第4話修学旅行発

 修学旅行にいくため、学校に向かうツカサ。

優しい天使のアエルはツカサのあとをついてくれる。


「アエルって、京都はじめてだよね?一緒に見て回ろうよ。同じ班の子には天使って見えるの?」

「見えませんよ、あなたが悪魔となんか契約してしまったから、見えるんですよ。しかし修学旅行どうするつもりです?あなた今男の姿なんですよ」

「大丈夫。悪魔に私のこの姿が女に見えるようにしてもらっているから。それに胸ついてるし!」


アエルは内心、ツカサの男の下半身はどうするんだと、悩む。

 学校の門の前で、ツカサの同じクラスの友達の巴と、洋子が待っていてくれた。


「巴、洋子!」


両手をあげてツカサは友達二人いる門に向けて走った。ツカサの後ろで転びそうになっていたアエルの腕をつかんで引っ張った。


「行こう、アエル。巴と洋子にはあなたの姿が見えるし、クラスメイトだと思うように記憶改ざんを悪魔にお願いしといたから」

「またあなたは」


呆れた顔のアエルにツカサは満面の笑みを浮かべた。


「アエルとデートしたいのだもの!!」


 アエルは嬉しそうなツカサをみていると、不思議な心持になった。胸の奥がいたいような、温かいような自らの気持ちに、アエルは首を傾げた。

アエルは天使として数億年生きてきたが、こんな妙な感情を抱いたことはなかった。物思いにふけるアエルの目を覚まさしたのはツカサの声だった。


「そうだ、アエル。私男になったのだけれど、トイレの仕方がわからないのだけれど」

「お、女の私に聞かれましてもねー」


 焦るアエル。


「それならば、私めがお教えしましょう」


いつのまにかツカサの背後から現れた悪魔がいった。悪魔がツカサに触れているのをみると、アエルはなにか嫌な気持ちになった。


「悪魔がツカサさんに触れるんじゃありません」


悪魔の手をアエルは叩いた。


 電車の中、アエルの向かい側の前の席に、巴というなの人間の少女が座った。

巴は麗しいツカサとはべつの種類の可憐な少女だった。


「アエルー。今日どこ行く?」


 巴と名乗る人間に話しかけられて、アエルはどぎまぎする。


「あ、あの」


戸惑うアエルに、ツカサはアエルに助け舟をだすことにした。


「アエルなんか今日緊張してるんだって」

「す、すいません。人間と話すことはあまりないので、なんとはなしたらよいものかと」


焦るアエルに、ツカサは安心させるように微笑んだ。


「いいよ。アエルは可愛いからさ。なにはなしても」


 ツカサはアエルの手をつないで見せた。

 電車が目的地に着いたという放送が聞こえてきた。

電車からおりて、巴と洋子とツカサの三人の女子と、空男と太一と勇気と男子、合計六人のグループで奈良観光をすることになった。


「アエルなんかほしいものある?金なら悪魔に頼めばなんとかなるからさー」


ツカサは悪魔に頼み事することにすっかり味を占めていた。


「辞めてください、地球の命なのですよ」


アエルにツカサは叱られてしまった。


「どうせ、明後日亡びるからいいじゃん」

「あなたが勝手に他人の命を使っていいとはならないのですよ!」


天使の恐ろしい剣幕に、ツカサはびびった。


「う、うん。ごめんなさい。死ぬ前のつけということで私の命をつかおうかなー」


すると、ツカサはアエルにひっぱたかれた。


「ツカサさんもご自分の命をもっと大切にしてください」


真剣な目のアエルがツカサを貫く。ツカサはアエルに抱きついた。


「うんわかったー!」

「うわわわ。やめてくださいー」


うろたえるアエルが面白くて、ツカサはアエルを放そうとしなかった。


「本当にあんたら仲良しだねー」


ツカサのクラスメイトの洋子がツカサとアエルの二人を見て言った。


「お前、ツカサに付き合うと、ろくでもないぞ」


以前ゴキブリ鑑賞に付き合わされた空男がげっそりと言った。


「アエルと私はラブラブだもんねー」


にやにやツカサは、洋子と空男に向けて言った。


「アエルがかわいそう」

「お前、好きなのはゴキブリだけにしてけよなー」


洋子と空男はそういうと、土産屋の八つ橋に目移りしていってしまった。


「あなた妙な方です。何故そんな動じないで自分の命を軽んじているのですか?」


ツカサの腕の中でおとなしくなったアエルが神妙にそんなことを聞いてきた。だからツカサも神妙に答えることにした。


「んー、それは多分死にたいからじゃないかなー。私ぶっちゃけ鬱病なんだよね。ずっと死にたいとおもってきてまぁ、そんな感じ」

「うつ病とはどんな感じなのですか?・・・・死なないでください」


ツカサは笑った。


「そんなこと言っても、明日地球滅ぶじゃないの?」

「そうですね」


アエルも苦笑いを浮かべ、言葉をつづける。


「ですが・・今この瞬間だけは生きていてください」

「うん」


ツカサは頷いて天使の体の温かさを感じていた。

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