第294話 裏山に潜む黒いモブを探して
――――――――――――――――黎桜館:温泉内
ムクロは温泉に入ってゆったりしていると・・・壁の向こう側からクーリアが呼びかけ、湯加減がどうとかバフに何が付いたのかと話し続けていると。
ついにはミストとユリハに注意されて静かになっていた。
そして、ムクロは1人で絶景を見ながら2人の事を心配していると。
バシャバシャと泳ぎながら再び浮輪を装備したちんまいルミ子がやってきた。
「変態マスターはこういう時でも他の方の事を考えるのですね。
ですが、あえて言うのなら・・・変態マスターはもっと気楽にしててもバチは当たらないと思います。
それに今はそこから聞こえてくる少しうるさいクーリアたちに話しを返す方が優先じゃないでしょうか??」
「お~いムクロッち~~~ミストとエリがそろそろ到着するとか言ってるからで迎えしようってなっているんだけど・・・
ムクロッち???いないの??」
「お~い、ムクロく~ん。
いたら返事してよ~~ん?露天風呂の方にでも行っちゃったのかな??」
「どうだろう・・・何かトラブルに巻き込まれたりしてなければいいが・・・・
ムクロ、本当にいないのか??」
「あぁ、ごめんごめん・・・ちょっとブロッサムで違う用事をしてた。
で、どうしたんだ???」
ムクロは慌てて返事をすると・・・2人が黎桜館にそろそろ着くと聞き。
風呂から上がる際にルミ子に礼を言うと。
ルミ子は温泉が気に入ったのかもう少しだけ温泉に入ってから戻ると言ってムクロを見送り。
受付前でユリハ達と合流し黎桜館の玄関口に出て待っていると―――――
「あ、来たよ!!でも・・・何かから逃げるように2人が走っているような・・・
んげッ!?あれって・・・もしかして・・・」
「あぁアレはモブの群れだ!!!
2人を助けに出る!!!ユリハ達も来るか??」
「うん!!!皆で助けに行こうよ!!!」
「はぁ~静かにやって来るのかと思えば・・・あんなにも大量に引き連れてくるとは・・・旅館迷惑にも程があります。
さぁ・・・後方支援は私とクーリアに任せてご主人様たちはミストたちの援護に。」
レイとクーリアは後方支援に回ると言ってムクロたちを出撃させると。
ミストたちを含めた大群戦になっていた。
「みんな、すまないな・・・すべての敵にターゲットにされながら移動してきたのがマズかった・・・だが、予定よりも多少早く到着できたが。
少し数が増えているな・・・・」
「途中から数体のモブが仲間を呼びに追尾から消えていたから妥当な数よ。
それに・・・こっちにはムクロたちがいるのだから問題はないわ。
そうでしょ?ムクロ??」
「俺に全部押し付けるのだけは止めてくれよ??
昔にも同じことをされた記憶があるんだが・・・・」
「そんな事言ってないで2人とも攻撃して!!!
―――――――
「私も頑張らないと~~えいやッ!!!!
――――――――ブレイクランス!!!!」
「さぁ、私たちも支援するよ!!!
―――――――――――上空のモブには・・・アイスバレット!!!」
「地上のこちらに近づこうとするモブは私の剛腕装甲でバラバラに・・・です!!」
ユリハに怒られながら2人は攻撃を開始し、クーリアとレイの援護もあって何とか全てのモブを倒し切ると・・・騒ぎを聞きつけた黎桜館の女将さんが出て来た。
「このモブ達の有様を見るとお客様たちは相当な腕の立つプレイヤーとお見受けしたのですが。
どうか私ん身勝手な要望を叶えてもらえないでしょうか??
最近この山に得体の知れないモブが住み着き、他のモブの生息個所を奪っており・・・こちらの黎桜館にまで移動してくるモブも出ていて困っているのです。
だから―――――――」
「だから、俺たちにその得体の知れないモブを退治してくれって事か?
だが・・・得体の知れないモブなら昨日ゴブリンマリーダをその山で倒したんだが・・・そのモブじゃないのか??」
ムクロは秘密にするはずであったゴブリンマリーダの話を女将にすると・・・女将が答える前にクーリアたちが吠え始めた。
「あぁ!?やっぱりムクロッちたちはコソコソと私たちを差し置いてモブ狩りしてたんじゃないか!!!!
それにこの辺にゴブリンマリーダとか出るワケ・・・・ん?ムクロッちのその顔って事は・・・マジでここにいたのッ!?うわぁ~って事は本当に私はレアモブを逃したの!?最悪だよ~~~うぅぅぅ・・・・」
「クーリアの悲しみと同様に私もそのような話は聞かされておりませんが??
どういうおつもりだったのですか??ご主人様??」
「ムクロも色々と大変だな・・・だが、コソコソ2人を置いてユリハ達だけでモブを狩りに行くのは感心しないぞ??」
「でも・・・妙ね、この辺りに海やそう言った特別なイベントがしてるわけでもないのにマリーダが現れるなんて・・・まさか削除されたはずの特異系モブとか言うんじゃないでしょうね??」
エリエントの質問にムクロは嘘やごまかしは通用しないと観念し、皆にキャレットからの情報を提供すると。
すぐに納得し・・・女将は我慢しきれずに話し始めた。
「その、皆さんの言う特異モブと言うのはよくわかりませんが・・・・
先程から出ているゴブリンマリーダというモブではないモブがこの裏山を根城にして、現存するモブ達の住処を奪っているのです。
その体は無数のウロコに覆われ、強い眼光と呪いを振り撒く黒いモブでございます。
そのモブの噂が出てからムクロさんたち以外のお客さんの足が途絶えているのがその証拠にございます。」
「あぁ~~だから情報を教えてくれた連中が行くなとか危ないとか言ってたんだね。
それに・・・その噂もこの旅館に近づけさせないようにするための夢物語かガセだと思っていたんだけど・・・まさか実話だったなんて・・・あはは??
みんな、どうしたの??」
「クーリア・・・そう言う事はちゃんと調べておかないと駄目って何度も言ってたわよね???
ねぇ、どうされたい??ウサの尻尾か耳か・・・どっちがよく燃えそうかしら??」
「まぁエリも少し落ち着け。
こういう場合はそのモブをどうするかによるだろ?
それに・・・こういう話は大抵ムクロは乗るからな・・・・」
「バレたか?ミストはやっぱり何でもわかるんだな。
と、言う事だが・・・みんなはどうする??こんな強敵と戦えるなんてそうはないと思うが・・・」
「私はムクロ君に協力するよ!!
また目を放すと危ないことすると思うし・・・そのモブの素性もわからないから1人よりも2人の方がいいでしょ??」
「いいえ、2人ではなく私たち全員で行きましょう。
この流れで行きますと全員が流れに巻き込まれるのは必須。
それならば始めから全員でと言った方が話が早いですから。」
ユリハの言葉にレイが修正を加えると・・・ミストたちはグーサインを出し。
得体の知れないモブの退治に参加することとなり。
女将さんにそのモブの詳細を聞いてからムクロたちは裏山に向かって行った。
「で、ムクロ君・・・女将さんの話を聞いて何か心当たりとかモブの予想とかある??」
「ん~そうだな・・・ウロボロスネギュラスとかハーバレリアスワンプとか・・・黒いヘビみたいなモブは割といるからどれが出るか不明だが・・・
何が出てきてもただ言えることが1つある。」
「それは・・・そのどれ等が出て来たとしても通常とは違う特異モブの可能性が特に高い・・・そう言いたいんでしょ??」
「やはり、地形的にそう言ったモブが出ないから断言できるのか??
私はそこまでやり込んでいないからどんなモブが出てくるのやら想像もつかないが。」
「えっとね・・・ムクロッちが言ったウロボロス系は上級層の希少ボスクラスでスワンプは攻略動画で何回か見たことある程度だけど・・・あれはプレイヤーが30人いても勝てるかわからないモブだよ・・・・」
「そんなに強いのですか??ですが・・・ご主人様が知っていると言う事は戦った事があると言う事ですよね??
ならば何の心配はいらないんじゃないでしょうか?」
「ん~ムクロってたまに何も言わないときあるけど・・・そういうときって大概危ないクエストだったりモブだったりするんだよねぇ~~」
ムクロはファムの発言に苦笑で答えると・・・女将さんの言っていた黒いモブの住処らしき大穴が姿を現した――――――――
―――――――――――――――――黎桜館:裏山の大穴前
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