天使と悪魔とA女
赤沼たぬき
第1話いやぁ、なんか地球終わるらしい
初めに、現実より小説は変なり
雛菊ツカサはとても美しかった。
艶やかな漆黒の長い髪。切れ長の美しい目。まるで人形みたいだと中学の男子には言われていた。
でもツカサには一つの悩みがあった。
ツカサの胸が真っ平らだということだ。
大人からしてみれば、将来なんとかなるだろうとかそんなこととか簡単に言われるだろうが、思春期の女子のツカサの悩みは真剣で重かった。
「どうしよう。今度修学旅行だっていうのに」
まな板みたいな胸を馬鹿にされたら、ツカサの一生のトラウマになってしまう。
そこでツカサは考えた。
どうすれば胸が大きくなるのかを・・。
整形手術をするには怖いし、お金がない。
胸をもんでみても全くの効果もないし、牛乳を飲んでもだめだった。
そうだ。おまじないか何かをしよう。
ツカサは中学校で借りてきたおまじない本をやってみることにした。家に買ってきて、おまじない本を開いた。
まず逆五芒星をペンで書いて、そこにツカサ自らの血を垂らす。
「からから、神様お越しください」と、ツカサは唱えると五芒星の中心に黒い蝙蝠が現れた。
「私を呼んだのはお前か?」
低い声で蝙蝠がいった。
なんとまあ、蝙蝠が話し出した。
「あなたは?」
ツカサは聞くと、蝙蝠は牙をむき出して笑った。
「俺は悪魔」
「ふーん。悪魔って私の願い事をかなえてくれるのよね」
「・・・・お前驚かないのか?」
「別に私の胸をでかくしてくれるなら悪魔だってなんだっていいし」
「・・・・お前の胸をでかくするのはお前の命と引き換えだといったら?」
「そうなの?」
「そうだな。だって悪魔だし。願い事は命と引き換えだ」
「嫌なんだけど」
「仕方がないだろう。お前は悪魔を呼び出した。悪魔はそんなもんだ」
「私以外の命ではだめなの?」
「・・・・・それはいいが」
「こないだゴキブリ捕まえたのよね。私ゴキブリ好きで飼っているのだけれど、それでいい?」
「・・・・いいが」
ゴキブリを飼う奴は悪魔は初めて聞いたと、何気に驚いた。
「ラッキー」
ツカサと悪魔が話しているとき、ペンで書いた逆五芒星が金色の輝きを放ち、白い翼をもった一人の可愛らしい天使が現れた。
天使は赤い髪をして、本当に愛らしい顔をしており、ツカサは目を離せなくなった。
「私は神から使わされた天使、アエルと申します。人の子よ。今なら引き返せます。悪魔と契約したものに、死後安らかな天国は訪れません。あるのは地獄のみ」
天使は透き通るような耳の奥から頭にしみいるような、美しい声をしていた。
「あ、あなたアエルさんっていうの?私、雛菊ツカサって言います。よろしく」
ツカサの心臓は可愛らしい天使の出現でとても鼓動が早くなっていた。もしかして、ツカサはアエルのことを好きになってしまったのかもしれないと思った。
「外道な天使め!この人間は俺と契約したのだ。さっさとされ」
蝙蝠がアエルに牙をむける。
アエルは負けじと蝙蝠を睨み返した。
「あ、あの、アエルさんは好きな人とかいるのですか」
ためらいつつも、勇気を出してツカサは天使に聞いてみた。
「申し訳ありませんが、私は女です。あなたの気持ちはお受けできません」
速攻で天使はツカサの気持ちを察知し、はっきり断られた。
「天使って性別があるの!?」
ツカサは驚いた。
「ありますとも」
肯定する天使に、ツカサは信じられなかった。
「でもあなたって女に見えない!」
赤髪のショーットカットの天使はどうみても、女の子にはみえない。
「それはあなたの勝手です」
天使はきっぱり言い切った。
ツカサの初恋はもろくもくずれさった。
「あなたも悪魔となんか契約するのはおやめなさい。私でよろしかったら、あなたの願いをお手伝いいたします」
天使はツカサの願いを手伝いしてくれるらしい。ツカサの初恋の相手にツカサの胸をでかくしてと頼むことはツカサにはできなかった。
「やっぱり悪魔に頼む。生贄はゴキブリでいいらしいし」
「そうだそうだ」
ツカサに賛同する悪魔を、アエルは睨み付ける。
「ですがどんなことをしても無駄です。明後日地球が滅ぶ予定ですので」
天使の地球滅亡発言に、ツカサは悪魔の方を見た。
「え?地球ってあさって滅ぶの?」
悪魔はツカサに向かって頷いていせた。
それみたかと、天使は言う。
「ええ。そういう予定になっております。だからあなたが悪魔と契約しても全くの無駄ですよ」
「ふーん。なんかよくわかんないけど。なおさら地球が滅ぶなら、遊んでおこう。全地球の金を私のものにしておこうかなー。永遠の命とかいいかもー」
全然ツカサは焦らず能天気に夕べのカツ丼を思い出しながらいった。
「考え直してください。永遠の命などありません。あったとしても、永遠の苦痛だけです」
うるうる瞳を湿らせて愛らしい天使はツカサの方をみる。
やばい私、レズのけがあるのかな?ツカサはアエルをみていると妙にどきまきした。だからツカサは悪魔に聞いてみた。
「ねぇ、悪魔さん。この天使私の彼氏にできる?男にしてさ」
恋した相手が男なら結婚もできるし無問題だ。
ツカサの恐ろしい願い事を聞いた天使は、顔が白くなった。
「ミサリルとおよびください。ツカサ様。そんなちんちくりんな天使よりも俺が男の姿になりましょう」
紫色の瞳の美丈夫に悪魔は変身して見せた。悪魔の変身した男の年齢は二十歳を過ぎて見えた。
「うーん。私どっちかというロリコンなの。無理」
ツカサの好みはもう少し年下の人だった。
「あのですね、ロリコン趣味でもなんでも結構ですが、私の趣味は反映させていただけないのでしょうか?それに悪魔の力は天使の私にはききませんよ。私を男にかえるなんてことは不可能です」
可愛い可愛いアエルが困ったように言っている。
「そんなの知らない。どうせ地球が滅ぶのなら、好き放題するもん。アエルは私のこと嫌い?」
アエルのことをツカサは上目使いで見つめてみた。
「嫌いもすきもありませんよ。私には神様がおりますし」
「じゃぁ、神様になるー。私、アエルのこと本当に好きなんだ」
「あ、あなたそんなだいそれたことを」
うろたえたアエルの顔も可愛いとツカサはしみじみ思う。
悪魔のミサリル哄笑が聞こえる。どうやらツカサの言葉が面白かったらしい。悪魔の大きな笑い声にツカサは顔をしかめる。
「神になりたいという代価はとても重いですよ、ツカサ様。全人類の命をふくめてね」
あなたの命もと、悪魔はほくそ笑む。
「や、やめてください。そんなお願い事は悪魔には無理です!騙されないでください」
慌てて天使はツカサの無謀な願いを妨害する。
「神様のつぎでもいいよ。アエルは私のこと好き?」
ツカサはアエルに詰め寄った。
「あ、私は、天使は人類皆様を愛していますから」
「でも人類皆もうすぐ死ぬんでしょう?いなくなると、私は何番目に好き?」
こりずにツカサはアエルを見つめる。
「だ、だから無理ですって!私は神様が一番で」
「一番じゃなくてもいいって」
「わ、私は女です」
焦ったアエルは言った。アエルは女と言い張っている。ツカサは少しがっかりする。
「天使って中性体じゃないの?悪魔にお願いして私男になってもいいよ」
「ツカサ様。二度目のお願いはゴキブリではだめでございます。ゴキブリとほかの命をいただきませんと」
悪魔のミサリルがそんなことを言い出した。
「んー。ゴキブリ以外だったらダンゴ虫かな?ゴキブリと一緒に飼っているんだよね、私」
くすりと悪魔は微笑んだ。
「本当はそんな命ではいけませんが、ツカサ様は大変面白い。それで結構でございます」
「騙されてはいけません!ツカサ様!この地球上の生命はもうすぐ亡びます。悪魔に払う命の対価はすべてなくなってしまいます」悪魔とツカサの間にアエルが割り込んできた。
「地球が滅ぶ明後日までなら大丈夫でございます」
「じゃぁ、さっそく男にして!ダンゴ虫とゴキブリとダニあげるから」
ツカサにとって、ゴキブリは大切なペットだからあまり悪魔にはあげたくはないのだけれど・・。たくさんいるし、いいかと思い直す。
「よろしい!」
悪魔の承諾に、アエルは本気で焦る。
悪魔の言う通り、ツカサの体は男になった。
「わっわー。筋肉質になってる!早速鏡見てみようーっと」
ツカサの顔を鏡で見ると、なかなかのイケメンになっていた。これならラエルも喜んでくれると、ツカサは微笑む。
「どうかな?アエル。私かっこいい?」
「あ、あのですね!!!!!地球が滅ぶって言っているのに、それどころではありませんよ。あなたどこか変ですよ」
アエルが妙に焦っている。可愛いとツカサは想う。ツカサはアエルのためにも地球崩壊を防ぐ方法を考えてみる。
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