第69話 勝利の打ち上げ:現実②

―――――――――――9時40分・・・・


――――俺は休日の・・・特に日曜日なら普通・・・グロリアをプレイしているかゴロゴロ寝ているかパソコンでネットをうろちょろしているのだが、今日は昨日あった戦争イベントに勝利した記念の打ち上げを開くことになり俺は待ち合わせの為に通学路をとぼとぼと歩いて向かっていると・・・聞き覚えのある声が前から聞こえてきた。


「悠一~~遅いよ~こんなに荷物いっぱいなんだから・・・悠一も1つくらい・・・3つ・・・・4つくらい持ってよ!!!」

「つまり全部持てと言う事か・・・・わかった。」

「耀子ちゃん・・・そんなに無茶させたらダメだよ・・・・悠一君、1つ持つよ。」

「悠一・・・おはようございます、私も1つ持ちます。」

耀子は俺を見つけると手に持ったレジ袋を俺に手渡し満足そうな顔をし、俺の手に4つのレジ袋を持たせるのは酷だと思ったのか・・・由里とコトハが1つずつレジ袋を持って助けてくれた―――――


「由里・・・コトハ・・・2人ともこれじゃ私が悪者みたいじゃない!!

もぉ~わかったよ・・・悠一・・・その、1つ持つから・・・かして!」

「耀子、今日はいつもよりツンツンですね・・・・何かあったのですか?」

「あはは・・・・昨日は耀子ちゃんが一番皆の事を心配してたから・・・・

私達の事を大切に思ってくれて・・・私はすごく嬉しかった。

もちろん、コトハの事も心配してたよ。」

由里からそう聞くとコトハは耀子の背中を見ながらクスクスと笑い、先に先にと前を歩く耀子に近寄り何やら2人で話しをし始めた―――――


「悠一君・・・早くメンテが終わると良いね。

新しいグロリアの世界はバランスや仕様も多少変化してると思うし・・・・

すごく楽しみだなぁ~ね、悠一君?」

「だな、これでまたグロリアの人気順位が1位から落ちなくなったな。

で、このレジ袋の中の材料は・・・一体・・・・」

「その辺はお楽しみにして、その・・・悠一君・・・手、繋がない?」

俺は空いた手を由里に差し出すと、由里はニコッと笑いながらギュッと握り耀子とコトハを追いかけて歩いていると―――――


「悠一~ここから右と左どっちに曲がって・・・・・何してんの2人とも。

その手を話しなさい・・・・・いくら冷静な私でも怒っちゃうよ!?」

「悠一・・・それは見せつけているのですか?

揺るぎない愛を見せつけているのですか!?」

「いや・・・その・・・なぁ?・・・・やましい事なんてしない―――――ごめんなさい・・・」

「あはは・・・で・・・でも・・・こうやって2人に見られると少し恥ずかしいから・・・はい、これ終わりね!

で、悠一君・・・道はどっちかな?」

俺は右の奥に家が見えると言うとコトハと耀子が俺をチラチラ見ながら歩き出し、数分後・・・


「姉さんただいま・・・」

「「「お邪魔します。」」」

「皆いらっしゃい・・・悠一もおかえり。

さぁ上がって上がって。」

姉さんが出迎え、俺達は家に入ると・・・由里、コトハ、姉さんは台所に向かい耀子は俺と台所から少し離れた皆で寛ぐ広間に無言で座っていた―――――


―――――なんだコレ・・・すごい気まずい・・・いつもはもっと喋り掛けてくるのに何でこんなに今日は静かなんだ・・・・・・

俺は気になるが何をどう聞けば逆なでせずに話ができるか考えていると耀子が先に口を開いて話しかけてきた――――


「ねぇ・・・悠一は・・・・その・・・由里と付き合ってるん・・・・だよ・・・ね?」

「あぁ・・・・付き合ってる・・・それがどうかしたのか?」

俺がそう答えると、耀子が俺の横に座り、また少し黙りこんでから何かを決心したのか真面目な顔をしたと思ったら溜息を吐き―――――


「あぁ~今さっきのはなしなし・・・・何も聞かなかったし悠一も何も話していない・・・それでいいよね?」

「耀子がそれでいいのなら・・・・いいけど。

耀子は料理を一緒にしなくていいのか?」

「私は作るより食べる方が好きなの~」

耀子は力が抜けたのか床にぺたんと寝転んでいた。


「耀子は今回のメンテナンスで変わるグロリアがどうなって欲しい?」

「ん~そうだなぁ~私的には、新しいアイテムやジョブにモブに新たなダンジョン・・・

それら全部を楽しみにしていたはずなのに・・・由里や悠一が消えちゃった途端に全部どうでもよくなっちゃったんだよ・・・でも、皆が無事に帰ってくるなら・・・私は皆とまた下らない事をして遊んだり、真面目にクエストしたりしていつもの様にプレイできたらそれだけでいいかな――――――そう言う悠一はどうなの?何か追加されて欲しい事とかあったの?」

耀子がニヤニヤしながら俺が耀子に聞いた事をそのまま返し、こちらを見て何を言うのかと待っていた。


「俺も最初は皆と楽しくプレイできるのならグロリアがどう変わってもいいと思っていたんだ。

だけど、そうだな・・・もし変わるのなら・・・・今度はもっと色々イベントに参加して思い出を作りたいな。」

「あぁ~あ・・・そんな良い顔で言われたら馬鹿にできないじゃん・・・・

そうだね、私もいっぱい思い出作りたいな・・・・・・・(悠一と・・・)」

「―――――何か言ったか?」

「言ってない!!―――――(バカ・・・・)」

耀子がまたツンツンし始めた所で、タイミングが良いのか由里達が料理を運んで欲しいと呼ばれ移動すると・・・・


「えへへ・・・・悠一君・・・その・・・皆で作りすぎちゃったよ・・・」

「私もつい本気になって色々と作ってしまった。」

「涼孤さんも由里さんもすごい料理がお上手で、私も色々と私にできるモノを作ってたらこのように・・・・すごい量。」

「なになに凄いいい匂いだけど・・・・って、うわぉ!?・・・凄い御馳走の山!!

コレ皆の手作りなの!?・・・皆どんだけ手料理スキル高いんだよ・・・・少しくらい私にその能力わけてよ!」

「とりあえず・・・・手分けして運ぶか。」

そう言うと俺たちは手分けして料理が盛られた皿を持ち広間に持って行く事数分――――


「食べる前に凄い疲れたよ~

どんだけ往復させるんだよ・・・・・」

「お腹が空いた方が美味しく感じると言うだろ?

元々美味しいモノがさらに美味しくなるんだ・・・最高じゃないか?」

「涼孤さんってたまにお母さんみたいな事を言いますね。」

「そうだね・・・優しくて何でもできて・・・羨ましいです。」

床に座りながら話す由里たちの発言に少し嬉しかったのかニヤっと姉さんが笑っていた。

そして、皆が座るとお茶やジュースやらを手に取り・・・皆がこちらを向いて掛け声よろしくと言う無茶を吹っかけてきた。


「こう言うのは初めてで・・・・その・・・昨日のイベントお疲れ様。

色々あった、本当に色々あったけど・・・俺達はなんとか勝てた・・・

皆と、グロリアの仲間たちに・・・・乾杯!!!」

「「「乾杯!!」」」

俺のぎこちない演説を由里達はクスクス笑いながら聞き、乾杯をするとテーブルに並べられた料理を各自受け皿にとってパクパク食べていた―――――


「由里~~この唐揚げ美味しいよ~~」

「ありがとう、頑張って皆で作ったからいっぱい食べてね。」

「さぁ~悠一、私の作ったサンドイッチを食べると良い。」

「悠一、私の作ったこのサラダも・・・・食べてね。」

「わかったわかった・・・そんなにいっぱい一度に食べれないからゆっくりな・・・・」

姉さんやコトハにこれもこれもと料理を盛られ、俺の皿だけが凄い事になっていた・・・・

でも、こうやって大勢で食べること自体・・・屋上で食べる昼食以外になく、とても新鮮であった。


「こうやって皆で学校以外で食事するのも悪くないな―――――」

「あぁ・・・そうだな・・・・いつもは私達2人だけだったからな。」

「私でよければいつでも誘って・・・・悠一の家までの道は覚えましたから。」

「そうだよ~誘ってくれたらいつだって駆けつけるよ!」

「私も皆と同じだよ・・・ほら、皆いっぱい食べてよ!

まだまだ沢山あるんだから!」

由里がそう言うと耀子はじゃんじゃん料理を取りパクパクと食べ、それを見たコトハや姉さんも負けてはいられないと料理を取って食べ始めると―――――


――――――――ピロピロピロピピピ~~~


俺だけかと思ったが由里達にもメールが来ており、メールを確認してみると・・・・・


「この度のメンテナンスの終了時刻は19時から日本サーバーが順次解放される事になりましたので本状をお送り致しました。

今回の19時解放に多少の時間誤差が起こりうる事をご了承ください、尚・・・今回は仕様の変化、変更に伴うアバターの再編集が可能となっておりますので新たな装いを試してみるもよし、そのままのアバターで遊んでみるもよし、新しく生まれ変わったグロリアver2.0の世界を堪能して下さいませ―――――――」

―――――と書いており・・・それを読むと耀子がすごいワクワクした顔をして話しかけてきた。


「ねぇ!ねぇねぇねぇ!!!コレヤバいくない!

アバターの再編集とかランキングとか何かしらの限定アイテムだったりするのに~くぅ~~どうしよっかなぁ~~編集しちゃおっかな~悠一は編集するの?」

「俺はそうだな・・・耳や尻尾は特に必要ないかな・・・・尻尾はPVPの時に弱点になりうる可能性があるし。」

「耀子・・・すまない、悠一にはファッションと言うモノが少し抜けていてな・・・・

自分でコーディネートする機会を与えなかった私のせいなのだが・・・ここまでとは思ってもみなかった。」

「あはは・・・・でも悠一君はPVPやクエスト重視だからそう考えちゃうのもわかる気がするよ・・・私も今のアバターはそうだったから・・・・でもキツネ耳とか憧れちゃうなぁ・・・」

「そうでうすね・・・・私はもともとリスの半獣人型アバター・・・悠一に希望があればその動物にアバター編集する事も考えるけど・・・・どう?」

「俺はコトハのアバター好きだけどなぁ・・・・初めてできたフレンドのエリが・・・」

俺がそう言うとコトハは俺から目をそらし・・・逆に他の3名が俺を睨みつけ少し空気がおかしくなっていた・・・・・


「な・・・何か俺・・・変な事を言った・・・・かな?」

「言ったぞ・・・・すぐ誤解させるような言い方をして―――――バカモノ・・・・」

「私にはアバターの評価薄いのに・・・・不公平だよ・・・・」

「私も・・・・キツネ耳を生やせば・・・・・ゴクリ―――――」

「・・・・・・・・・・・・・・」

コトハは無言で料理をぱくぱくと口に放り込でいた。

そして、俺は姉さん達に囲まれ・・・自分達のアバターの魅力あるものだと長々と話を聞かされた―――――――


―――――――――11時34分・・・・・自宅の広間

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