第11話 鷲と獅子
「レディ…どうやら重症みたいね」
ああそうだよ、と言わんばかりに私はバーガンディを睨んだ
あれから一週間たっていたからか私の意識も大分良くなっていたが
肩には無駄に包帯を巻いて動けないような状態だった
「本当残念だわ、マティス不器用だけどいい男だったのに」
失った彼は帰っては来なかった、マティスは死んだのだ
「あれ…」
私は我に返った
おかしい、主を失った契約者は例外なく死ぬ、そうだなぜ私はまだ生きているのかと
「どうかしたの?顔色が優れないようだけど?」
「俺の主はマティスだよな?
どうして俺は生きているんだ?」
きょとんとした色っぽい女性は少し目を上にして考えたそぶりをして
間をあけた後こう言った
・・・
「あなたその目で血の契約をする瞬間を見たの?
別にマティスを疑う気はないけれど、何か事情があったんじゃないかしら?」
確かにあの時は目が見えなかった、だが開いたとき彼はそこにいた…というだけだった
「ほかの誰が俺に能力を与えて、マティスはそれを隠したのか…」
「そういうことになるわね」
なんだろう嫌な気分であった、なぜならマティスを信用しきっていた私はすべてを彼に預けて
戦ってきたと思っていたからである
それは私の過去を唯一知っていて恩人でもあったからである
「言ったでしょう、あなたの目で見たものを信じなさいって」
確かに精神の修行をしたときにバーガンディは言っていた
「レディ!!大丈夫だったのかい!」
ばたりとドアをノックもせず飛んできた男、金髪エリートのエバンだ
「いやー無事でよかったよぉ!大好きだよレディ!」
「気持ち悪っ」
エバンはあまり空気が読めないのか場をわざと濁しているのかはわからないが
私はどうも気を悪くしていた
単純に波長が合わないんだろうか
「それより、俺はいくよ。
あいつに借りを返さなきゃな」
「肩にそんな怪我して勝てるのかしら?
それにサーカスは一人ではないようだし」
「サーカスってのは何人もいるのか?」
あの後から少し時間もたっていたし新しい情報を得ていたんだろうか、
そういえば仮面の男のことをクラウンとマティスは言っていた
「四人よ、ナイフ使いのジャック、空中を舞うスカイハイ、炎を吹くドラコ
そして道化師のクラウン。
彼らはサンドラの契約者集団だわ」
もうほとんど割り出せていて元々目星はついていたんだろうか
詳しすぎるといえるほどだった
「厄介だな本当サンドラとかいう連中は
でもよくそんなに情報を持ってこれたな」
私は苛立ちながらも関心して答えた
「この私、エバンが持ってきた情報ですから!」
堂々とした口調でエバンが語り出した
信じたくはないが一応は同じ組織の人間なのだから実績を認めざるを得なかった
「サンドラの本当の目的知ってるかい?」
エバンはかしこまって言った
「さぁ?目的はこの国の組織による覇権じゃないのか?」
私は疑問に思いながら言った
「この国ガルデアはかつて二つの国だった。
北の鷲ガルデアと南の獅子リオンズと呼ばれる国があった。
しかし統一戦争によってガルデアが制圧し新しい国旗が産まれた」
「それってグリフォンのことか?」
「ご名答!頭が鷲で体は獅子、二つの国を象徴する国旗としてグリフォンが選ばれたのさ」
「それがサンドラの目的とどう関係あるのさ」
私がわけわかってない話に聞くと、エバンは待ってましたと言わんばかりにこう答えた
「その失われた獅子の国リオンズを復活させることがサンドラの目的
いわばその国の生き残りってことさ
彼らは人身売買や横領や賭博で稼いだ金で契約者を産んでいるのさ」
私はピンっときた
弟は彼らが契約者を作るためにそこに連れていかれたのだろうと
「もう十分だ、よくなったそいつ等がいるリオンズの都市へ行ってやるよ」
へへっと笑って見せた私は、立って準備を始めた
「そこまで言うなら私はもう止めないけれど、クライヴ…何かあったら絶対やめさせるのよ?」
「わかってますよ!」
石の人間のほうがよっぽど私よりブレーキを持った心の持ち主だと思った
しかしやっと道しるべが見えてきた
奴は脇腹に刺されたナイフの傷があるはずだ
そんな遠くへは行けまいだろうと感じていた私は急いで町を出る
弟はまだどこかで私を待っているんだと、そう信じて
Little Lady 砂月慧 @HaLeNiLL
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