第112話 ユリハの怒り

―――――――――――22時30分・・・ギルド内装甲落下地点


俺たちはクーリアの助けもあって何とか剛腕装甲から抜け出すことができたのだが、レイが何故か少しだけ残念と言わんばかりな顔をしていた。


「よし、バルトルの件はあとで話すとして・・・これから俺たちは別の場所で戦ってるユリハ達を助けに行くんだが・・・・って!?」

「ご主人様、何かが飛んできます・・・アレは・・・ユリハですね・・・・」

「って・・・きゃあッ・・・・んん、えっ?

―――――だ、大丈夫ムクロ君!?」

「ムクロッち、ナイスキャッチと言いたいところだけど・・・ユリハのお尻に顔が潰されちゃってるね・・・・」

「ゴアアアアアアアアアア!!!」

「って、そんな下らねぇコトを解説する暇があったらこっちにバフをかけてくれよ!病み上がりの人獣さんよ!!!」

「そうじゃそうじゃ!!!アタイも主殿とスリスリしたいのじゃ!!!

それを我慢しているというのに・・・ユリハ!!!早くこっちにきて一緒に戦うのじゃ!!!」

投げ飛ばされたのかユリハがちょうど俺の視界内に移り、俺は受け止めようとしたのだが・・・少しタイミングが悪く俺はユリハの下敷きになり潰されていた・・・

そして、デロンはバルトルがいなくなったことでスキルが解除されるわけでもなく逆に暴走の状態にあった――――――


「ゴアアアアアアアアアアア!!!」

「危うくユリハにやられるところだった・・・・

そんなこと言ってる余裕はないか、早くアレを何とかしないとな――――」

「わ、ワザとじゃないんだからね!!!」

「ハイハイ、2人の仲の良さは良くわかったからさっさとやっちゃうよ!!」

「クーリア、どうしたのじゃ?

アタイから見るとクーリアが怒っているように見えるのじゃ・・・・」

「そんなことはどうでもいいから早く手伝ってくれ!!!」

「だ、そうですご主人様・・・見たところデロンとスルトの戦況は暴れているデロンが有利に見えますが、スルトの方が冷静な分多少有利と見えます。」

デロンは手あたり次第にプレイヤーを攻撃する暴走状態にあり、一番近くにいたスルトが標的となり狙われ続けていた。

デロンの攻撃は当たれば致命傷の大味な攻撃で、威力の分だけ行動アクションが遅くスルトは難なく攻撃を避けていた。


「だから、見てないで援護してくれよ!!!

こっちも連戦で疲れてるんだ!少しくらい休憩させろ!!!」

「わかったわかったから・・・wアップ&ブレイク!!!」

「アタイも援護に行ってくるのじゃ!!!」

「ムクロ君、私たちも行こう!!」

「そうだな、未知の部分が多いが・・・ダメージを喰らうってことはって事だからな・・・よし、行くか!!!」

「ご主人様が向かわれるのでしたら私も・・・・」

レイが一緒に向かおうとしたが、クーリアに対してデロンが向かった場合の防衛役としてレイをクーリアの保護を頼むと、二つ返事で返答し・・・クーリアの隣で待機すると、俺とユリハはクイックシフトを使いユキシロを追い抜きデロンに切り込んだ――――――


「ゼァッ!!!!」

「はぁッ!!!!」

「やっと援護に来てくれたのか・・・やれやれまったく―――――」

「スルト、お待たせなのじゃッ!!!ふんッ!!!」

「ゴアアアア・・・・」

スルトと戦い俺たちが見えていない隙を狙って、攻撃を叩き込むと・・・デロンは態勢を保てず横に倒れると身動きをしなくなっていた。


「大丈夫かスルト?

息が上がってるが・・・・」

「お前たちが遅いからその分働いてたんだよ!!!

息の一つくらい乱れるっての。」

「でも、何とか動きは止めれたのかな?」

「そうじゃのぉ・・・倒れてからコヤツ、ピクリともしなくなったのじゃ・・・ホレホレ。」

「ユキシロ止めなよ!!もしも、動き出したらどうするの!?」

ユキシロが倒れたデロンの体を突くと、デロンは低い唸り声をあげながら最後の力を振り絞るかのように立ち上がった――――――


「ゴ・・・ア・・アアアア・・・」

「何て言うやつだ・・・ここまでタフだとある意味ボスよりも手ごわいな。」

「だが、デロンは虫の息だ・・・俺たちで終わりにしてやろう。」

「うん!!」

「本当の最後の戦いなのじゃ!!!」

デロンが立ち上がったのを見ると、クーリアはすかさずにバフを全員にかけてこちらの様子を見守っていた。


「ゴアアアア・・・・・」

「悪いが、これで終わりだッ!!!」

「ハァッ!!!」

「ふんッはッ!!!」

「でいやッ!!!!」

全員の重い一撃がデロンにヒットすると、デロンの体から黒いモノが消滅し・・・デロンの中身が倒れ、そのまま安らかな顔をして光の柱となって消えていった。

その様子を遠くで確認したクーリアとレイも合流してきた。


「よし、スルト・・・これで任務は完了か?」

「そうだな、解散まではできなかったけど・・・バルトルがああなったんだ、これで奴らも変な真似はしないだろう・・・だが、あの空を飛んでた天使アレは何なんだ?新しいモブか何かか?」

「ムクロ君、ここまでネタバレしてるのなら話すしかないよ・・・

バルトルと使との関係があったのも事実だし、こんな状況になったのも天使の仕組んだことだって考えられるし・・・・」

俺はみんなとアイコンタクトで確認を取ると、満場一致でスルトに今回の出来事の裏で手引きをしていたモノが誰なのかを話すと・・・・


「お前たち・・・あんな辺境のダンジョンに潜ってたのか・・・・

そりゃ強いわけだ、だけど・・・まさか自己を持ったアバターが攻めてくるっていう特定条件のイベントにしては物騒な話だな。

バルトルの件でもそうだが、計画が出来すぎてる気がする。」

「そうだな、俺もそのことについて考えていたんだ。

ゲームの中のAIにしては言葉巧みにプレイヤーを操る思考を持つ点・・・状況判断能力の高さ、そして・・・あの謎のアイテム・・・これらすべてが誰かの手によって仕組まれた計画とするのであれば・・・一体何を企んでいるのかだが。」

「考えれば考えるだけ不思議な事ばかりじゃな―――――」

「そだね・・・私たちの想像も及ばないことが起ころうとしているのかもね。

巨大な魔獣の召喚だったり・・・世界を滅ぼす~なんて・・・ないよね?」

「でも、外部からの介入があったこともあるし・・・第二第三と現れる可能性も捨てられないのも事実だから・・・難しい話になってきてるね。」

「そうですね・・・ですが、ここでどうこう考えても仕方ありません。

今回の件は終わったことですし、ひとまずホームに帰還し・・・それからこの先どうするかを話し合いで決めるのはどうでしょうか?」

レイの提案に一同が一斉に首を揃えて頷くとホームへの帰還のため、転送魔石を使用し移動を開始した―――――――


「ムクロ君どうかしたの?ずっと考えっぱなしだよ?」

「いや、大したことじゃないんだ・・・ただ天使たちの行動が早すぎるような気がしてな・・・俺たちに見つかることを考えるのであればあっちの世界で準備をすればよかったんだ・・・だが、今回のアイツはを持って帰らなければいけないようにして帰っていった・・・それが何を意味しているのかそのうち分かるのだろうが・・・考えられるうちに考えておかないとな・・・って・・ユリハ!?

どうしてそんなに怒った顔をしてるんだ?」

俺が長々と話し・・・さっとユリハを見ると、すごい怒った顔をして俺を見ていた。


「でた、ユキシロ、レイ・・・また夫婦喧嘩が始まるよ~」

「どうかしたのか?って・・・・ユリハすごい怒ってるように見えるけど何かあったのか?」

「シッ・・・お静かに・・・今回のユリハは見ものですよ。」

「アタイも見るのじゃ~」

皆が何も言わずこちらを見ている中・・・ユリハのお怒り状態で口を開くと・・・・


「ムクロ君・・・久々に・・・アレやろっか?」

「どうしたユリ・・・ハ――――――――」

俺がユリハの名前を呼びきる前にユリハはカーソルをカチカチと操作し、俺の目の前にPVPの正体が送られ・・・その相手はユリハだった。


「ユリハ・・・冗談なら・・もっと違う―――――」

「冗談に・・・・見える?」

「始まるよ!史上最強の喧嘩だよ!!」

「わわ~おっかないのじゃ~

2人ともけがはしないで欲しいのじゃ~」

「それは不可能でしょう・・・何せ相手はユリハで、こちらはご主人様ですから。多少は生傷の付け合う戦いになるでしょう・・・・

ですが、その勝敗の結果ではなく直接ユリハは自らの言葉を武器としてご主人様に届けようとしているのでしょう―――――」

「ユリハはユリハで妙におっかないな・・・・

でも、一緒に戦ってたからわかるけど・・・ユリハも相当な腕だね。

判断能力とか繊細な武器捌ぶきさばきとかどれを見てもムクロに引けを取らない・・・けど、あのムクロは異様すぎる強さだ・・・武器ナシのハンデがあっても怖い相手だよ。」

皆がどうこう言う間にあと少しでホームに到着するというところで急遽、戦闘の行いやすい公園へ移動し・・・ユリハとのPVPが始まろうとしていた―――――――


――――――――――22時56分・・・ホーム近くの多目的公園

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