第143話 侮辱に対する代価

――――――22時30分・・・コロシアム:酒場


アヤカはムクロに対してユリハがあまりしないような甘え方でアプローチし、その一部始終を見せられていたユリハは水の入ったジョッキをふるふると震わせながら我慢に我慢して何かを押し殺し、ひきつった顔で笑っていた――――――――


「そろそろ何とかせねばユリハの怒りの限度じゃぞ!?」

「そうだね、このままだと料理食べられなくなっちゃうかも・・・」

「ファムの心配はお腹の中に入るモノの心配ですか・・・この状況でもなお、その食意地と神経の図太さは評価しなくてはいけませんが場をわきまえないと私が代りにファムの分を食べる事になりますので・・・そのつもりで。」

レイのマジな対応と眼力にファムは冗談じゃないと悟ると、この修羅場をどうにかできないか考えていると・・・


「はいヨ、お待ちどさ~ん・・・フレイムガルダ―の丸焼きのお客さんは・・・」

「ハイハイハ~~イ♪ソレ私のだよ!!!」

「レイレイ、ダメなのじゃ・・・ファムの料理が来てしまったのじゃ・・・

でも、アレ美味しそうなのじゃ―――――」

「今そんな事を言っている場合では・・・ん?料理?―――――

そう言えば以前宴会を行った際にアヤカはすぐに酔い潰れ・・・これしかないですね。

―――――――すみませんウェイター・・・・ごにょごにょ。」

レイは帰ろうとしたウェイターに追加オーダーをすると、ウェイターは綺麗で洒落たグラスに入ったカクテルをアヤカの前に置き――――――


「これは・・・ムクロ?からアヤカへの感謝?の一杯だとか・・・と、まぁ・・ごゆっくり~」

「あの女ウェイターはダメですね・・・ですが、これでアヤカの前にご主人様(仮)からのお酒が届いたわけで・・・後は飲みさえしてくれれば――――――」

「ふ~ん、いつの間に頼んだか知らないけど・・・オシャレなグラスに綺麗なカクテル・・・気が利くじゃない・・・コクコク・・・ぷはぁ~~ヒック。」

「おいおい、アヤカ・・・そんな状態で飲んだら―――――――」

「ムクロ君・・・私には・・・無いのかな?」

「レイレイ、どうするのじゃ?

主殿がアヤカを贔屓ひいきしているみたいになっているのじゃ・・・・」

これから試合と言うユリハにお酒を勧める訳にも行かず・・・ユリハなら分かってくれると思っていたのが裏目に出てしまい、レイはさらに考え・・・・


「仕方ありません。

ご主人様とユリハ2人に解決させましょう。

この件は私達には荷が重すぎたのです。

そうです、私たちも料理を楽しみましょう。」

「レイレイ・・・お主・・・投げおったな―――――

じゃが・・・あそこまでぐだぐだならば仕方ないのじゃ・・・

ウン、今回は主殿には悪いが・・・アタイ達はアタイ達で楽しむとするのじゃ。」

「――――――モシャモシャモシャモシャ!!!

―――――――あの~コレもう一つ追加~おかわり♪

――――――モシャモシャ・・・・」

レイは目を閉じ、自分の料理が運ばれるまで目の前の光景を無視する事にして・・・入ろうにも入れず、見ている事しかできないユキシロ達と放置し・・・もくもくとファムは丸焼きを頬張って食べていた。


「んん~~ムクロ・・・このお酒ちょっとつおいんじゃないの??

私、少しふらふらして・・・る―――――」

「おいおい、アヤカ大丈夫か?

お酒が弱いのに全部飲むから・・・・

それに、ユリハはこれから俺との試合だろ?

だから試合が終わった後にでもだな―――――」

「そうだね、わかった・・・試合後に絶対だからね?

―――――で、その・・・アヤカ大丈夫?」

ユリハが心配してアヤカに声をかけるが・・・たった一杯のお酒でアヤカは寝てしまい、テーブルにぺたりと顔を押しあてながらスヤスヤと寝息をかいていた。

そして、やっと調理場から俺達の料理が運ばれる中・・・・


「は~い、おかわりお待ち♪」

「わ~美味しそう~それじゃ、いっただきまぁ~す♪!!!」

「主殿、アレをファムは2皿目を食べているのじゃ・・・

一体あのファムの細い体のどこに吸収されているのじゃ?」

「それはもちろん・・・アレでしょう――――――」

「ムクロ君!!!レイちゃんも!!!ファムの・・・その・・・胸ばかりを見るの禁止!!!

――――――まったくもぅ・・・・ムクロ君ってば大きい方が好みなのかな・・・・」

「わ、悪かった・・・ついレイの目線を辿ったら・・・そこにはファムのアレがあってだな―――――

って、ユリハ自分の胸に手を当ててどうしたんだ?

――――――苦しいのか?」

俺がユリハに尋ねると、ユリハ以外にユキシロやレイまでが一斉にため息をつき・・・食事に夢中で何の話をしていたのかさっぱりなファムがきょろきょろ俺達を見渡し、何の話をしていたのかユリハに聞くと・・・ユリハは何でもないと言って料理を食べ始めた。


「この魚のムニエル・・・大変美味です。

焼き加減と言い味付けも中々・・・と言うわけで、ご主人様・・・あ~ん。」

「おい、レイ・・・酒場でそこまでしなくても大丈夫だ・・・・」

「主殿~こういう珍しいメイドとのイベント?は男のロマンなのじゃろ?

だったらつべこべ言わずに食べるがいいのじゃ!!!

そしたら、お次はアタイがあ~んしてあげるのじゃ♪」

「そ、それなら私も・・・してあげるよ!!!」

「でもユリハの料理って・・・スープだよね?

その使スプーンでムクロにあ~んさせちゃうの?」

ファムの強烈な指摘に油断を許さないユリハの行動にレイ達が作戦を練り直し始め・・・・


「ご主人様、顔に食べカスが・・・・パクッ・・・

――――――大変、結構なお手前で・・・・」

「なッ!?

レイレイ・・・その表現はあまりよろしくないのじゃ・・・・

と、言うより食べカスの横取りなのじゃ~~~」

「はむはむはむはむ・・・・アヤカの料理私が代りに食べちゃうね~~

―――――――もきゅもきゅもきゅ・・・・」

「お前たち少し落ち着いてだな・・・・・」

「あはは・・・ごめんなさい。

――――――つい楽しくなっちゃって・・・・」

この酒場はオープンな作りをしていて団体用のように個人部屋が無く、そのぶんワイワイと騒げる空間となってなっていたのだが・・・コロシアム内で俺の評判は女たらしやハーレム男などある意味不名誉な通り名になりつつあり、少しでも変な通り名が付かないようにする為にも静かに食べ終えたかったのだが・・・・


「おい、見て見ろよ・・・アレ・・・ファイナルバトルに出るムクロとユリハじゃねぇか??」

「こんな所でイチャイチャしやがって・・・・見せつけてんのかチクショー」

「だが、実際あの二人が戦ったらどっちが勝つんだろうな?」

「そりゃ、ユリハじゃないのか?

街じゃ白百合の剣士とか言う通り名で通ってる腕利きの剣士だとか。」

「それに、ムクロとかいう男は最近出てきたポッと出の初心者らしいし・・・

ここまで戦えたのはレアなアイテムか何かを持ってるからだろ?」

「言えてるぜ、ここはそんなに甘くはないからなァ!!!!」

「そのムクロのどこに魅かれてあの女性陣はムクロの周りに集まってるのやら・・・・・」

魅了チャーム系のスキル特化だったりしてなぁ~~アッハッハッハッハ!!!」

奥のテーブルに陣取って数名の男性プレイヤー達が俺の悪口を言いたい放題言っていると・・・


「主殿、そろそろ限界なのじゃが・・・消して来ても構わんかの?」

「いえ、それには及びません・・・あのゴミ達は消すよりも勝ちの無いモノでございます。」

「あんなの聞いてたらせっかくのご飯がまずくなっちゃうよ・・・

ねぇねぇ私にやらせてよ・・・消し炭も残らないようにするからぁ~」

「おい、お前たち・・・もう少し冷静にだな・・・俺の事はどう言われてもいいから・・・気にする――――――」

俺は今にも暴れ出しそうなユキシロやレイ達を落ち着かせている間にユリハは数人の男達のいるテーブル前に立っていた―――――――


―――――――――――22時35分・・・酒場

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