ライアーライアー

ライアーライアー(1997) 2


d.トム・シャドヤック

c.コメディ/ファンタジー


ジム・キャリー (フレッチャー)


……大得意の嘘で困難な裁判も勝利に導く一流弁護士のフレッチャー。私生活では都合のよい嘘を並べすぎて、妻に愛想を尽かされて離婚。息子のマキシミリアンとは月に何度か面会をするも、元妻に新たな恋人がいることで、少し複雑な立ち位置。

マキシミリアンの誕生日パーティーの日、フレッチャーは約束をすっぽかして上司と情事(韻を踏んでみた)。フレッチャーに会うことを楽しみにしていたマキシミリアンはケーキのろうそくを消す前に「パパがウソをつけなくなればいいのに」と願う。

すると翌日、不思議な力で願いが叶い、1日だけ嘘がつけなくなったフレッチャーが裁判(嘘がつけない状態だと超ハードモード)や元妻の再婚話(息子と完全に引き離されてしまう)にてんやわんやするドタバタのコメディ。


以下、ネタバレあり。



ジム・キャリーってすごい!


"嘘をつこうとすると不思議な力に邪魔されて意思に反して本当のことを言ってしまう"という葛藤の表現性がものすごく高かった。

表現の縦軸が振り切っている。

観客との親和性がめちゃくちゃ高いと思った。エンドロールでNG集が流れるんだけど、彼自身が楽しんで芝居に取り組んでいたことがよくわかった。


☆縦軸


(かなり端的に言うと、軸とは演技の方向性のことを指す。縦軸は観客/カメラに向けて働く表現の出力のことで、映像性/表現性とも呼ばれる。横軸とは作品の登場人物の関係性の濃淡のことで、作品によって縦横のバランスが異なる。例を挙げると、クラウンやピエロは縦軸に特化している。横軸に特化したものは静かな演劇など)


不思議な力は嘘の文章を書くことも許さない。青いペンで「これは赤です」と書こうと試みるも、腕が嫌がり勝手に「青」と書いてしまう。暴れまわる腕を押さえつけて、赤と書こうとする……が、どうしても青と書いてしまう! と自分との激しい戦いが繰り広げられるシーンは本当に面白かった。


嘘がつけないとなると後に控えている裁判に負けてしまうから必死になるし、目的・障害・葛藤がフレッチャーの精神を大きく揺さぶる内容となっていて、そこにジム・キャリーの凄まじい表現力が冴え渡りまくる。めちゃくちゃ面白い。

フレッチャーが追い込まれ、困り果て、必死になるほど、物語が深刻になり、笑えるものになる。これこそコメディだ!


上司の誘導(上司と情事の人)で役員たちにとても言えないような罵詈雑言を浴びせてしまったシーンも良かった。逆に面白がられてウケるっていう。そうそう上手くはいかないが、本音が通じるのはイイもんだ。


嘘が使えないので裁判をなんとか延期させようとあの手この手で奮闘するも延期にはならず、ラスト、もう負けるっていう時に証拠から嘘と真実を見つけて一発逆転大勝利っていうのもまた気持ちいい。かつてついた嘘に救われることもあるものだ。


ラスト、元妻と息子を乗せて滑走する飛行機と並走して叫ぶ「マーーーーックス!!!」は最高。ワクワクした。


字幕と吹き替えで1回ずつ観たんだけど、吹き替えの山寺宏一さんもめちゃくちゃ面白かった。

この世を生き抜く上で大切なもの・ベスト5には笑いのセンスが入ると思う。

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