第10話 死闘の先に

足が震えた

身震いしていた体は芯を手に入れたかのように立って見せる

私は奴に挑もうとした

もはや仇と呼ぶには足りない、倒さねばいけない敵だった


「おい…!

やめろ!じきに応援が来る、組織が奴を殺す

お前は逃げろ」

かすれた声で体格のいい男マティスは苦しい顔でいった。


「約束は…できないな!」

私は道化を凝視して黄の眼光から奴の関節に狙いを定めた

自分のベルトに巻いた投げナイフを自分の手に持って思い切り飛び込ませた


軽い音でナイフは弾かれて地面に刺さった

私には彼の弱点が見えている、見えているのだがそれはその場所に当たればの話

道化はしゃがんでナイフ拾いこちらに振りかざして投げる

さくりと音とともに私の肩に命中し身を崩した私は仰向けに倒れた


奴はこっちへゆったりと歩きながら目の前まで来る

そして私の胸ぐらを掴み上へと持ち上げた

仮面の道化は不気味な表情で私を見た

そうか、今ここで私は死ぬんだ


漠然とした迫りくる恐怖

やがて死ぬという宿命を受けようとしていた

それも私からあらゆるものを奪った彼の手で



そこだ

私は左手でそいつの懐にダガーを刺した

ざくりと入った、目では見てないからか急所じゃないかもしれない

しかし、致命傷なのは間違いないはずだ


「ぐっ…」

彼の顔の表情が少し変わった気がした

奴は腕に力を入れるのをやめて、私は体の力を失って倒れこんだ

ついにここまでか、そう思い肩に刺さったナイフを抜きもせず目を瞑った

どこからか、どたどたと私の周りに駆け込んだ後、ああもうあいつはいないのかと

妙に納得していたんだ。

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