第113話 ハチャメチャPVP
――――――――――22時56分・・・ホーム近くの多目的公園
今回行うPVPの勝利条件は体力バーが0になるかどちらかがギブアップか武器等の破壊で決着がつくシステムで行われる。
言い出したユリハはやる気満々で、武器を構えて開始の合図を待つばかりの様子であった。
「ご主人様、頑張ってください!!
相手はユリハだと思って油断はなされないように!!」
「いけ~ユリハ!!!ムクロッちをボッコボコにしちゃえ!!
たまにはこっちも強いってことを見せつけちゃえ!!!」
「どっちを応援するか迷うのじゃ・・・・
主殿もユリハもどっちにも勝ってほしいのじゃが・・・・むむぅ。」
「それならもう両方応援すればいいんじゃないのか?
どっちも好きなのなら無理に片方を選ぶ事もないだろ?」
スルトの助言でユキシロは俺たち両方に応援を送ると、俺はそっとPVPの承認ボタンを押すと・・・PVP開始のアナウンスが鳴り響いた・・・・
―――――――3,2,1・・・PVPスタート!!!
「ハァッ!!!!!!」
「くッ・・・ユリハの精度が上がってる!?
面白い――――――」
俺はユリハの武器を切り返し、横に一閃すると・・・ユリハは見事に攻撃を防ぎ次のモーションに変わっていた。
「ていやッ!!!」
「くッ・・・なかなかやるようになったな!!ハァッ!!!」
「オシイ、あと少しでユリハの攻撃が入っていたのに――――――」
「そうかぁ?ムクロがまだ手加減してるように見えるんだが・・・私だけか?」
「スルトの言う通りでございます。
ご主人様はまだ全開でも半分も力を出していません。」
ユリハの攻撃は最初に出会った頃より断然精度が増しており、弱点部分の攻撃も悪くはないのだが・・・・・
「どうして・・・全然当たらない―――――」
「助言をするとだな・・・ユリハの攻撃が当たらないのは精度が良すぎるから当たらないんだ。」
「な、たったそれだけで・・・あそこまで感覚だけで避けれちゃうの!?」
「クーリアにわかりやすく説明いたしますと、野球というゲームにストレートボールというものがあります・・・アレは速さや威力はありますが見切りやすい球です、ですがカーブやその他の変化球はどのくらい、どのように飛んでくるかがわからない点で撃つのが難しい・・・言わばユリハはストレートボールの状態・・・
つまり、ユリハがどれだけ精度をよくしても綺麗すぎる剣の軌道はご主人様には届かないという事――――――」
「でもなレイ、そんなことを聞かされたくらいで勝負を投げるようなヤツじゃないぜ?あの目をしたプレイヤーは・・・・」
「うむうむ。」
スルトがにやりとユリハを見て笑うと、ユリハに欠けていた何かを掴んだのか今までに見たことない構えをユリハが見せていた。
「なんだ・・・あの見たことない構えは――――――」
「――――――
ユリハの一呼吸、その一瞬の間に俺は肩を貫かれていた――――――
「ぐッ・・・早いッ!?」
「はッ!!!」
「攻撃のモーションが変わった!!!
ユリハのあんな動きは今まで見たことない!!
これならひょっとして・・・・・」
「ご主人様が押され始めましたか・・・
そろそろですか―――――」
「あぁ、ムクロも少しギアを上げるんじゃないか?
ここからが見どころだな!!」
ユリハが勢いよく俺を真っ二つにする勢いで振りかぶったのだが・・・・・
「ぐッ・・・・片手で・・・」
「そろそろ、俺も力を出すかなッ!!!ゼアッ!!!!!!!!!」
俺はユリハの剣を弾きながら力を少し込めて一閃すると・・・奥に立っていた木々が横にバッサリと切られている状態であった―――――
「なッ!?・・・・こんなめちゃくちゃな攻撃が・・・・
一閃の余波で木々が・・・ユリハは!?」
「ぐはッ・・・くッ・・・やっぱりムクロ君・・・すごい破壊力・・・でも、まだ終わってないよ!!!」
「ユリハは俄然やる気だな!!そう来なくっちゃな!!!」
「はぁ・・・ご主人様、程々にしませんとこの辺りが一面何もなくなってしまいますよ?
お気を付けくださいませ―――――」
俺はレイの一言で冷静になると・・・奥の木々をバッサリと切り裂いていることに気が付くと、マズイという顔をしていると――――――
「やっと、本気のムクロ君と戦える!!!
こんなにワクワクした気持ちは・・・あの頃に戻ったようだよ!!!」
「そうだな、初めて出会い・・・戦ったあの頃のようだな・・・・
だが、あの頃よりもユリハは強く美人に見える―――――」
「まぁ~たムクロッちの悪い癖が始まったよ・・・・こんな誤解する言い回ししちゃだめだよ・・・ホラ、ユリハが止まって顔真っ赤にしちゃった。」
「これもご主人様の策・・・ではなさそうですね・・・・」
「主殿の策・・・はて?」
「おいおい、早く戦えよ~ぶ~ぶ~~~」
勢いよく駆け出したユリハは俺の発言を聞くと、とぼとぼと歩き出し・・・顔を真っ赤にして剣を振り回していた。
「どうして、いつもいつもいい所でそうやって恥ずかしいことをムクロ君は平気で言うのよ!!!そんなこと言われたら、剣が振れなくなっちゃう・・・・」
「俺、何か気に障るようなこと言った・・・・か?」
「これだよ・・・・ムクロッちってばいつもアレだよねぇ~
いつも相手にだけその気にさせて・・・・」
「そうですね、ご主人様あるあるですね。」
「お前ら・・・マジで相当だよな・・・・」
「いつも通りなのじゃ!!!」
スルトが少し引いたところで・・・ユリハはハァ~っとため息交じりに息を整え顔を上げると、死んだ魚のような目で鋭い攻撃を仕掛けてきた―――――
「・・・・・・・・・・」
「くッ・・・目が変になってる相手の攻撃がこれ程までに見切りにくいのか・・・・ためになるが、ユリハ・・・俺が悪かったからその目を止めてくれないか?」
「今度はムクロッち、謝り作戦ですなぁ~レイさんこれはどうでしょうか?」
「そうですね・・・これはイケません、ユリハの乙女心をまるで分っていないご主人様・・・でも、その不器用なところも私は好きですが―――――」
「主殿はああいうものじゃないのかの?」
「・・・・・あぁ・・・戦いか始まった!!!(棒読み)」
もはやPVPそっちのけで何か変な方向に流れつつもユリハとの戦闘は長引き・・・・
「はぁはぁ・・・何でもかんでも謝れば済むと思ったらムクロ君・・・大間違いだよ!!!」
「だ、だって・・・何で怒られてるかわからないんだ・・・謝りようがないだろ?だったらどうして俺がユリハを怒らせたのか教えてくれよ・・・・
俺は話すのに慣れてないんだ・・・その辺の事はユリハは知ってるだろ?」
「おぉっと・・・ムクロッち選手ユリハに同情を狙ってきていますがどう思いますかレイさん?」
「そうですね、これは有効な手段でありますが諸刃の剣でしょう・・・あちらを見てください・・・ユリハが今にも剣を投げそうなフォームです―――――」
「ユリハの剣の構えが不自然なのじゃ!!!」
「イヤイヤ、あんなやり投げみたいな持ち方ふつうはしないからな!?」
スルトが突っ込み役になっていることもスルーしながら、ユリハは自身の持っている剣を渾身の力を込めてヒュンッと俺の方へ投げ飛ばすと・・・俺は剣の軌道を目で追うと、ユリハが俺に抱き着いてきていた。
「そんなんだから、ムクロ君は・・・・・もういいよ、バ~カ――――――」
「ごめん・・・・ユリハ。」
「ユリハ!!!それはダメ!!タッチは反則だよ!!!レッドカードレッドカード!!!」
「あれはいけません、非常にいけません・・・私の何か危険を告げる信号が最終警告を出すレベルでいけません。」
「主殿・・・アタイもハグしたいのじゃ~~~~」
「――――――もぉPVPでも何でもないな・・・・で、この場合勝敗はどうなるんだ?」
スルトが疑問に問いかけると、俺は武器を投げると・・・アナウンスが互いの武器がすぐに手元に戻らなかったため、PVPはドローという結果で終わった。
「で、ユリハはいつまでそうしているつもりかなぁ??ん?」
「あはは・・・でも、ムクロ君・・・ちゃんと考え事していてもみんなに話さないと駄目だよ?私にも皆にも・・・ね。」
「ユリハの怒りも元に戻ったことですし・・・ホームに戻りましょう。」
やはり最後はレイがまとめ・・・俺たちはゆっくり歩きながらホームへと戻っていった。
――――――――――23時20分・・・プライベートホーム
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