのなら、残った一人である間島は何者だったのかということだ。


 本当に、単に巻き込まれただけの悲運な女子大生か。


 顎に手を当てぼんやり考えごとに耽っていた俺の袖口を誰かが、引っ張った。

 顔を向けると、そこには間島なつきがいた。

 彼女は、鋭い三白眼を至近距離から照射して言う。


「ねえ、あんた。ワタシのこと覚えてないの?」


 そうして、次の夜に繋がるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る