第3話 種も仕掛けもないショー
威厳のありそうな教会広場前には十人、二十人程度の人だかりができていた
その中心でお堅い身なりの格好をした壮年の男が
さほど高くもない小さな台に立って演説していた
「わたくしラングストは神に選ばれし使徒である。
生命を与えたコーネリア様に感謝したまえ、全ては神の導きである」
広場全体に届くような高らかな声で男は大衆に語り掛けていた
私から見たら堅苦しい空気は苦手だがこの男が本当にペテン師かどうか見破って見せたかった
しばらく演説が続くと、使いの人間が檻を運んできた
中身はやはり首輪につながれたライオンだ
しかし仰向けに腹を見せて眠っている獅子は生きている気配はなく
体に力が入ってるように感じさせなかった
「このラングスト!コーネリア様のために!
哀れなこの獅子の魂を呼び戻して見せよう!」
ラングストと名乗った男は左手の甲をライオンに向かせ手を近づけ触れていた
遠くからでもその左手に十字架のタトゥーが入っているのが見えた
男は目を瞑り、数十秒と立っただろうという頃
「ハッ!」
薄く閉じた目を大きく見開き、一瞬だがその空気、瞬間、声が広場で響き渡った
瞬く間に獅子に触れた左手は光だした
獅子は目覚めた
辺りを見回したその獅子は男に気づき、懐いたのか頬をすり寄せていた
熱気に包まれた歓声、高音の指笛や野次馬女の騒ぎ声
「教祖ラングスト!教祖ラングスト!教祖ラングスト!」
心底うるさいと思ったがなるほど、ほぼ間違いなく契約を結んだ痕跡が見える
あいつは同じ側の人間ってわけだ
「やっぱりね!血の匂いがしたんだ」
知ってましたかと言うかのようにクライヴは意気揚々と話す
「当たり前だ、じゃなきゃお前を連れてこないさ。
探知石だろ?」
しゃく
認めてやったが癪だったからちょっと棘を付けた
「ひどいなぁ…人を物みたいに扱うんだからさ!これだから血の契約者は…」
クライヴはぶつくさ言い続けていたが、私からは笑みがこぼれた
ビンゴだ、今からでも仕事が待ちきれない
弟ルカを連れ去った男の情報に何か手掛かりがあるかもしれない
道化師の首を狩る日が来ることに少しでも近づけばいいんだ
そう言い聞かせて私たちは教会を後にした
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