ただの高校生が勇者になってみた

ソライロ

プロローグ


夏休みが終わりに近づき、ジリジリと暑い日光が窓から流れ込んで来ている。

昔の人々はクーラーや扇風機という文明の利器が無い中でどのようにしてこの暑さを凌いでいたのか。


...そんな事を考えながら、この俺、天野アマノ ツバサはまだまだ終わりの見えない課題を終わらせるべく親指の痛みに耐えながらペンを走らせている。

大丈夫だ、期限まであと3日はあるのだから確実に間に合う。

たとえ終わらなかったとしても、提出日にはこの暑さでぶっ倒れていたと説明してしまえばいいのではないだろうか。


そんな事を考えているうちにも、無情にも時間は進んでいる。

ふと時計に目をやると、もう短針は12を指していた。

「昼飯にするか...」

一人暮らしの部屋の中でボソッと呟き、キッチンへと向かった。


課題を早くやりたいのでカップ麺にしてもいいのだが、ここ最近はカップ麺をよく食べていた気がする。

体に悪いことばっかりしていると、幼なじみに何を言われるか分かったもんじゃないから、チャーハンでも作ることにした。

...昨夜深夜2時まで課題をしていたので体に悪いことは既にしているのだが。


美味しそうに出来たチャーハンを急いで頬張る。

普通に美味しいと思いつつも、何よりも考えているのは課題のことだ。

気づいた時には皿はもう空。

皿はキッチンに置いておき、再び机と向き合った。


その時、俺の家のインターホンが、タイミング悪く鳴り出した。

(ん?一体誰だ?)

誰がインターホンを鳴らしたのか、見当がつかない。

幼なじみは課題を片付けなきゃいけないでしょと言って夏休み終わるまで家に来ないと言っていたし、俺の友人は皆俺と同じで課題が終わらないようで、家で集中して勉強しているはずだ。

とはいえ考えていても仕方が無いのでとりあえずドアを開けることにした。


ドアを開けるとそこには、スーツ姿の男性が立っていた。

とても爽やかな笑顔で、俺の方を見ている。

顔立ちや背丈から考えて20代後半くらいかと感じた。

もちろん面識は無い。しばらくお互い固まっていると、男性が話してくれた。

「失礼ですが、天野 翼さんでよろしいですか?」

「はぁ...そうですけど」

俺の名前を知っている。市役所の人間とかだろうか。

...だったとして、俺の家に来る理由は全く分からないが。

「ありがとうございます。俺はこういう者です。」

こういう人も丁寧に話すとき俺って言うんだなーとかどうでもいいことを考えながら、差し出された名刺を受け取る。


...そこには、勇者訓練所 茅野カヤノ 悠哉ユウヤと書かれていた。

「...はぁ?」

ここからただの高校生としての俺の人生は、終わりへの道を辿る。

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ただの高校生が勇者になってみた ソライロ @soumenoisi

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