第3話


「なん……えぇっ?!」


俺は慌ててへいと、そのへいが俺たちの方に落とす影とを繰り返し、交互に見比べた。


だって、どう考えても不自然なのだ。


太陽が壁の真上にあるならいざ知らず、俺は二時限目の授業を抜け出して来たのだから、日が中天に昇りきるには時間がある。


と、言うことはだ。


穴が空いている箇所からこちら側に向かって日光が差さないとおかしいのだ。

影の幅を単純に見てもそうだ。

明らかに横の低い位置から日差しを受けて出来たものなのに、それなのにどうして……


「どうして穴がないんだ?!」


「ね? 不思議でしょ?」


背中に付いた土を払いながら、ニヤニヤ笑って得意げに少女は言う。


「自分の手柄てがらみたいに言うな」


「いやいや、ある意味では私の手柄だよ? この謎を解きたいでしょう? 不思議でしょ、気になるでしょ〜う? 私は判断材料を増やしたの」


「……は? どう言う」


「だからぁ。こんな物騒ぶっそうなもの試しに通る勇気ないわーと思ってたとこにあんたが運良くはまってくれたから、引っこ抜いたんだってば」


「……」


「ねぇ、『おかしな穴トンネル』を通り抜けた感想はどう?どこか変わったところはあるっ?」


「……」


「私はへいの上をね? 行き来してただけだからわからないのよ」


「……」


「何よ? 『ぱくぱく』してないでなんか言いなさいよ。気持ち悪いわね」


「こんの〜クソ女っ!」

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