第2語 最狂の男
あらすじ
ひょんなことから出会った王城京介
と白木コトハ。彼女は京介が、
『天下無双』という『能』を持った男だと知る。
京介におぶられて学校に運ばれる彼女だったが、結局は遅刻し怒られてしまう‥‥‥
ーーーー
「俺の名は王城京介。俺の目標はこの学園のすべての能力者を叩き潰すことだ!!!!!!」
普通の自己紹介の後、いかにも馬鹿、としか言い様がない一言が教室中に響きわたる‥‥
そして、教室中にどよめきが起こった。そのなかには京介に対する『なに言ってんだアホかァ!?』などの罵倒が含まれていた‥‥‥
「は、はいはい、静かにしてね~。
け、京介くんも緊張しちゃったんだよねぇ。ははっ」
担任の『吉田由美子』がみんなを苦笑いをしながら制する、だが京介は空気を読まずこう続ける
「緊張?緊張などしていない、俺の目標を言ったまでだ」
すると、おとなしく座っていた同じクラスだったらしいコトハが、ツカツカと京介に向かって歩いてきて、ヒソヒソとこう言った
「ケースケ君!ちゃんと自己紹介しないと駄目だよ!みんなから変な目で見られちゃうよ!?」
すると京介がこう答えた
「ふっ、回りの目など気にする必要はない」
さらにコトハがこう続けた
「駄目なの!ほら、ちゃんと自己紹介して!」
「むぅ‥‥仕方がない」
コトハがあまりにも迫真な表情をしていたので、京介はしぶしぶそれを承諾した
「どうしたんですか?白木さん?」
コソコソと会話している二人を見て由美子がそう言った
「な、なんでもないでーす。あはははは‥‥‥」
コトハは笑って誤魔化して席に戻った
「じゃ、じゃあもう一回、ちゃんと自己紹介してみよっか」
由美子がそういうと、京介は改めて自己紹介を始めた
「俺の名前は王城京介。生まれは東京。『能』は先天性で、『天下無双』、最強の能力だ。もし信じられなければ挑んでこい。以上だ」
改めて自己紹介をしたのはいいものの、それは一般的な普通の自己紹介などではなくそれどころか異常な自己紹介になっていた‥‥‥。教室中でクスクスと笑っている者もいたがそれを無視して由美子が続けた
「はい、ありがとう。じゃああなたの席は白木さんの隣ね」
「えっ?」
先生のまさかの一言にコトハは驚いて小さく声をあげた。だが彼女は前から自分の席の隣においてある不自然な空席を気にしていたため、今日のための布石かと納得した
「よ、よろしくね~、ケースケ君」
机に腰を掛けた京介に対してコトハがそう言った
「‥‥‥‥‥」
京介がムッとした顔で黙っていたのでコトハは少し気になったが特に何を言うわけでもなく黙っていた
「では、これでホームルームを終わります。お願いします、日直さん」
由美子の一言で日直の人がHR終わりの挨拶をした
きりーつ れい 終わりまーす
ホームルームが終わった後、一人の男が京介の前にきてこう言った
「おい、貴様。もっとまともな挨拶が出来んのか。それに‥‥最強の『能』だと?笑わせるなよ」
それを聞いて京介は別段怒る様子もなくこう言った
「おいおい、なんだ貴様?随分と怖い顔をしてるじゃないか。そんなに俺の自己紹介が気にくわなかったのか?」
京介の態度が気にくわなかったのか
少し口元をひくつかせながら男が言いはなつ
「俺の名前は『黄河 明』だ。ああそうだ気にくわない、貴様のような奴が最強?このたわけが」
それを隣で聞いていたコノハはそれを聞いて思い出した。
この男は確か全国『能』テストで、都内3位の実力を持った男だと
「ちょ、ちょっとケースケ!この人と喧嘩すんのは‥‥‥」
コノハがヒソヒソと京介にそう言ったが、京介は気にしていなかった。それどころか
「たわけ‥か。なんだ貴様、江戸時代の人間か?」
という、なんとも余裕たっぷりな発言をした‥‥‥それを聞いた黄河は意外な一言を発した
「ふっ‥‥なかなかユーモアのある奴じゃないか。気に入ったよ」
コノハはなんだかホっとしていた。
この二人が激突したらとんでもないことになると悟っていたからだ。
京介は少し黙ってから喋りだした
「ふん、そうか、そうだろうなぁ。
俺もお前を気に入ったよ」
そうして二人はフハハハハと乾いた笑い声をあげた。だが二人とも目が笑っていなかったのでコトハは心の中で泣いていた‥‥
『ふぇぇぇ‥‥‥目が笑ってないよぉ』
次にくちを開いたのは黄河だった。
「ふふっ、まぁ‥‥‥学校生活を楽しみたまえ。あんなことを言ってしまったのだから、覚悟はしておくといいがな‥」
黄河は少し含んだ言い方をしながら京介の前から去っていった‥‥‥
「よかったねぇ、あの人に目つけられなくて。多分面倒臭いことになってたよぉ?あのままだと」
黄河が去ったあと一番に口を開いたのはコトハだった。コトハはなにかと京介を気にかけているようだった
「ふん!俺は来るものは拒まずだ。
奴のことなどどうでもよい」
京介はコトハの言葉を鼻で笑ってそう言うと、席を立ってどこかに行ってしまった
「ちょっとぉ!どこ行くの!」
コトハは叫んだが京介は黙々と歩き廊下に出ていってしまった。
「コトちゃんてぇ、あの転校生の人の知り合いなのぉ?」
コトハが京介を追いかけようとすると、友達の島崎ヨウコが話かけてきた。ヨウコはコトハと同じ後天性能力者であり、『九死一生』というそこまで使いどころのない能力の持ち主だった
「う、うん。朝ちょっとね‥‥‥」
ヨウコの問いにコトハが答えると、
ヨウコは納得したような顔をして言った
「あぁ~、ああいう不思議ちゃん?好きそうだもんねぇ、コトちゃん」
「い!?べ、別にそうゆう訳じゃないよぉ‥‥‥多分」
ヨウコの問いに顔を赤らめたコトハはがそう言うと、ヨウコはまたコトハをからかった
「ふふ~照れちゃってぇ。ホントはちょっと気になってるんでしょ?」
コトハは確かに何か運命のようなものを京介に感じていたが、彼女はまだ恋愛などしたこともないのでそれが恋愛感情なのかそうでないのかなど到底分かるはずがなかった
「照れてないし!でもちょっとだけ‥‥‥気には‥‥‥なってる‥‥かも?」
コトハが真っ赤な顔でそう言うと、
ヨウコはニヤニヤしながらこう言った
「ふ~ん。やっぱりぃ~」
するとコトハは席を立って、せこせこと逃げるように廊下に出ていった
「な、何いってんのかなワタシ、あはははは~」
という、なんともフワッとした事を言いながら。
「彼のとこに行くの?だったら私のこともよろしく言っておいてね~」
「違うよ!ちょっとトイレ行くだけ!」
ヨウコはそんな事を言ってコトハが廊下に出ていくのを見守っていた
ーーーー
『はぁ‥‥なんで照れちゃったんだろ。まさかこれが恋ってやつなの!?』
そんな事を心の中で考えながら、コトハは廊下を歩いていた
「あーもう!!もっとシャキッとしないと!!あれ?あれって‥‥‥」
廊下を歩いていたコトハの目に入ってきたのは、トイレの前で三人の男にからまれている京介の姿だった
「確かあの三人って‥‥全員先天性能力者の‥‥‥」
コトハの言う通り、京介に絡んでいる三人の男は、後天性能力者より優れているとされる先天性能力者の三人組だった。
『あぶなそうだったら止めないといけないけど‥‥‥ちょっと怖いなぁ』
そう思いながらコトハは少し様子を見ることにした
「おいてめぇ!!なんだよあの自己紹介!?頭おかしーんじゃねぇのかぁ!?」
今京介に向かって叫んだのは三人組のリーダー『六崚卓弥』。体格は良いが性格と頭はとても貧相な人間である。その他二人はAとBとでもしておこう
「「そうだそうだ」」
AとBが声を合わせて言うと、京介はゴミを見るような目でこう言った
「まったく愚かな奴らだ。貴様らの様な有象無象どもが俺に話かけるな」
黄河のように風格があるわけでも、気が長いわけでもない卓弥は、
ぶちギレた様子で京介に殴りかかろうとした
「んだとこのキチガイやろうが!!!」
『あっ!ケースケ君危ない!!』
「うぉらあぁ!!」
コトハが止める暇もなく、卓弥が京介に殴りかかった‥‥‥だが、ドズンッ!!という音と共に吹き飛んだのは卓弥の方だった‥‥
「ふんっ!!やはり雑魚か。やはり貴様はただの有象無象だ‥‥俺の前にたつ資格はない‥‥」
「げふっ‥‥‥」
何が起こったかなどわかるはずがない、当たり前だ。先に殴ったはずの卓弥が、避けるそぶりすらしなかった京介に吹っ飛ばされ壁にめり込んでいたのだ‥‥‥‥‥‥‥‥‥
怯えたAとBはもうすでに『ひえぇぇぇ』といって逃げ出していた
「あっ、えっ、あっ?京介‥‥‥くん?
なん‥‥でぇ?」
その後一番に口を開き、大量の疑問符を並べたのはコトハだった
「む?お前‥‥‥いたのか?」
「トイレの前であんなことしてたら誰だって気になるよぉ」
実に間の抜けた質問をした京介にコトハが呆れながら答えた
「だが、あれはしょうがないだろう。あの有象無象どもが絡んできたのだからな」
「そ、それもそうだけどそうじゃなくて!!ほら‥‥あなた、あいつから殴られたと思ったらあいつが吹っ飛んだじゃない!?それよ!」
次はコトハが質問をして、京介が答える番になった
「そんな事もわからないのか?ただ俺があいつより先に殴った、それだけだ」
「や、やっぱり‥‥ケースケって‥‥すごいね‥‥」
コトハが驚くのも無理はなかった‥‥‥、なぜなら卓弥が吹っ飛んだのは卓弥の拳が京介の顔と5mmぐらいの距離しかない時だったからだ。
そして、この時、コトハは確信した‥‥‥この男は、京介は、王城京介は、
『最狂』の男だと‥‥
ーーーー
『九死一生』:島崎ヨウコの『能』。何か非常事態が起きたときに自分が死ぬ確率がとてつもなく低くなるという能力。寿命で死ぬときは発動しないが、基本常時発動中である。但し、災害、犯罪に対して完全なセキュリティがしかれている未来の日本ではあまり必要がない
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