第48話 朝の呼び出し

―――――――――8時21分・・・・グロリア


俺がプライベートルームに入ると、レイが俺に朝の挨拶をしながらミストが先に奥のソファーで待っていると言うと台所の方へ消えて行った。


「お待たせ―――――」

「おそいッ!!・・・・コホン・・・失礼した。

それで・・・その・・・私へのプレゼントは何なんだ?」

ミストは少ししか待っていなかったはずだが、凄い勢いで俺に迫り両手を出してプレゼントを要求して来た。


「あはは・・・ミストは欲望に忠実だな。」

「いや、私が忠実なのはムクロだけだよ・・・・」

「ご主人様、ミスト・・・お茶が入りました。

今回はカフェオレを作りました―――

ご主人様がカフェオレ好きという情報がとある方から持ち込まれましたのでチャレンジしてみました。」

俺とミストはレイからカップを受け取り、ソファーに腰掛けながらそっとカップに口をつけると・・・・


「美味しい・・・・」

「うむ、このカフェオレはそこらの喫茶店よりも断然美味しい。

いい腕をしているな、レイ。」

「ご主人様方に喜んでいただけて光栄です。

それでは私も失礼ながらいただきます――――」

レイがそう言いながら俺のカップに口をつけて一口飲むと――――


「な・・・なななな・・・ズ・・・ずるいゾッ!」

「あはは・・・・・」

「ご主人様はこういうお味がお好きなのですね、味データ記憶いたしました。

ご主人様のお味も・・・・覚えちゃいました――――」

レイは顔を赤く火照らせがら台所に向かうと、前に座るミストが泣き出しそうな顔でこちらを見ていた。


「ど・・・どうした?」

「むぐぅ~~私も・・・その・・カフェオレが・・・」

「でも、ミストにはそのカフェオレが―――」

「それがいいのッ!!!」

ミストが机をドンドン叩きながら俺のカフェオレがいいと駄々をこねていた。

こんな姿を見たのは初めてで俺は仕方なく俺の持っているカップをミストに手渡すと―――


「え、いいの!?

それじゃ・・・仕方なく・・・頂きまぁ~す!!!」

「それじゃ、俺は新しくレイに淹れてもらうとするかな――――」

俺がレイに新しくカフェオレを淹れてもらおうとすると、コンッとミストが飲んでいた自分のカップを俺の方に差し出した。


「わ、・・・私だけって・・・訳にもいかないから――――

飲んでいいわよ・・・・・」

恥ずかしいのか、視線をそらしてそわそわしていた。


「あ・・・ありがとう・・・・」

俺はミストの置いたカップに恐る恐る口をつけて飲むと、ミストの顔も赤く火照っていた。


「あと・・・その、何だ・・・プレゼントは何をくれるんだ?」

「あぁ・・・忘れてたよ。

はい、コレ――――」

俺はアイテム欄からアイテムを取り出すとミストの手にポンっと置いた。


「可愛いものじゃないけど・・・その・・・お守りなんだけど・・・効果は―――」

「大丈夫だ、可愛くなくともムクロの気持ちは受け取った。

大事にするよ、ありがとうムクロ。」

ミストはお守りを受け取るとギュッと握りしめ、凛々しい顔をして俺に礼をすると朝から少し肩慣らしをしてくると言いクエスト掲示板に向かった。


―――すごい気合の入った顔だったな・・・・

そんなにお守りが嬉しかったのか、まぁ・・・いいか、そろそろ由里との待ち合わせの時間になるしログアウトして移動するか・・・


俺はミストにもロネッサ対策のアイテムを渡した事でグロリアでやるべき事を終えログアウトすると、由里との待ち合わせの場所に向かった――――


―――――――8時53分・・・・・・とある待ち合わせ場所


「由里と9時に待ち合わせの予定だったが、少し早く付きすぎたか・・・」

俺はブロッサムの時計を見てから、今夜の戦争イベントの情報が気になりルミ子を呼びだした。


「お呼びでしょうか、変態マスター。」

「あぁ・・・今夜から開催される戦争イベントについて少しでも情報に動きがあれば随時連絡して欲しいんだが・・・頼めるか?」

「緊急事態で読んだかと思えば・・・また、そんなことでしたか・・・・

了解しました、情報が入り次第連絡します。

―――はぁ・・・私には、何もくれないのに―――――」

「そう言えばルミ子には何もあげてなかったな・・・ホラ。」

俺はルミ子に四角いピン止めをルミ子のカーソルにドロップして渡すと――――


「フンッ・・・マスターからのプレゼントなら仕方ないから受け取ります。

その・・・ありがとうございます――――」

ルミ子はぶつぶつ礼をすると頭にパチンッとピン止めをつけて喜んでいた。


「マスターの趣味もそこまで悪くなくて良かったです。」

「喜んでもらえてよかった。

それにしても、由里・・・遅いな。」

ブロッサムを見ると9時を回っていた・・・・


―――――すると、遠くから誰かを呼ぶ声が聞こえてきた。


「ごめん、悠一君。

服選びしてたら遅れちゃった・・・・本当にゴメン。」

「由里らしい理由だな・・・・でもその服、由里に似合ってるよ。」

由里の遅れた理由を笑いながら茶化し由里の服装を褒めると―――


「悪い悪い、そんなにぽかぽか叩かないでくれ。」

「でも、遅れたこっちに非があるから何も言えないけど・・・褒めてくれた事は素直に嬉しいかな・・・ありがとう、ほら・・・行こうよ悠一君!」

そう言うと由里は俺の手を握って街へと走り出して行った―――――


――――――――9時15分・・・・商店街:電気店


「由里の俺を呼び出して買いに来たものってコレ?」

「うん、パソコン用のキーボードなんだけど・・・急に反応しなくなっちゃって。

でね・・・パソコン用品は悠一君が詳しいと思って呼んだの、迷惑だった?」

「いや、その逆だ・・・そうやって俺を頼ってくれて、俺は嬉しい。」

パソコン用のアクセサリー売り場で俺と由里は使い勝手の良いメーカーや値段の手頃なメーカーのキーボードを見比べながら探す事8分―――――


「よし、これにするよ!

悠一君のオススメだから安心だし。」

「よし、なら・・・買いに行くか。」

俺がさっさと買いに行こうとすると、由里が俺の上着をぎゅっと掴み――――


「その・・・キーボードこれ買い終わったら・・・少しぶらぶらしない?

それとも、これから用事とかあった?」

「いや、用事はないけど・・・・わかった。

今日のイベント前まで由里に付き合うよ。」

俺がそう答えると由里がグッとガッツポーズを取った様に見えたが、その直後に俺の手を引っ張り会計を済ませると、手を繋ぎながら電気店から出て行った――――――


―――――――――――9時28分・・・・商店街

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る