第49話 由里のデートコース:その1

―――――――――――9時28分・・・・商店街


俺は由里と手を握りながら商店街を歩いていると――――


「悠一君・・・コレって、その・・デート・・・だよね―――」

「あぁ・・・そう考えると、少し恥ずかしいな―――」

俺の返事に由里が少し嬉しそうにしながら少し歩くと、商店街のクレープ屋が見えた―――


「わぁ~美味しいそうないい匂いだね~悠一君。」

「由里、もしかして・・・クレープ食べたいのか?」

「えへへ・・・私、甘いものが大好きだから・・・その、一緒に食べない?」

「まぁ・・・俺も甘いものは嫌いじゃないし、食べるか。」

俺がそう言うと由里が俺をぐいぐいと引っ張りクレープ屋で二つクレープを買い、近くのベンチで食べる事にした。


「このイチゴのクレープおいしぃ~」

「本当に由里って甘いものが好きなんだな。

最初に出会った時には全然こういうイメージじゃなかったけど。

こうやってみると、由里って純粋で可愛いよな。」

「ッ!?もぅ~恥ずかしいよ・・・でも、そう言う悠一君も私が想像してたイメージとは違ってたよ・・・今なんかじゃ私になんか勿体ない、すっごく素敵な人だと私は思うよ。」

俺は由里の発言に嬉しさと同時に恥ずかしさを感じ、クレープを頬張りなが食べていると・・・


「ねぇ・・・悠一君・・・その・・・悠一君のクレープ・・・一口食べたいなぁ・・・なんて。」

「同じクレープなんだけどな・・・本当に由里は食いしん坊だな・・・ホラ」

「食いしん坊じゃないよ!――――その・・・悠一君が食べてるクレープだから・・・・」

「ん?何か言ったか?」

「何も言ってないよ!・・・・でも・・・お言葉に甘えて――――パクッ」

由里は俺が差し出したクレープのかじってある部分に思いっきりかじり付き、嬉しそうに頬張っていた――――


「悠一君のクレープもおいしぃ~」

「だから・・・同じクレープなんだけどなぁ・・・・」

俺は由里が食べた部分に噛り付くと、由里がごくりと俺の食べる姿を見ながら自分のクレープを食べ終えると・・・


「さぁ~悠一君!クレープも食べ終えたし・・・違う所にいこっか!」

「俺まだ・・・食べてるんだが――――もしゃもしゃ・・・おわっ!!」

俺がクレープを食べている中、由里に手を引っ張られながら移動した―――――


「この辺は、服屋が多いんだな。」

「うん、私のお気に入りの服屋さんもここにあるんだよ。」

由里に連れられて来た場所は、服屋が立ち並ぶ華やかな商店街だった。


「俺が知ってる商店街の先にこんな服屋が並ぶ所があったのか。」

「悠一君は服はいつもどこで買ってるの?」

「俺の服?俺の服とかは基本的に姉さんが買ってくるから・・・・」

俺の一言に由里は凍りついたかのように動きが止まった。


「えっと・・・何かマズイ事、言ったか?」

「ううん・・・その、悠一君もそろそろ自分で好きな服を選んで買ってみるのもいいんじゃないかな~って。」

「そうだな・・・俺、イマイチそう言うのに疎いから・・・・」

「安心して!私が服屋に付いていって一緒に見てあげるから!」

と・・・由里が言いながら、近くの男性向けの服屋に入った。


「あ、悠一君・・・こういう服なんてどうかな?」

「ん~少し、派手じゃないか?

俺はもっと、装飾のないシンプルなのが好きだな。」

俺は店内を見渡すとシンプルなデザインの上着が目に止まった。


「由里、アレなんて良いかもしれない―――」

「どれどれ・・・・」

由里が俺の目線の先にある上着を探そうときょろきょろと見渡していると、俺はその上着が気になり上着がかけてある場所に向かった。


「おぉ~良いなコレ・・・・着心地も良い――――」

俺はその上着を試着してみると思っていたより着心地がよく自分の想像したようなシンプルなデザインで愛着がわいていた。

そして、何かを忘れているなと思えば、由里が俺を見つけてやってきた――――


「もぉ悠一君!急に飛び出したらはぐれれちゃうよ・・・って。

コレが悠一君の言ってた上着・・・うんうん、凄く似合ってる!」

「値段が少しするから今の手持ちじゃ買えないけどな・・・あはは―――」

襟から出ている値札のタグは俺の財布の中身をオーバーキルする以上の値段で、次回にでも来た時に買おうと思いハンガーに掛けると―――――


「待って!その上着・・・私が買って、悠一君にプレゼントするよ!!」

「いや、由里・・・無理しなくてもいい。

この上着、高いし・・・それに、また今度来た時に買えばいいから――――」

「ダメ!悠一君は私たちにグロリアで良くしてくれてるんだから・・・私にも・・・彼女らしく何かさせて・・・ね?」

由里はそう言って上着を持ってレジに向かい、カードで支払いを済ませて俺の所に帰ってきた。


「ハイっ!私からのプレゼント・・・ちゃんと・・・受け取って欲しいな。」

「あぁ・・・ありがとう由里、俺も上着コレ・・・大事にするよ。」

俺は由里から袋を受け取り、礼をするとすごく嬉しそうに由里は笑っていた―――――


「で、これからどうする?」

「う~ん・・・私の服屋はまた今度にして、少し早いけどランチにしよっか。」

「由里はやっぱり食いしん坊―――――」

「ん?何か言ったかな?」

「いや、何も言ってない。」

「よし!それじゃ、私がお気に入りのランチでも食べに行こっか。」

由里に対して食いしん坊ネタは地雷と察し封印することを決め・・・・由里が俺の腕に掴まり、アッチと指をさす方向に歩いていった―――――


―――――――11時35分・・・・商店街

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