第2話そんなこと言っても、でかいほうがいいよね?

「そっか。ミサリル、この地球を壊さないのはできないの?」

「いかに悪魔でもそれは無理でございます。地球はあさってには滅ぶ予定でございます」

「そっか、残念だ」


  全然残念そうには見えないツカサの様子に悪魔は内心首を傾げた。アエルは声を張り上げて言った。


「大体あなたご自分の胸を大きくするなんて言っていたではありませんか!男になったら胸は平らですよ!!」


 Aカップから脱却したいと言っていたツカサはなんなのか?


「アエル私の願い事しっていたの?・・・なんか恥ずかしい。それもそうだ。あ!そうだ。男になって胸もつければ万事解決じゃない」


そうだ。そうだ。ツカサは男にもなれるし、でかい胸も手に入れられる。万事解決だ!

ツカサのぶっ飛んだ発想にアエルは呆然とする。


「あなたはなんて考えなしであほなのですか?」


 アエルにツカサはあほだと言われた。なんか悲しくなったが、ツカサは明日地球が滅ぶのだし、なんだっていいやと考え直す。


「そうだ!アエルを男の子になってよ。そんで万事解決!!」


 またツカサは思いついた。可愛らしい天使の男の子姿もぜひ見てみたかった。


「全然解決ではありませんよ!私の人権はどうなるのですか!嫌ですよ!!」

「いいじゃん。明日地球が滅ぶんだし。私さ、好きな人ができたら性別なんだってよくなるって知らなかったなー。アエルはわたしのこと嫌い?」


ツカサは心臓をたかならせながら、天使に近づいた。


「ええ、大嫌いですとも」


大嫌いというアエルにツカサは微笑んだ。人類皆好きと言われるよりもツカサはアエルに大嫌いだと言われる方がとてもうれしかった。


「あ、明日修学旅行だった。人間死ぬ前に修学旅行でもたのしもーと!」


ツカサの中学の一大イベントだ。修学旅行は京都にいくことになっていた。

こんな自分の命の危機が迫っているのに、能天気な人間をアエルは初めて見た。


「あなたはどうしてそう能天気でいられるのですか?あなたは明後日死ぬのですよ?」


今までアエルは死の間際の苦しむ人間をたくさんみてきた。能天気なツカサのような、人間は信じられなかった。


「え?私とてもラッキーだよ。きっと苦しまないように悪魔に殺してもらえるだろうし。好きな天使に迎えにきてもらえるだろうし」


 ツカサはやはり能天気に言った。

おおきな、大きなため息をついてアエルは満面の笑みを浮かべるツカサを見た。


「・・・・あなたのような人は初めてみました」

「そうだ!胸だけは大きくしてもらえなくちゃ」

「かしこまりましたツカサ様」


悪魔は深々と頭を下げた。すると、ツカサの胸は大きく膨らんだ。


「やったー!今ゴキブリ持って来るから、まっていて」


ツカサの飼っているゴキブリは、ツカサの部屋のベランダに置いてある。それをとりに窓を開けてベランダに出た。


「なんて妙な人間なのでしょう?」


アエルは畳の上にへたりこんだ。


「あの人間はよいかもになりますね」


悪魔はほくそ笑んだ。


「はい!悪魔さん。ゴキブリとダンゴ虫とダニと蠅。可愛いけど特別にあげるからね!」


 スキップでツカサが戻ってきた。


「あ、あなたね、今あなたは男になってしかも胸急についているんですよ。家族にどう説明するつもりですか!?」


 真剣にアエルにツカサは詰め寄られたので、ツカサはアエルのおでこにキスしておいた。おでこにキスされた天使は悲鳴をあげていた。


「そっかー。それは困ったなー。そうだ悪魔さんなんとかして」


ツカサの困ったときは悪魔頼みだ。


「家族を全員消しましょうか?」


悪魔の物騒な提案。


「ううん。私と同じ体にしてよ。家族全員。お兄さんと妹と母さんと父さん。お願い」

「しかし、その願いには大量の命が必要となりますが」

「そうだ!家にいるダニ全部でお願い!」

「かしこまりました!」


 深々と悪魔がツカサに向かって頭を下げた。

遠くからツカサの家族の悲鳴が聞こえてきた。


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