第301話 ヴァニスの旧友・・・

―――――――――――昼休み:屋上


日に日に熱い日差しが増す中、弁当を食べながら次の日の修学旅行についての話ではなく。

悠一が本当に1人で数日間生活できるのか不安で不安でしかたない姉さんと楽しみだが何とも言えないという顔をするユリハの2人に悠一は質問攻めにあっていた。


「本当の本当に悠一は1人で大丈夫なのか??やはり私だけでも残った方がいいんじゃないのか??」

「それだったら私も残って・・・・」

「いや、俺なら大丈夫だ・・・いざとなったらコトハがいるからな。」

「そうね、それに何かあれば連絡もできるんだし・・・無人島に行くわけでもないのだから心配はするなと言わないけど。

そこまで深く考える必要はないと思うのだけれど??」

「それよりも私の名前が入ってないような気がするんだけど??私は頼りにならないってこと!?

そうだとしたら地味に傷つくんだけど!?ねぇ!私も頼りになるよね?ね?ね?」

コトハや悠一が由里達に説明する中・・・耀子は自分も頼りになると主張していた。


「でも、寂しくないって言ったらウソになるけど・・・

たまには息抜きとして2人には楽しんでもらいたいのが本音だけどな。」

「悠一君・・・・そうだね・・・ずっと心配して楽しめないのも嫌だし。

涼孤先輩!!私たちは私たちで楽しんじゃいましょう!!

あと、予定しているルートの最終チェックもしないとですね。」

「あぁ、そうだな。

こう言っては何だが、耀子さんたちには私たちが帰るまで悠一の助けになって欲しい。

悠一はこう言ってはいるが本当に1人でできるのか本当に心配なんだ。

だから・・・」

「大丈夫、悠一の支えになるのには慣れてるわ。

それに・・・色々考えたままだと2人も大変でしょ??

だから少しくらいは気にせずに楽しんでくれて構わないわ。」

「私もちゃんと役に立つから心配しないでいいよ!!

本当だよ!!はさせないよ!!」

涼孤と由里は2人に悠一の手助けを頼むと、2人は任せてと返事をして弁当を食べると教室に戻って行った。


そして放課後、明日から修学旅行と言う事で・・・久々の寄り道をすることとなり。

由里たちの良く行く喫茶店に行ったりアイスクリーム屋に行ったりと。

2人の行きたいと言う場所に全て回り。

夕方になったあたりで解散し、家に戻ると。

悠一はすぐにシャワーを済ませ、部屋に転がり込むと・・・・グロリアにログインし、ホームに入ると―――――――


「主殿~おかえりなのじゃぁ~」

「おう、ただいま・・・俺以外に誰か来ているのか??」

「おかえり、えっとね・・・ヴァニスがいるだけかな??」

「私がどうかしたの???

何かユキシロたちから聞くと・・・高貴な私を置いて温泉に行ったとか聞いたのだけれど??どういうこと??」

「ご主人様、ヴァニスはこの件に対してややご立腹でいらっしゃいます。

誤魔化すことなく謝るのが良いかと。」

レイに言われるがまま、状況を理解したムクロはヴァニスに即座に謝った。


「そんな平謝りはどうだっていいの。

この埋め合わせはどうしれくれるの?って聞いているのだけれど??

私だけ仲間外れにしておいて謝るだけで終わるのなら警察はいらないわよ!?」

「いや、警察は動かないと思うが・・・・

そうだな・・・どうしたら許してくれるんだ??

俺にできる事でなら埋め合わせをするんだが・・・」

「ご主人様、そんな不用意に望みを聞くなどと言ってはいけません。

こういう輩は立場の弱い人間を食い物にするモンスターですよ??」

レイの発言にヴァニスはプンプンと怒りながら吠え始めた。


「誰がモンスターですって!?私はこれでも無茶な命令も何も言ったりしないまともで高貴なプレイヤーよ!?

その辺にいるゴロツキプレイヤーのように法外な値段の要求やレアアイテムのたかりはしないわよ!?

だって、お金の力があれば何だってできるけど・・・友達はお金ではどうしようもないことだから。」

「そこまで言うのであれば、ご主人様に対して何を命ずるのか是非とも聞きたいのですが。

何を命令なさるおつもりなのですか??」

「・・・・・・ゴクリ・・・」

ムクロは唾をのむと、ヴァニスはレイの挑発的な聞き方から面と向かって言い放った。


「そうね、埋め合わせは・・・私とこの始まりの都でショッピングよ!!

本当は温泉に行きたかったけれど・・・無茶も言えないし。

この街で2人っきりでショッピングしてくれるのなら私は文句はないケド・・・どうかしら??」

「ヴァニスがそれで温泉の件を許してくれるのなら俺は構わない。」

「案外普通でしたが・・・言い換えればデートするなら許してやると言う事ですね。

実にヴァニスらしくてスマートな答えで納得しました。

自信満々にデートと言わない謙虚と言うべきか恥ずかしさが勝ったのかは知りませんが・・・派手にし過ぎない程度にお楽しみを。」

「主殿はヴァニスとデートなのかのぉ??

ぬぅ~~今日はアタイと一緒にクエストに行く約束をしていた派のじゃったのに・・・」

「私もそのクエストに同行する予定だったのに・・・取り消しになっちゃうの??」

クーリアとファムの残念そうな顔を見て、ムクロが何か言う前に。

ヴァニスはすぐに戻ってムクロを返すと言うと。

2人はヴァニスにぎゅっとハグし部屋に消えて行った。


「こ、これで文句はないでしょ??

さ・・・用意してすぐにショッピングして戻るわよ!?」

「何だか悪いな・・・2人のために気を使わせて。」

ムクロは2人のために予定を短くしたヴァニスに礼を言うと。

レイに見送られながら街へと移動し、ヴァニスの言うショッピングを開始した。


「着いたわ!!ここの帽子が人気と言ってたから少し入るわよ!!

あと、試着するからちゃんと答えてよね??」

「俺にはあんまりそう言ったセンスとかないんだが・・・大丈夫か??」

ムクロは不安ながらヴァニスに言うが、ヴァニスは聞く耳を持たずに帽子を選び。

鏡でチェックしながら気に入ったものをこちらに見せてきた。


「これはどうかしら???少しキュートすぎ??」

「ん~でも、その耳のついた帽子は特徴的でいいな。

ヴァニスに良く似合ってるな。」

と、ヴァニスに言うと・・・ヴァニスは恥ずかしそうに帽子を深くかぶり。

何故か同じデザインの黒い帽子と2つ購入し、ムクロに手渡した。


「はい、黒いこっちをムクロにあげるわ・・・私だけ買うのも気が引けるし・・・

こ、これは特別なことだから感謝しなさいよ!!

だから、大切にしてね??」

「あぁ、ありがとな・・・思ってたよりも材質がいいな。」

ムクロは受け取るとすぐに帽子をかぶってヴァニスに見せると、グーサインを出して喜んでいた。


「私程じゃないけど、まぁ・・・似合ってるんじゃないのかしら??」

「それならよかった。」

「あれ??あれってヴァニスじゃね??」

「マジ??ヤリィ~また色々言って金でも巻き上げようぜ??」

「またお前の友達ごっこ作戦か??金の為なら何でもやるよなぁ・・・」

そう言ってチャラチャラした3人のプレイヤーがムクロたちを取り囲み、ヴァニスに突っかかってきた。


「アンタたち・・・な、何のようなの!?

今さらノコノコやってきて!!!ムクロ、行きましょ・・・こんな奴ら相手にしなくても・・・・きゃッ!?」

「おい、ヴァニス!!!の俺たちに向かって随分な言い方じゃないのか??なぁ??」

「そうそう、いつものようにリムドをくれたらなんもしねぇって・・・くひひ。」

「ほらほら、暴れんなって・・・そこの男も黙ってろよ??

騒ぎにしたくねぇだろ??」

「ヴァニス、このプレイヤー達は・・・ヴァニスフレンドか??

何だか物騒で外見だけって感じのプレイヤーだが・・・」

ムクロは3人のプレイヤーに対して挑発しながらヴァニスにフレンドかどうか尋ねると、ヴァニスは違うと否定し。

その言葉と同時に男たちは武器を取り出していた―――――――――

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