第111話 天使再び
――――――――――22時14分・・・バルトル戦・・・
バルトルの使用したスペルはモブにしか使えないはずのスペルで、高い魔力を持つカースドリッチーは大抵のプレイヤーに対してデバフや状態異常を与えられるモブで倒すまで面倒なモブの一種であった――――
「――――――ヴェノム!!!!」
「ぐ・・・くはッ・・・・・くッ・・・一体何を・・・・」
レイはバルトルから毒付与のスペルを喰らってしまい体力が徐々に減っている状態に陥っていた・・・・
「あぐ・・・こんな所で―――――」
「これはいい・・・天使でも状態異常になるとは・・・・
さて、お前たちとの戦いもここで終わりにしよう―――――
全ては大いなる聖誕のために―――――」
「っと、悪いんだが・・・ここからは選手交代だ!!!」
やっとのことで俺はクーリアをおんぶしながらレイの所までたどり着くと、レイのいる場所にクーリアを下すと・・・レイの解毒を頼み、俺はバルトルの方へ歩いて行った――――――
「ほぅ・・・アレの一撃を魔術師の娘は耐えたのか、これは興味深い事例だな。」
「そうでもないさ、お前のアレがそれでもなかったんだろ?
それよりも・・・ウチのメイド様をよくもあんなにボロボロしてくれたな―――――」
「ご主人様・・・・くッ――――――」
「レイ、動いちゃだめだよ・・・・私もボロボロだけどレイもボロボロなんだから。」
レイは毒によりまともに動くことができず、それは剛腕装甲も同じで・・・レイの側でぐったりしていた――――
そして、クーリアが解毒を開始すると・・・バルトルとの戦闘が始まった――――
「――――――コズミック!!!・・・ネガサイクロン!!!」
「・・・・・・・・・・」
バルトルはスペルをガンガン上空から俺に向けて飛ばし、それを俺は加速しながらクーリア達を巻き込まないように離れながら回避していると・・・・
「お前はその程度か・・・避けることしかできない弱者か?」
「・・・・・・・・・・」
「ムクロッちどうしちゃったの?」
「きっと、ご主人様は・・・私たちがこの状態ではまともに避けることができないことを考え、自分に攻撃を集中させているのでしょう・・・・」
避け続けている俺に対してバルトルは嫌気がさしたのかレイとクーリアに向けて攻撃を飛ばすと――――――
「きゃッ・・・・」
「くッ・・・・」
「――――――お前は、モブになってさらに外道さが増したな・・・・」
「それは誉め言葉か?
逃げ回ってないでかかってきたらどう・・・・・・ぐはッ―――――」
バルトルは堂々と語っていると、自身の肩から鈍い痛みを感じ・・・痛みの
「ぐ・・・キサマ・・・一体何を・・・ググ―――――」
「やっと地上に降りてきたか・・・
投げ術の的にしてはデカすぎて外す方が無理だったぜ。」
「さすが、ご主人様・・・・見事な腕をお持ちで・・・・クーリア、あとどれくらいで治りますか?」
「ムクロッちガンガンやっちゃえ!!!!
あと少しだけかかりそう・・・」
クーリアの回答に苦い顔をして、目の前で起こっている戦いを見守ることしかできない自分に対して嫌気を差しているレイを背後に置きながら、俺と地に落ちてきたバルトルとの戦闘が再び始まろうとしていた――――――
「お前はやはり抜け目ない・・・行動もすべてが未知の領域だ・・・
すれば解は簡単だ・・・全力でお前を消せばいいだけのことッ!!!」
「それはこっちのセリフだ!!!
お前とは背負ってる重さが違うんだよ!!!
だから俺はお前に負けたりはしない!!!ハァァァッ!!!!!」
バルトルは全身から影を飛ばして攻撃をしてきたが、俺はその攻撃を剣で切り倒しながらバルトルに一撃を叩き込んだ―――――
「ぐぐ・・・この体もそろそろ限界か・・・・
感覚が鈍く・・・重く・・・鉛のようだ――――――」
「お前はアイテムに頼りすぎたんだ、外身だけじゃこのグロリアは生きてはいけないからな・・・それと、お前にそのアイテムを渡した奴は誰だ?
お前の言っていた計画とは何なんだ?」
俺の問いに、バルトルが答える前に空から声が聞こえてきた―――――
「いやぁ~見事見事・・・まさかあの薬で変質した彼に勝るとは・・・噂通りの強者だね・・君はァ――――――――」
「レイ・・・あれを見て!!!」
「やはり・・・コレが絡んでいましたか・・・・」
「お前・・・表には顔を出さないんじゃなかったのか?
これでは計画が漏洩してしまうぞ?
お前たちの
「そうか、あの未知のアイテムは・・・・やはりお前たちの仕業か・・・天使!!」
俺は天の輪を背に空を浮遊している天使をみると、天使はバルトルの方へ降り俺たちの方をチラチラ見ながら笑っていた。
「ははは、そんなに怖い顔しなくていいよ~ボクはただこうなることも想定していたけど・・・少し予定より早くなったから早めに対処しておこうと思ってこうやって降りてきたんだよ~
ずっとのんびり見ておきたかったんだけどボクも仕事だからね~
と、言うわけで・・・はいッ!!!」
「ゴハ・・・・・やはり、使えなくなったものを消しに来たか・・・・このクソ天使・・・・ごはッ――――――」
「お前たち、仲間じゃなかったのか?
そうか、使えるものを使ったまでの奴か・・・バルトルの流儀に則ったわけだ・・・」
「あの天使・・・バルトルに攻撃を・・・しかもあの攻撃は致命傷レベル・・・・」
「クーリア、今回の解毒は礼を言っておきます・・・・
私はご主人様の元へ援護へ向かいます。」
レイの解毒が終わるとクーリアは疲れたのかぺたんと座り込み、はぁはぁと息を荒くし・・・息を整えている間にレイは駆け出しこちらに向かってきていた。
「おや、おっかないのが来るうちにボクはこの結晶を回収させて帰らせてもらうね。」
そう言うと天使はバルトルの体内から謎の結晶体を引き抜くと・・・バルトルが消滅し光の柱となって消えて行った・・・・
「そうか、でもな・・・はいそうですかって返すわけないだろッ!!!」
「ご主人様、装甲にお乗りを・・・飛ばしますッ!!!!はぁッ!!!!」
「むッ・・・この距離を片道切符で向かってくるとは・・・・一瞬だけ相手してあげるかな・・・・」
そう言うと、天使の手から光の剣が出現し・・・進路を変え空をUターンして俺の方向へ来ると互いに一撃を叩き込んだ――――――
「ぐッ・・・・浅かったか―――――」
「ッ!?・・・・やはりあなたは素晴らしい・・・ムクロと言いったかな・・・
ボクは君の事を認めなければいけない・・・ボクにこんな大きな傷を付けたのは君が初めてだ・・・褒美にボクの名前を教えてあげよう・・・僕の名は・・ノーツ・・・それじゃ、またね~~~」
俺とは別に空を自由に飛べるノーツという天使は空をヒュンヒュンとツバメのように高速で飛びながらどこかへと消えて行ってしまった。
そして、俺はレイに飛ばしてもらったのはいいものの問題の着地をどうするかを考えておらず、間違いなくこの高さで落ちると即死という事だけはわかっていたのだが・・・・もはやどうしようもなく身を委ねていると――――――
「ご主人様ッ!!!!」
「おふッ――――――」
地上からレイ自身も装甲を使って飛び出し、俺をキャッチしたのだが・・・俺はレイの胸にだかれ息ができなくなっていた・・・
「ぶはッ・・・レイ・・・助けに来てくれたのはいいが・・・これから地上にはどうやって着地するんだ?」
「剛腕装甲は私の腕のようなもの・・・ご主人様と私くらいの衝撃を吸収し着地するくらい簡単なことです。」
レイは地上付近に近づくと剛腕装甲を呼び出し、俺たちを囲うように丸く形を変えると・・・数秒後に地面に着地した―――――
その衝撃は地面を多少ばかり吹き飛ばしていたがなんとか無事に着地できていた。
そして、その装甲が落ちてきた場所に体調が戻ったクーリアが駆け寄ると・・・・
「レイ!ムクロッち!!大丈夫??・・・・んん・・・何やってんの?
2人とも・・・・・私の心配を返してくれる?」
「そんなこと言われてもな・・・というかこの状況から助けてくれないか?
レイと体がからまって動けないんだ・・・」
「ご主人様、そのように動かれては・・・んんッ!?」
レイと俺は剛腕装甲の中で絡み合って身動きの取れない状態になり、その光景がクーリアには2人で遊んでいるようにしか見えない光景でもあった―――――――
―――――――――――22時30分・・・ギルド内装甲落下地点
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