気まま女子ののんびり生活 緑茶おまけ
小道けいな
緑茶のティーバッグ
――またか――。
何かあったからそこにいる。
どどーんという音響を出しそうな後閑はどんと足を踏み鳴らした。
「ティーバッグがまずい!」
「それは飲み物じゃない」
真顔で橘根がいうと、後閑は拍子抜けした顔になる。
「そうなの?」
「……」
「ならいいや」
後閑はすたすたと自分の部屋に行こうとした。
「ちょ、待って、ティーバッグの中身は何かって言おうよ!」
からかっていた橘根が慌てる。
「え、日本茶。あのメーカーの微妙な味。たくさんもらった」
「捨てる気?」
「うん、まずいから」
橘根は靴を脱いで上がると、後閑を引き留める。
「捨てなくていいから」
「でも飲み物じゃないのよね」
「飲み物だから」
「えー」
後閑は橘根と居間に行く。
後閑はティーバッグの入った缶を出した。
「これ、これ、まっずいの」
後閑が言うには、きちんとティーバッグに記載通り、お湯の温度下げて淹れたとのこと。
まあ、基本それで問題ない。
最近の橘根は思っている。
結構温度は重要。
それともう一つ重要なのが、茶葉がどれだけ湯の中で自由になれるかということ。
本来、ティーバッグでも十分行ける。
恐怖のティーバッグを橘根は見た。
烏龍茶の茶葉は意外と膨れるのだ。そのため、ティーバッグの中、ぎっちりで泳ぐどころじゃないということ。
結果、生み出されたのがこれだった。
「一個もらうよ?」
橘根が尋ねると後閑はどんと全部くれた。
湯をマグカップにいれる。
急須を準備する。
湯を冷ます時間は適当。
まだ冬だからすぐに冷める……と勝手に考える。
湯呑二つ出す。
ティーバッグを缶から取り出す。
ぶちっ。
「えっ!?」
後閑が驚く。
橘根はティーバッグの個別包装を外した後、ティーバッグのバッグ部分を縫い目に沿ってちぎったのだ。
それをそのまま急須に入れる、中身の茶葉だけ。
そこに湯を入れ、急須からマグカップに注ぎ、二煎目を湯呑にまんべんなく注いだ。
「はい」
後閑は渡された湯呑をじっと見る。
「はいっ! て、ええええ?」
後閑は試しにお茶を飲む。
「あ、普通にお茶だ」
橘根が生み出した技。
ティーバッグ、まずいと思えば、急須でゴー……微妙に川柳にならず。
「それずるくない?」
「ずるくないけど、ティーバッグの材料が無駄になるから……できればしたくはない」
橘根は苦笑する。
高級な一煎パックと思うしかない。
「紅茶も烏龍茶も、緑茶でもそのままティーバッグでもおいしいのはあるよ? ちょっと微妙だというお茶があるときは、急須やティーポットを使うのも一つってだけだよ」
後閑は説明されてうめく。
「なんか、だまされた気もする!」
「そっかな?」
橘根は首を傾げた。
後閑に要求された二杯目を準備し始めた。
気まま女子ののんびり生活 緑茶おまけ 小道けいな @konokomichi
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