第3話ツカサと愉快な家族達

「お姉ちゃん!!」


 ツカサの自慢の可愛い妹の粉雪が、走ってツカサの部屋に入ってきた。

粉雪は泣きながら言った。


「突然・・・その・・・・私、私男になっちゃった!!!」


泣いている粉雪の頭をツカサはよしよしと撫でてあげる。本当に粉雪は子動物みたいで、かわいい。ツカサはいつも粉雪に和む。

粉雪の次にツカサの部屋に、粉雪の双子の兄の作雪が凶悪な顔で押し入ってきた。


「ツカサ、てめぇ、またくだらないことやったんだろう!!!!」


 作雪は大音量で、ツカサに向かってどなる。

 ツカサの弟の作雪は凶暴で、ツカサは正直苦手だった。そんな作雪の体に、大きな胸が揺れているのをみてツカサは笑ってしまった。


「作雪だって、女の胸ほしいって言ってたじゃん。よかったね、胸できて」


 へらへらツカサは笑いながら言った。

兄の作雪は、巨乳のグラビア本ばっかり読んでいるのをツカサは知っていた。


「ふざけんなー!!」


そう怒鳴った作雪にツカサは頭を殴られた。


「いた!ひどー。だってさ、悪魔が地球は明後日滅ぶって言っているんだから、私の好きにしていいじゃん」

「意味わかんないこというな!!」


と、また作雪にツカサは頭を殴られた。


「全部私めがしたことでございます」


蝙蝠の姿から人間の男に化けてみせた悪魔に、作雪と粉雪の体の動きがぴたりと止まる。


「私は悪魔のサリル以後お見知りおきを願います。作雪様粉雪様」

「お、おま」


 作雪は意味不明の単語を吐きながら、ツカサを見ている。

粉雪と作雪は呆然と悪魔を見ていた。絶句しているらしい。

自己紹介して見せた悪魔の隣で悶絶している天使の腕をツカサはつかんで、天使を妹と兄の前に引っ張ってきた。


「粉雪、作雪!この天使、アエルっていうの!私の好きな人なの。みんなよろしくね!!」


そういったツカサの頭を作雪はまた殴った。


「ふざけんな!とっととこの体元に戻せ」

「明日世界が滅ぶの!生き物の命を悪魔に捧げれば、なんでも願い事をかなええくれるってさ、作雪、粉雪、どうよ」


自慢げにツカサは言うが、兄と妹はなんだかかわいそうな子供を見る目でツカサを見た。


「寝言は寝て言えよ!」


 作雪はまったくツカサの言うことを信じようとしない。頭にきたツカサは作雪の胸をもんでやった。

「ぎゃー!」


 悲鳴をあげた作雪にまたツカサは殴られる羽目になった暴力ダメ、絶対!


「そういえば、父さんと母さんはどうなっているのだろう?」


 首を傾げたツカサに、粉雪はいった。


「お姉ちゃん。お母さんは同窓会で、お父さんはまだ仕事だよ」

「そっかー。それは大騒ぎになっているだろうなー」


 とにこにこツカサは笑った。


「人類はみんな滅ぶんだから、最後までたのしもー!」


ツカサの明るい決意の言葉に、賛同してくれる人は皆いなかった。


「そうだ!明日修学旅行だからアエルも一緒においでよ。デートしましょうよ!」


そのあと、激怒した作雪によって、ツカサ家族全員もとの体に戻されたのだった。

怒った作雪に叩かれた頭をツカサはさすった。


「お前・・・本気で悪魔と契約したのかよ?」


作雪が聞くものだから、ツカサは「まじで」と、言った。


「それよりもお姉ちゃん。人類滅ぶとかなんとかいってなかった?」


聞いてきた可愛い深雪を、ツカサは抱きしめた。


「明後日、人類滅ぶんだって。悪魔が言ってたー」


目玉を開いている深雪と作雪の二人を見て、ツカサはまた笑った。


「変な顔―」


そういうと、怒った作雪にツカサは鼻をつままれた。

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