第191話 アンコウ鍋のパーティー

――――――――――――プライベートホーム


そして、レイが台所で調理を始めて数分が経ち・・・台所からレイは見事に切り分けたアンコウの身を並べると・・・クーリアやユキシロたち一同が歓声を上げるとレイが鍋に火をかけて待っている間に、ミストは俺やユリハたちがいなくなってから何をしていたのかを尋ね・・・俺は木の実採取のクエストの話やハシャとの闘い・・・それに釣りをしたことを楽しげに話すと、ミストやクーリアたちの表情が話を聞くにつれて少しずつ曇り・・・最後にはみなが口を揃えて「ズルイ」と言って惜しんでいた―――――――


「次回は必ず私たちも誘うのだぞ!?いいな!!」

「そ~だよ~私たちがいないとムクロッちたちだけじゃ盛り上がらないでしょ?」

「クーリアの場合は騒がしいの間違いでしょ?

―――――――で、リィとロロは誘わなくてよかったの?」

「いや、誘ったんだが・・・すでにログアウトしていてだな、まぁ・・・次回にでも呼べば問題ないはずだ・・・多分・・・

―――――――で、アヤカはレポート終わったのか?」

「大学のレポートは朝に書くから大丈夫よ。

それに、グロリアで鍋が食べられる方が珍しいイベントじゃない?

だからレポート何て後よあと。」

「あはは・・・でも、今回の木の実採取はある意味ハードだったね・・・」

「そうね、あの・・・ハシャって言うNPCは噂通り滅茶苦茶な強さだったけどムクロはそれを超えてたし・・・本当に今日は慌ただしい1日だったわね。」

「では、煮えてきましたので野菜から投入いたします。

それからご主人様・・・こういう場合は開始の儀があるのではないでしょうか?」

そう言うとレイは俺に果実酒の入ったコップを渡し・・・皆にお酒を注いで回ると、鍋の前にスタンバイしていた。


「ムクロッち、いつものようにズババ~ンと言っちゃえばいいんだよ!!」

「うむ、開始の言葉はやはりムクロが気合を入れてこそだからな。」

「え、私たち未成年だけどお酒何て飲んで大丈夫なの!?」

「ヴァニス、これはゲームだから未成年とか関係ないわ。

それに、ここにいるプレイヤーはみんなお酒を嗜んでいるけど・・・ヴァニスはもちろん高貴なのだから飲みなれてるでしょ?」

「静かにしてくれ・・・その、何だ・・・まずは、今日1日お疲れ・・・

で、これから鍋を食べる前に注意を1つ・・・飲み過ぎ食べ過ぎは程々で頼む、以上だ!

それじゃ、みんな・・・カンパイ!!!」

「「「「「カンパーイ!!!」」」」」

俺の話をクスクスとクーリアたちが笑いながら聞き、俺のカンパイの合図で皆は一斉に乾杯し合い・・・ヴァニスはエリの挑発するような質問に答えるようにごくごくと果実酒を飲み干し・・・エリは手をぱちぱちしながらヴァニスのコップに並々と果実酒を注ぎ・・・それを見ていたユキシロとアヤカもごくごくと飲む中、ミストは冷酒をちびちびとおちょこで飲んでいた。


「それでは皆さん・・・鍋が出来ましたので、どうぞ召し上がってください。

こちらはユリハが釣り上げたアンコウで・・・しゃぶしゃぶという食べ方で大変美味しく食べられるのそうなので、どうぞ・・・それでは。」

「よ~し、食べるぞ!!!」

「ぷはぁ~~果実酒はやっぱり美味しいわね・・・

―――――それにしても、ユリハの釣ったアンコウは本当に立派ね。」

「そうだな、私もリアルでもここまで大きなアンコウは見たことがない。

さて、私もしゃぶしゃぶをいただこう。」

「天世界だと魚は空を飛んでるから・・・こんな珍妙な魚は初めて見たかな。

でも、見た目の割にすっごく美味しいね!!」

「アンコウは珍味で中々食べることのできぬ魚じゃからのぉ~~

ふはぁ~ふわふわのこの身・・・まさしくアンコウなのじゃ!!」

「あ、ムクロ!!それは私が育ててたアンコウよ!!!返しなさい!!」

「あ・・・悪いな、近くにあったから・・・その、渡すのが面倒だ・・・ほら、ア~ン。」

俺はアヤカの口元に運ぶと・・・それを見ていたから妙な視線を感じたが、アヤカは恥ずかしそうにしながらパクっと食べ・・・再びアンコウの身を泳がせていた。


「あ~あ・・・ムクロッちって本当にコレだよ・・・ダメというか・・・何と言うか・・・」

「まったくだな!!!姉である私に見せびらかすようなこの仕打ち・・・どうしたものか。」

「ご主人様、お酒のペースが悪いですよ・・・ヴァニスを見習ってガンガンじゃぶじゃぶとお飲みになってバタンキューとなってください。」

「その後が怖いからお酒は程々で頼む。」

「あへへ・・・ムクロ~~カンパ~~~イ・・・アンコウおいひぃ~~~あへへ・・・」

「ふむ、4杯目でヴァニスは酔いが回るっと・・・・案外飲めないのね。」

「エリエントは一体何をメモしておるのじゃ??」

「ユキシロ・・・それは聞かない方がいいと思うよ・・・それより、私たちはみんながあまり食べない野菜を片付ける役目を背負っているんだから・・・じゃんじゃんとって食べようよ!!!」

ファムとユキシロはふにゃふにゃになった野菜やアンコウを山のように回収しながらもしゃもしゃと食べ・・・ヴァニスは目がぐるぐると回っており、フラフラとしていた。

そして、レイは俺のコップに果実酒を注ぎながらにこにこし・・・それを見ていたクーリアは何やら悪いことを考えたような顔をしながら俺の場所にやって来ると・・・・


「ムクロッち~~私の飲んでるこの果実酒オカシナ味がするんだけど飲んでみてよ?変じゃない?」

「ゴクゴク・・・・いや、俺の飲んでる果実酒と同じだけどな・・・って、おい・・・」

俺はクーリアのコップの味を確かめると違和感はなく、俺のコップを渡す前にクーリアは俺の部分を狙ってぐびぐびと飲み干し・・・

満足したのか間違いだと言いながら自分の場所まで戻って行くと、ミストとユリハの視線に気が付き・・・


「ユリハにミスト・・・どうかしたか?

――――――何か変か?」

「自分の胸に聞くがいい!!!」

「もう・・・ムクロ君のバカ・・・・」

俺は2人がやや不機嫌そうにしていることを気に留めず・・・アンコウと果実酒を食べていると・・・次にアヤカが果実酒でフラフラとなり、近くにやってきたレイは小鳥のひなの様に俺の方を口を開けて待っていると言うすごくカオスティックな状況になっていた。


「ご主人様~~早くエサをお与えください~~~

――――――ご主人様の大き・・・・もごご・・・」

「ほら、エサだぞ~~~じゃんじゃんお食べ・・・」

「私、ヴァニス達に毛布取って来るね。」

「あぁ・・・すまないな。」

「にしても・・・アヤカはお酒には弱いよね・・・ヴァニスはもっと弱いし・・・」

「のじゃ~~アタイはまだまだイケルのじゃ~~~のぉファム?」

「うんうん♪私たちがいれば何でも食べきっちゃうよ!!!」

「うぅ・・・・うっぷ・・・」

「ん~~~むにゃむにゃ・・・」

アヤカとヴァニスは果実酒で寝入ってしまい・・・ソファーで寝ている2人にユリハが毛布を取りに行くと・・・クーリアが再び悪い顔をしてこちらに近づいてきた。


「ムクロッちぃ~~私も酔っちゃったみたいだからぁ・・・ここで寝かせてよ~」

「ダメだ・・・ユリハに見つかったら何て言われるか・・・・」

「私がどうかしたのかなぁ??ムクロ君?」

クーリアがごろんと俺の膝に寝転がりながら、俺はクーリアをどかそうとしていると・・・背中をユリハに掴まれ、俺は必死にクーリアを起こして何もないことをアピールすると・・・ユリハはアヤカのいなくなった俺の隣に座り・・・アンコウをしゃぶしゃぶして食べ始めた。


「で、2人はどうだった?」

「2人はスヤスヤと寝ていたけど・・・ヴァニスが少し気持ち悪そうにしてたかな・・・」

「先輩からの洗礼よ・・・この通過儀礼は仕方ないわ。」

「エリは時に悪魔的なことをするからのぉ・・・・」

「ほら、ユキシロ!!食べないとお野菜がしなしなになっちゃう!!!」

ヴァニスに無理やり飲ませた張本人はちびちびと果実酒を飲みながらアンコウを食べ・・・口に大量に捻じ込まれたレイは、何とか全ての食材を食べ終え・・・・

ミストと一緒に冷酒をちびちびと飲んで話し込んでいた――――――――――


――――――――――――――プライベートホーム

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