第10話 転校生
拉致ずくめの金曜が終わり。
土曜日は目覚めると何故だか俺の布団の中で美雨先輩が丸くなって眠っていた。
何でも土日と家の都合で出かける用事があって俺に会えないからって勝手に俺の布団に潜り込んでいい理由にはならないが俺の意思などは何処にも存在しないようだった。
クリスマスの晩に美雨先輩を助けてから怒涛の激流下りの様な毎日が続いている気がするのは俺だけだろうか?
月曜日に明陽学院に登校すると講堂の前にある掲示板に人だかりが出来ている。
講堂の前は校門をくぐり登校してきた生徒が必ず通る場所なので、そこに掲示板が設置され休講のお知らせや学校からの連絡事項が張り出されている。
特定のクラスを持たないスタイルだからなのだろう。
それでも学校行事などの時にはグループ分けされていて担当の教師も決まっている。
それが始業式の時などに分かれて説明を受けるグループになっていた。
あまり好んで受けない大教室の講義だが今日はそうは行かない。
人気がある講義なので必然と大教室になっているが幸いにと言えば良いのか美雨先輩はこの講義を取っていなかった。
教室の真ん中にある出入り口から中を覗くと直ぐに東雲が手を上げて合図してくれる。
東雲は早い時間から遅い時間まで満遍なく効率的に授業を取っていた。
その為に俺と一緒の授業の時は東雲が先に来て後ろの席を確保してくれていることが多かった。
「悪いな、いつも」
「気にするな。それよりも気づいたか」
「ああ、何だか学院中が騒々しいな」
席に着くと東雲が待ち構えていたかのように話を切り出してきた。
「それが、こんな時期に転校生らしんだ。それも飛び切りの美人らしいぞ」
「そんな事しかどいつもこいつも頭に無いのかね」
「そう言うな。高校生活をエンジョイするスパイスの様なものだよ。兎も角だ、とりあえず会って見たいと思わないか?」
「別に思わないな」
「まぁ、鳳条先輩みたいな美人が彼女なら仕方が無いな」
「東雲にだって可愛らしい彼女が居るだろう」
「ああ、そうだな。お前も一度で良いから望スペシャルを受けてみろ。年中お花見が出来るぞ、三途の川でな」
「まぁ、俺はクリスマスの晩にそんな川は一足飛びにしたけどな」
「それにこんなイベントでもなければ楽しい高校生活は送れないぞ。転校生と運命の再会なんて男のロマンだ! 可愛い転校生にいきなり指をさされて名前を呼ばれてみろ。健全な男子なら確実にキュン死だぞ」
御バカな東雲の会話に付き合っていると俄かに教室が騒がしくなった。
それは教室の外。つまり廊下から伝染して来ているらしい。
入り口にいた数人の生徒が慌てて教室に飛び込んでくると一人の女子が教室に現れ中を見渡している。
そして……
「ああ、居た! 亀梨晴海! 勝負だ!」
大教室に響き渡る大声で俺の名を呼び捨てにして指をさしやがった。
160センチのスレンダーな体に明陽学院の制服を着てウルフカットに切れ長な目をしている。
左手にはご丁寧に半分に折り畳めるチェス盤を抱えている。
恐らく二つ折りにされたチェス盤の中には駒が綺麗に収納されているのだろう。
軽くステップを踏むように階段を上がってきて俺と東雲の座る机の横までやってきた。
俺はキュン死ならぬ急死の様に机に突っ伏した。
「おい、亀梨。どういう知り合いだよ」
「俺の名は麟堂 霞りんどう かすみ。亀梨晴海の犬だ。俺に用件がある時には主人である亀梨を通せ!」
麟堂とんでもない発言で一瞬教室が水を打ったようになり、サンダースコールが起きた。
?マークの突風が吹き荒れ。
転校生まで毒牙に、砕け散れ、などなど聞くに堪えない言葉が雷の様に飛び交っている。
「亀梨、こんな可愛い女の子を飼っているのか? なんて素敵なプライベート空間なんだ。男の夢だ! ロマンだ! 羨まし過ぎる!」
「東雲、お前に言い残したい事があるその辺にしておけ。先にお花畑の川原でお昼ねと洒落込むからな」
「何を言っているんだ、亀梨。俺の夢だぞ」
「へぇ、こいつが望の彼氏か。どんな奴かと思ったらただの変態でヘタレじゃねぇか」
麟堂の言葉に東雲がモアイ像の様になっている。
仕方なく東雲に引導を渡してやる。
「麟堂が通っていたのは姫女だ」
ゴトンと音がしてまるで落椿の様に東雲の頭が机に転がっている。
先にお花見をしに川原に行ったのは東雲のようだ。
当分、戻ってくることは無いだろう。
東雲を連れ戻すことを諦めて麟堂の顔を見上げる。
「あのな、この学院で俺は諸悪の火種みたいに思われているんだ。無闇に酸素ボンベを火種に投げ込むような事をしないでくれ」
「すまない。俺はただ命を助けてもらったし亀梨には何をしても勝てないのでつい」
「まぁ、良いさ。漆黒はどんなに色を重ねても黒いままだからな。昼休みにならチェスの相手をしてやる。学食で待ってろ」
「了承した」
慣れとは怖いものである。
針の筵のような高校生活に痛みすら感じなくなってきている自分に気づいた。
昼休みに学食に行くと人だかりが出来ていて、直ぐにその中心に麟堂が居るのが判り探す手間が省けた。
俺に対する発言は兎も角として、男女問わず裏表の無い性格から好感度がアップしているのだろう。
それに基本的に悪い奴じゃない。
男ぽい性格も潔さを感じるほどサッパリしている。
俺に気づいた麟堂が嬉しそうに手を上げると周りに居た生徒達は潮が引くように居なくなった。
「先に飯を食おう」
「判った」
日替わり定食が載ったトレーをテーブルに置くと麟堂が美雨先輩の倍はある弁当箱を広げ始めた。
「弁当なんだな」
「ああ、これは母さんが毎日作ってくれるんだ。同い年の子と比べるとかなり量が多いから恥ずかしいのだが。俺にはこれくらいがちょうど良いんだ」
「別に良いんじゃないのか。お前はお前だ。俺は横並びして皆と同じである事に違和感を覚えるしな。それに気持ちが悪い、何で皆同じじゃないといけないんだ? 理由が判らない」
「そうか。亀梨がそう言うなら俺は気にしない」
箸を持つと俺の耳も誰かに持たれ引っ張られた。
「何だ、菜露」
「随分と麟堂先輩と仲が良いじゃん。それにいつから先輩をペットにしたのかな」
「俺はくだらない噂を信じる菜露なんて知らないけどな」
「それじゃ、鳳条先輩になんて説明するの?」
「ありのままを話すだけだ。俺が恋人に相応しくないと美雨先輩が判断を下せばそれに従うしかない。まぁ、余計な事を言われる前に言っておくけど。ありのままに話すと言っても話せない事も多かれ少なかれ人にはあるはずだ。その上で美雨先輩には判断してもらいたい」
麟堂が驚いたような顔をしているがスルーする。
菜露の影から顔を出した筈の美雨先輩は何も言わず、その代わり菜露が口を開いた。
「晴海の頭の後ろにはお化けみたいに目でも付いてるの?」
「そんなものは付いてない。状況を的確に判断すれば答えは出てくるだろ。転校生の噂などあっという間に学院中に広まる。その転校生が美雨先輩のおかげで知る人が居ないくらいに有名人になってしまった俺にあんな事を言ったんだ。尾鰭が付いて今頃は凄い話に膨らんでいるのだろう。そんな話を聞いた先輩はその与太話を確認するために学食に居るはずの俺を探しに来た。だが、転校生と一緒に飯を食おうとしていたから怖くなって声を掛けられない。そこに菜露が現れてここぞとばかりに菜露の後についてきた。この状況で菜露が俺に話しかけない訳はないからな。と言う事で菜露の後ろには美雨先輩が居ると答えがでる」
「うう、見てきたみたいに言うんだね」
「で、美雨先輩が叩き出した答えを聞いてみようか」
俺の言葉に周りの奴らも聞き耳を立てている。
ただでさえ目立つ転校生に、学園のアイドル、そして悪の権化が集まっている。
目立つなと言うほうが無理で下手をすれば鳳条先輩の時のように拷問部屋にご案内されてしまうだろう。
美雨先輩が返事をするより先に麟堂が席を立ち上がった。
「鳳条先輩と呼べばいいのか。許してはもらえないだろうが謝罪をしたい。先日はとんでもない無礼を働いてしまい大変申し訳なかった。理由は如何であれ許されることじゃない。いっその事、打ち首にしてもらって構わない。それとも俺がここで腹を」
「麟堂。お前は侍か? 時代錯誤も甚だしい、そのくらいにしておけ。お前が言うと冗談に聞こえない。美雨先輩は俺とこいつの問いにどう答えるんだ?」
ミウが刀を振り上げる姿と麟堂がサバイバルナイフを逆手に掴んで腹に切っ先を当てている姿が生々しく浮かび、それを打ち消すかのように美雨先輩に答えを求めた。
「意地悪。もう良いよ、許します。麟堂さんのおかげでハル君と出会えて恋人になれたんだし。それに何か訳ありだったんでしょ」
「その訳は俺が後でゆっくりと話す。それで良いかな」
「う、うん」
「終わりでいいな。麟堂も余計な事を言おうとするな、馬鹿が」
納得は出来ないようだったが美雨先輩が俺の横に座り菜露は麟堂の横で弁当を広げ始めた。
はっきり言えば居心地が悪い何でこんなに視線を浴びながら食事をしなければならないんだ。
だが美雨先輩に合わせて食事をしていると早々と麟堂が弁当箱を片付けてチェス盤を広げ始めた。
昼休みに相手をしてやると約束をしたのは俺自身だった。
「ほら、食いながら相手をしてやる。先に差せ」
「良いのか。よし」
目を輝かせながらチェス盤を見ている。
余程好きなのだろう。そして別の意味で周りの視線を集める事になった。
日本で将棋をしている姿は見たこともあるかもしれないがチェスとなれば話は別だ。
将棋も西洋将棋などと呼ばれるチェスもインドのチャトランガというボードゲームが源流だと言われている。
西に広がりチェスになり東は中国を経て日本に伝わったと言う説と東南アジアから伝わったとされる説がある。
しかし日本では認知度の違いが大きい、聞いたことはあるがチェスの試合を見た事がある高校生なんて皆無に等しいくらいだろう。
チェスと将棋の大きな違いは取った駒を使えない事でその為に消耗戦になり将棋にはないドローつまり引き分けがある。
そして勝負の多くは映画やテレビの様にチェックメイトではなくリザイン(投降)の方が多い。
チェスでは勝つ為ではなく負けない様にすることが重要になってくる。
「リザイン、どうしても勝てない」
「勝つんじゃなく負けない試合をすれば良いんだ。ナイトナイトのマスターに教えてもらえ。早い時間は暇だから頼み込めば相手はしてくれないかもしれないが教えてくれるだろ」
「本当か? 今度行ってみる」
「俺に進められたなんて言うなよ。純粋にチェスが好きですと言えばいいんだ」
嬉しそうに麟堂がチェス盤を片付け始めた。
「純粋にハル君の事が好きです」
「あのな、それをここで言うのか? 鳳条先輩」
「意地悪。どうして苗字で呼ぶの」
「ほかの誰にも聞かせたくないからかな。美雨先輩」
弁当箱をポーチに入れている美雨先輩が真っ赤になって俯いた。
この小動物は寂しがり屋で時々構ってやらないと居なくなりかねないのが玉に瑕だった。
それは建前で先輩の反応を見るのが楽しいなんて事は決して口には出さない。
その夜、約束どおり話をする為にミウを呼び出した。
場所は俺が襲われたマンションの近くの公園だ。
あの時の様に影の中から現れるかと思っていたらどうやら違うらしい。
ゆっくりと俺が座っているベンチに向かって歩いてくる人影が見える。
学校に着てくる白いコートを着ているところを見ると制服のままなのだろう、黒い髪の毛が北風に揺れている。
力を抑えているのか瞳は青く光っていない。
俺の前まで来るとその冷たい瞳で俺を見下ろした。
「何故、あいつがハルの近くに居る」
「実は金曜日にミウと別れてから菜露の目の前で拉致られたんだ。そしてビルの地下に閉じ込められた。消すつもりだったのだろう」
「何故、私を呼ばなかった」
「呼べなかったが正しいかな。そこの地下室には麟堂も閉じ込められていたからな」
「閉じ込められていた? 人狼なら地下室から逃げ出すなんて造作もないだろう」
「それが出来る状態じゃなかったんだ。もしあの場にミウを呼び出せば怒りに飲まれ蹴散らすだろう」
「当たり前だ。俺は殺されかけたんだぞ」
「だからだよ。彼女は回復が出来ないくらいまで衰弱していた。俺がへし折った腕さえ腫れ上がり全身には蹴り飛ばされ痣だらけだった。放っておけば良かったなんて言うなよ、そんな事を言えばこの場で仮契約を解約するからな」
「解約すれば良いだろう。俺はあいつを許せない」
「それは美雨先輩としてか? それとも」
「どちらもだ! 表裏一体だと言った筈だぞ」
「そうだな。もう一度だけ聞いて良いか、何でミウは人の味方をしている?」
「それは……」
「人間の男の子が命を救ってくれたから。その男の子はもしかしてミウがヴァンプだったのを知っていたんじゃないのか?」
「何でそんな事を」
「推測だ。美雨先輩は俺に『この世に有ってはいけないものはやっぱり消えるべきなんだよ』と言った。それは恐らく牢に閉じ込められていた時に言われた言葉なんだろう。それならばミウは幼い頃から自分がヴァンプだと言う事を知っていた。だから消される理由を少年に話したんじゃないかと」
「その通りだ。俺は男の子に理由を話した。それでも少年は」
「助けてくれた。だからこそなんじゃないか? 弱いものを助けるのは力あるものが行うべきだと。でも、これだけは知っておいて欲しい。どんなに力を持っていても死んでしまったものは救えないんだ」
体から力が引いていく。まるで地面に吸い取られていくように。
そして失う事の怖さを再び思い知らされた。
「ハル、お前……」
「気づいていたんですね。俺は『死』と言う言葉が苦手なんです。雪宮月音の話は」
「竜ヶ崎からアメフトの試合の時に聞いた。ハルの恋人になるはずだったとそして震災で」
「そうですか。あいつが大好きだったアメフトの試合を見に行く約束をしていたんです。春季の高校の大会でした。当日になって親父の仕事の都合で俺が後から会場で合流する事になってしまったんです。そして震災が起きてしまった。俺はこっちの駅で大きな揺れを感じました。電車は全く動かずニュースでは大騒ぎになっている。どうする事も出来ずに情報が欲しくって駅を飛び出してテレビが見られる場所に行くととんでもない状況になっている。そんな中で俺が選ぶべき道は唯一つだった」
「まさか、探しに行ったのか? でもどうやって」
「中学生の未成年の俺にできる事なんて何もありはしない。霧華に頼み込みました。俺の母親の家はイタリアでも有数の名家なんです。母親と言っても顔や声すら知りません。自分の命と引き換えに俺に命を与えてくれたんです。そして霧華はそんな母に仕えていた。頼れるものは何でも頼りたかった」
「良く力を貸してくれたな」
「不幸中の幸いと言えばいいのか霧華自身も被災地に向かうつもりで居たので、多少の対価を支払う事を条件にですけどね。直ぐに月音がいた場所に向かいました。そこはこの世の地獄だった。建物は殆ど倒壊していて瓦礫の山で、津波による被害も酷く未だに行方不明のままの人が沢山居ます。恐らく見つかる事は無いでしょう」
「それで月音さんは……」
「俺が見つけました。待ち合わせをしていた高校でね、崩れ落ちた鉄筋コンクリートの校舎の中から助けを求めるように腕だけが。その指には俺がプレゼントしたおもちゃの様な指輪があって」
「しかし指輪だけじゃ」
「DNA鑑定しましたから間違いないです」
「DNA鑑定?」
「ええ、形が残っていたのは腕だけですよ。骨は砕け、肉は引き千切られ」
「もういい! もう止めてくれ」
ミウの姿が美雨先輩の姿に戻り美雨先輩の瞳から大粒の涙が零れそうになっていた。
「そうですね。この話は止めましょう。仮契約の話ですが白紙にしてください」
「何でそんな事を。今更……」
「確信がある訳じゃないのですが気になる事があるんです。これは俺自身の問題で美雨先輩には関係ないことなので巻き込みたくないですし。今の俺にはそれを確かめるだけの術もない。だからです」
「気になる事って何なの?」
「やっぱり聞いてくるんですね」
「当たり前でしょ。関係ないとか巻き込みたくないなんて言わないで。ハル君を闇の世界に巻き込んだのは私なんだから」
大粒の涙が地面に落ち吸い込まれていく。
全てを話せば美雨先輩いやミウの性格から言えば勝手に動くだろう、そんな事になれば確実に返り討ちに会うことは目に見えている。
何処まで話せば言いのか躊躇いが先に立つ。
何故、俺を連れ去る為に待ち伏せが出来たのか。
人狼の麟堂がどうしてあそこまでボロボロにされ衰弱していたのか。
それにドアに施されていた結界か封印。
そしてあのイタリアで撮られた家族写真。
点が少しずつ繋がっていき失われていたパズルのピースが揃っていくがどれも美雨先輩に話せる内容ではなかった。
「美雨先輩、聞いてください。実は亀梨という苗字は鬼が無いと書いて鬼無だったんです。先祖が鬼よりめでたい亀と言う字をあてて亀梨になったんです。そして昔話の話のように鬼退治をしていた一族だと冗談交じりで聞いたことがあるんです。実際に日本には鬼の付く地名や苗字はたくさんありそんな土地には必ずと言っていいほど鬼の話しが伝承されています。四国には鬼無と言う地名が実際にあり桃太郎伝説と結びついています。中にはスサノオは鬼だったんじゃないかなんて言う人も居ます」
「スサノオってヤマタノオロチを退治した。そんな神話の話なんて」
「でも本当に居るじゃないですか鬼の力で鬼を退治している人が」
美雨先輩を見ると顔がほんのり赤くなっている。
「私はただ。でもハル君は」
「俺だって先輩が現れるまで半信半疑でした。鬼は元々『悪い者』『恐ろしい者』『強い者』を差し異形の者の総称だった。ミウの言う闇の者そのものです。あくまで推測にしかすぎないですけどね」
「だからってハル君が闇の者だった確証はないでしょ」
「そうですね。でも一つだけ確証があることがあるんです。俺は闇の者ではないかもしれないけれど裏の世界の人間です」
美雨先輩の瞳が一瞬だけ泳ぎ息を呑んだ。
「俺の母親の家はイタリアの名家です。しかし裏ではマフィアでさえ逃げ出すような事を平気でしていました。そして子どもの頃はその家で英才教育を受けていました。殺戮マシーンになるための」
「でもハル君は」
「優しいですか?」
「うん、優しいよ。だからハル君には決して人殺しなんか出来ない。だって私の事を命まで投げ出して救ってくれた。それに力は使い道さえ間違わなければ良いんだよ、闇の力だって人を助ける事が出来るんだもん」
「美雨先輩には敵いませんね。麟堂は孤児だったそうです。でも今は優しい両親と暮らしています。両親は彼女の闇の顔を知りません」
「もしかして、脅されてあんな事をさせられていたの?」
「はい、本人から直接聞きました。それと美雨先輩」
「もうこの話は終わり。私は仮契約だろうがハル君から離れる気はないからね」
「散るまでですか?」
「うんん、ヴァンプは散らないもん。永久に」
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