第514話 ユリハvs黒甲虫

―――――――――――――――中級層:大平原フィールド



 クーリアの持ち掛けた昆虫が大量に出現するイベントが行われている大平原フィールドにやってきたムクロたちであったが。

その虫の数は想像を超えていたのかひと目見た瞬間にユリハはムクロから受け取った防虫アイテムを即時に使い始めるほどであった―――――――――



「ちょッ!?ユリハ・・・まだ虫は遠くからしか見えてないんだからまだ使うタイミングじゃないよ・・・・

と言うか本当に大丈夫ゥ??怖かったら引き返して待っててもいいんだよ??

ムクロッちの面倒は任せていいからさ??」

「ウッ・・・それはできない・・・私だって頑張れば克服できちゃうはずなんだから!!!さぁ行こ!!!」

「ムクロ、今回のユリハはムクロ以上に無茶をしかねないからしっかりとカバーしてやるんだぞ?」

「そうだな・・・今回のユリハにはよく目を光らせておく。

それじゃユリハに続いて移動開始だな。」

「待ってたのじゃ!!!さぁバンバン虫を倒すのじゃッ!!」

「この距離からあれだけの数が空を舞ってるって・・・・この状態で私は空を飛ばない方がいいね・・・・」

「それがいいわ。

地道に下の道で近くまで移動して狩れる分を少しずつ倒していくのもグロリアでの醍醐味よ。

だから焦らず的確に行きましょ。」

先頭を駆け出すユリハを追いかけるようにムクロが後方についてモブのいる方へ移動を開始してからすぐの事。

ユリハの足が止まったことでムクロがそっと近づくとユリハの目には昆虫のモブに家を攻撃されているNPCの村が写っており。

ムクロはユリハにどうしたいのか尋ねた。



「ムクロ君・・・私ね、ムシは苦手だけどあの人たちをあのまま見殺しにできないの。

だから・・・・その・・・サポートしてくれると嬉しいかな??」

「任せろ、ユリハがそう決めて俺たちを頼って来たんだ。

断れるはずも見殺しにして先に進むこともできるはずがないだろ?

クーリアたちもそう思うだろ??」

「人助けは結果的にはいいコトがあるって事だからねぇ~

だから私はユリハの意見には賛成だよ。」

「クーリアは最後に報酬をいただくのが前提かもしれないけど。

あのままにしておくのは気持ちいいものじゃないものね。

だけどユリハ・・・一度決めた以上は苦手な相手だろうと狩って倒しなさい。

―――――――――――ただ、それだけよ。」

「エリの堅苦しい言い方はさておき・・・民家がそろそろ崩れてきておりますので早い対応をした方がよいかと。」

「そう言うことなら一番槍は私がもらうね!!!

飛んであのデカイヤツを家から引き離すよ。

―――――――――でりゃあぁぁッ!!!!」

ムクロたちはユリハの助けたいと言う気持ちを受け、NPCの村に襲撃をかける昆虫のモブに攻撃を開始し。

ファムのランスによって大きな甲虫を吹き飛ばすと・・・甲虫は近くにいたユリハ達を見て大きく威嚇を始めた。



「ギシャァアァァァアァァァ!!!!!!」

「くッ・・・・大丈夫、私ならやれる!!!

―――――――さぁかかってきなさい!大きくたって全然怖くないんだから!!!」

「それじゃ私はサポートをしようかな。

だからみんなどんどん前衛でドンパチしちゃってよ。

――――――――えぇい!!!Wステータスアップ!!!」

「本当にクーリアは楽な仕事ばかりして・・・・

こういう硬い装甲持ちの相手ほど私たちのスペルが刺さるのよ。

――――――――――ライトニングランス!!!」

「さっすがエリ!!!だったら私も・・・・・・」

「いや、ファムのスペルは駄目なんじゃないか!?

炎は家を燃やしてしまうだろ!?」

ミストの咄嗟の声にファムはスペルの発動をキャンセルし・・・・ランスを構えて攻撃に出ようとした時、背後から強烈な一撃によってファムは地面に叩きつけられる形で気絶しており。

その張本人はファムが吹き飛ばしたオスの甲虫モブのメスで・・・ファムの元へ移動しトドメを刺そうとしていたが――――――――




「何を寝ているのですか??眠るのであれば・・・ベッドの中だと何度言えばわかるのですか??

全く・・・力の制御ができずに家の方へ飛んで行ってしまいましたがまぁギリギリセーフでしょう。

ファム、ほら起きてください・・・・でなければ夜のは抜きにしますよ?」

「ダメダメだめぇ!?それは酷いよ!!!あんまりだよ!

ほら私ならちょっとウトウトしちゃってただけだから全然平気だよ!!!

だからアイスの件は流してよ!!!それじゃ援護に行ってきます!!!」

「あはは・・・レイはファムの扱いが上手くなってきたな。

だが、これでメスの方は消滅してるようだし・・・後はユリハ達の戦っているオスの昆虫モブと辺りの小さいモブを片付けたらここは大丈夫だろうから気を引き締めてやってくれ!!!」

「了解なのじゃッ!!!おりゃりゃッ!!!

フゥ~~この程度のモブならばスキルを使うまでもなさそうじゃが・・・・

ユリハの戦っているあの黒々としたモブが気になるの・・・・少しちょっかいを出してみるかのぉ??」

「ダメよ・・・アレはユリハが乗り越えるべき壁なの。

だからユリハが本当にダメになるか助けを求めるまで私たちは辺りにいる小さいモブを片付けるわよ。

――――――――――ユリハたちに邪魔が入らないようにね。」

「あぁ、了解だ!!!フンッ!!!

小さいモブもそこそこ集まって来ているから倒しておかないと面倒なことになり兼ねんからな。

だが・・・ユリハはそこそこ苦戦している様だがあのモブはどうなんだ?」

ミストはユリハと戦っている黒い甲虫モブに興味が湧いたのかブツブツ呟くと、それに答えるようにしてエリエントは辺りにいるモブにスペルで攻撃しつつ答え始めた。



「あの黒い装甲を持つモブはランク的には中ボス程度なのだけれど物理耐性の高い個体種で名前は

黒甲虫って言う名前で通ってるのだけれどユリハにとっては武器的にすごく不利ね。

だけどそんな不利な状況だとしても戦い抜けばきっとユリハはさらに強くなるはずよ。」

「ユリハの為とはいえこうやって見ているだけというのはすごくモヤモヤして仕方ないのだが・・・・」

「よしこっちは終わったが・・・ユリハは苦戦中と言ったところか。

サポートにで・・・・わかったわかった・・・エリが全員を援護に出さないようにしているんだろ?

にしても・・・エリに目を付けられたのがユリハにとって吉とでるか凶と出るか・・・・」

「何を呑気な事を言っておるのじゃ!?主殿!!!

ユリハの体力はすでに黄色バーに差し掛かろうとしておるのじゃ!!

ここは援護に出ねばユリハがやられてしまうのではないか!?」

ユキシロたちもモブの退治が終わったのかムクロたちが見守る場所に集まりユリハと黒甲虫との対戦に目をやると。

その硬い装甲に剣が弾かれたスキを突かれ、攻撃を喰らうユリハの姿にユキシロたちも我慢が限界と飛び出しそうになりつつもただただこの状況はムクロでさえもユリハの勇姿を見て応援するしかなかった―――――――――

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