仙崎さんのお話
第1話
『───くん、準備できた?』
……うん。
『……どうしたの?』
……帰りたくないな。
『こーら、そんなこと言わないの』
『またおいでよ。今度は、お父さんとお母さんも連れてね』
また、来てもいいの?
『もちろん!このホテルはね、どんなお客さまも何度だって大歓迎なのよ!』
『だから、またおいで』
……じゃあ、今度来たら──────って約束してくれる?
『……ふふっ、かわいいなぁ……ごめんごめん、楽しみに待ってるね』
───そうして、幼い俺は彼女と何度目になるだろう指切りをする。
記憶に残るのは、その感触だけだ。
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