第150話 白いジャカルゥ

―――――――――――ジャカルゥ牧場


ユリハ達は上手にジャカルゥたちと打ち解け合い、仲良くなっていたのだが・・・・その頃、俺はというと・・・白いジャカルゥにエサをやろうと何度もトライをし続けていた。


―――――――――クエクエクエクエ!!!!


「なんでそんなに怒るんだ!?そんなに怒るのは俺が男だからか?

ユリハ達のようなカワイイ女の子じゃないとエサも食べてくれないのか?」

「ムクロ~その子はメスだからそういうのじゃないと思うよ~~~」

俺の声が大きかったのか、ヒルミ達に全部聞かれていたらしく・・・ユリハ達も遠くから俺に対してクスクスと顔を隠しながら笑っていた・・・・


――――――クエクエクエクエ!!!クエクエクエ!!!


「何が言いたいかさっぱりだが・・・ここまで来るとどうやってでもエサを食べさせたくなってきた・・・ゲーマーの悪い癖だな・・・お前は一番面倒なプレイヤーに喧嘩を売ったんだ・・・エサをおとなしく食べないと後悔するぜ!!」

「ムクロさ~~ん、喧嘩を売っているのははたから見ているとムクロさんの方から売っているようにしか見えませんよ~~~

ジャカルゥがどうして怒っているのか感じ取れれば・・・きっとムクロさんの事を理解してくれると思いますよ、だから・・・あきらめないで頑張って!」

「うん、ムクロ君ならきっと仲良くなれるよ!」

「だな、ムクロ・・・ファイトとガッツ――――――それに愛情だ!!!」

「ん~ムクロッちは女心がわかってないからダメなんだよ~~だ。

私にもっとよく接してよ・・・・ブツブツ・・・・」

「ムクロ、この子たちは気高き生き物だと思うの・・・だからその子よりも目線を低くして接してみてはどうかしら?」

「やめるのじゃ~~~アタイの髪はエサじゃないのじゃ!」

俺はユキシロの叫びを聞きながら、エリの助言通りにジャカルゥよりも目線を低くして近づくと・・・先ほどまでと違って、ジャカルゥが騒がしく威嚇することはなくなった。


―――――――クエクエクエ・・・・


「さすがの分析力だなエリ・・・本当にジャカルゥがおとなしくなった!!

ホラ、よしよし・・・思ってたよりもモフモフだな――――――

ユリハ達が騒いで触るワケだ・・・うるさくして悪かったな。」

「へぇ~珍しい・・・あの子が初めて会ったプレイヤーを近づけるなんて・・・エリエントさんの助言というよりもムクロさんに興味を示したのかな?

――――――ん~ジャカルゥの生態はまだまだ謎が多い・・・・・」

ヒルミは何やらぶつぶつと独り言をしながら施設に戻っていった。


―――――――クエクエ~~~


「お、やっとエサに興味を示したか・・・ホラ。

―――――いい食いっぷりだな、もう少しゆっくり食べないとすぐになくなるぞ?」

「ふふ、ムクロ君たちすっかり仲良くなったね。

それにしてもこの子はすごく綺麗な白い毛をしているね。」

「2人とも、このジャカルゥちゃんは俗に言うレアなジャカルゥで・・・滅多に生まれない貴重なジャカルゥなんだよ。」

「うむ、こうやって見ているだけでも神秘的なオーラを持っているような気がする。」

「――――――――白いジャカルゥに乗ったムクロ・・・・」

「ん?エリ、何か言ったか?」

エリが何やらボソボソと何かを言ったのだが・・・エリは何も言っていないと言いながら牧場内でジャカルゥに追われているユキシロを助けに向かった。


「なんだったんだ?エリのヤツ・・・・」

「はぁ~これだからムクロッちは駄目なんだよね~~」

「あはは・・・・ムクロ君は大体こんな感じがいつも通りだからね・・・・うん、仕方ないよ。」

「だが、ユキシロの髪をエサの草と間違えて食そうとしているのは・・・ユキシロに悪いが少し可笑しいな・・・・フフ。」


――――――クエ!!!!クエクエクエ!!!


「誰か~~~たすけて欲しいのじゃ~~~」

「はぁ、ユキシロ・・・これで貸し1つよ・・・ホラ、ジャカルゥ・・・エサよ。」

エリがエサをチラチラさせながらユキシロの前からやってくると、ユキシロは過ぎ去り際に感謝しながら走り抜け・・・エリの手に持ったエサに反応し、ジャカルゥはエリの前で急停止してエリがちらつかせているエサを見つめていた。


「エリちゃんって・・・動物好きなのかな?」

「ん~ユキシロの事もあるし、好きなんじゃないか?」

「そうだな、エリは何だかんだ言ってここまで来たからな。」

「ふぅ~助かったのじゃ~~」

「ハイ、よしよし・・・あのユキシロって子はエサじゃないから追いかけては駄目よ?

―――――あんなのを食べたらお腹を壊しちゃうわよ?

――――――だから、食べるなら牧場ココのエサで我慢しなさい・・・ふふ、コラ・・・舐めちゃダメ・・くすぐったい。」

エサを食べ終えたジャカルゥはエサが足りなかったのかエリの手を下でぺろぺろと舐めて探していると、ヒルミが掛け声を上げるとジャカルゥが一斉に集まりだした。


――――――――クエーーーー

―――――クエクエクエーーーー

――――――――クエクエーーーーー


「白いジャカルゥは微動だにしないが・・・どうしたんだ、一体?」

「あ・・・ムクロ君きっとアレだよ・・・ジャカルゥたちが一か所に集まってる!!」

「面白そうだから、あたし行ってみてくる~~」

「ちょ、おい・・・仕方ない、私も付いていくか・・・ムクロたちはどうする?」

俺たちはミストの誘いに乗り、クーリアを追ってジャカルゥたちが集まっている何かしらのタワーのようなものの前にやってくると・・・・

急にタワーからじゃらじゃらっと丸いものが流れ込み、それを必死にジャカルゥたちが食べ始めていた。


「ムクロさんたちもジャカルゥたちとに来てたんだね。

どう?この食べっぷり・・・この子たちはすごく動くからすぐにお腹が減っちゃうの。

だからこの時間あたりはジャカルゥのエサの時間なんだ。

あと、悪いんだけど・・・あの白い子はこっちに来たがらないから・・・上げてくれないかな?」

「あぁ、わかった。

ユリハ達はここから放れないと思うし・・・それじゃ、行ってくるかな。」

俺はヒルミの頼みを受け、白いジャカルゥにエサをやりに行こうとすると・・・ユリハ達はジャカルゥに視線を向けたまま行ってらっしゃいと言い、なんだか寂しさを感じながら白いジャカルゥの所まで戻ってきた。


―――――――クエクエクエ~~~


「さっきと違っておとなしくなったな・・・馴染んだ・・・のか?

まぁいいか、ヒルミに頼まれたお前のエサだ・・・ほら。」

俺はジャカルゥの口元に丸い大きめなビー玉状のエサを与えると。


「本当にムクロさんって不思議な方だね・・・・

白いジャカルゥがムクロさんから餌をもらって食べてるなんて。」

「そうだね・・・ムクロ君は不思議というかなんというか・・・昔のムクロ君はどんな人かは知らないけど、今私たちの目の前にいるムクロ君はいい人だよ。

悪い言い方をしたら、お人よしになるのかな?―――――フフ。」

「だよね~ムクロッちって過去のプレイ経歴をあまり話さないから謎が多いんだよね~でもでも、ムクロッちはやるときはやる男だからね。

何てたって私たちをこうやってまとめて来たんだから!」

「クーリアの言う通りかもしれないな。

ムクロはやるときはやる人間だ・・・・あと、ムクロは自分から過去を話すようなタイプじゃない・・・それは私の方から代わりに謝っておく、すまない。

ただ、ムクロにも色々あったんだ・・・本当に色々な。

だが・・・こうやってユリハ達と関わってきたことでムクロ自身がのは確かだ・・・だからムクロ自身から話せるようになるまで待っていてやってほしい。」

「ミスト、あなたがそうやってムクロの代わりに頭を下げる必要はない。

でも、本当にムクロは昔の頃のムクロより成長した?と言うべきなのかしら。

だけど私には過去も現在もムクロはムクロだから・・・どっちでもいいのだけれど。」

「むむぅ~でも主殿は不思議なプレイヤーと言うのは頷けるのじゃ。

何せ、アタイと初めて出会った時もエサをくれたしのぉ~

普通のプレイヤーとは違った行動をするあたり・・・アタイは主殿が大好きなのじゃ。」

ユリハ達の感想を聞きながら、ヒルミは白いジャカルゥと俺の方を向くと・・・何かを決意したかのような強い視線を送っていた―――――――


―――――――――ジャカルゥ牧場

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