第50話 由里のデートコース:その2

―――――――11時35分・・・・商店街


由里に連れられ、服屋とは反対側の俺がよく通う方面に由里がお勧めするランチのお店があり、その料理店は雰囲気が雑貨屋のように落ち着いた雰囲気のお店で女性に人気なのだが―――――


「ここが由里の言ってたランチの美味しい料理店?」

「そうだよ、だけどね。

このお店は入らないと料理店だとは思わない外観だけど、中に入るときっと悠一君驚いちゃうかも。」

くすくす笑う由里に言われるがまま、料理店だとは思えない店のドアを開けて中に入ると・・・アンティークとでも言うのだろうか、年代物と感じさせる机やイスが店内に配置されオシャレと言うべき空間であった。


「いらっしゃいませ、お客様は2名でしょうか?」

「はい、そうです。」

由里が受け答えをすると、店員に奥の席に誘導され由里と俺は席に着いた。


「由里、凄くいい雰囲気のお店だな・・・・

この空間は落ち着くと言うか安心するな。」

「悠一君もこの店の良さがわかってもらえて私もなんだか嬉しいよ。

でもこのお店は雰囲気も良いけど、お料理がすごく美味しいんだよ。」

由里はメニュー表を俺に見せながら1つ1つの料理を丁寧に教えてくれた。

その料理の事を詳しく真剣に話す顔はどこか母のような面影があった――――


「ね、悠一君・・・お~い・・・ツンツン―――」

「わ・・・悪い・・・ボーッとしてた。」

俺は由里に頬をツンツンされてようやく気が付くと、由里が俺の表情を見てクスクス笑っていた。


「そんなに笑わなくてもいいだろ・・・・」

「ご、ごめんなさい・・・ふふふ・・・すごく可愛い顔してたから・・・

悠一君もこんな顔するんだって思って――――」

由里がこんなに笑う顔を見るのも俺は初めてで、俺はこの笑顔を見ると悪い気はしなかった。


「えぇっと・・・私のオススメはこのお昼のランチだよ。

私はいつもランチはコレって決めてるけど・・・悠一君は何にする?」

「由里のオススメはハズレがなさそうだから俺もそれにしようかな。」

俺はメニューを見るよりも由里がオススメするランチセットが気になりそれにすると、由里は店員を呼びランチセットを2つ頼んだ。


「さっきの悠一君の顔、本当に可愛かったな~」

「あはは・・・疲れてるのかな・・・・最近遅くまでグロリアしてたりだったからなぁ――――」

俺が独り言のようにそう呟くと由里が俺の手を握ってきた。


「悠一君・・・・あまり何でも1人で抱え込まないでね。

私、少し心配だよ・・・私で良かったら皆に内緒でもいいから私には話して欲しいな―――

だって、私にとって悠一君は大切な彼氏ヒトなんだからね。」

「あぁ・・・わかった・・・心配掛けてごめんな。

でも、最近遅くまでプレイしているのは前にも言った寝付けない事が原因なんだ。」

「あまりにも酷くなったら病院に行こうね・・・私も付いて行くから。」

由里が不安な顔をしながら俺の手を握ってそう言うと、俺は由里の手を握り返しながら一言「ありがとう」と言った―――――


「あと、この戦争たたかいが終わったらまた学校の帰りに料理の練習でもしよっか。」

「あぁ・・・そうだな・・・その為にも、俺たちは必ず勝たないとな!

なにせ、俺たちの生きているもう一つの世界だからな。」

由里は「うん」と力強く答えるとその顔に迷いはなく、ただただ凛々しく俺の目に焼き付いていた。


「お待たせいたしました~御注文のランチセットお2つになります。」

「いい匂~い、悠一君はこのランチ見て感想は?」

「あぁ・・・今まで外食はあまりしてこなかったけど・・・このランチは色々とすごい豪華だな。」

店員が下がると俺と由里は挨拶をしてランチに手をつけ始めた。


「このスープは日によって味が変わるんだって。

こんなに美味しいスープなら毎日でも飲めるよね。」

「そうだな、でも俺は由里や姉さんが作ってくれる料理も好きだな・・・

なんか懐かしい味がするって言うか・・・・安心する味っていうのかな。」

俺は並んでいる料理を美味しいと言いつつ、由里や姉さんの料理も負けてないくらい美味しいと言うと、由里は少しもじもじしながら照れていた。


「その・・・ありがとう・・・でも、私はまだまだ料理の勉強しないと・・・

もっともっと美味しい料理が作れるようになりたいから。」

「その時は是非、俺にも御馳走して欲しいな。」

「も・・・もちろんだよ!だって・・・悠一君の為に練習するんだから――――」

「由里、何か言った?」

「何も言ってないよ・・・フフフ―――」

由里が最後の方に何かをブツブツ言ってたような気がしたのだが・・・由里が料理を食べ始め聞く事が出来ないまま俺も料理に手をつけ始めた―――――


――――――もしゃもしゃ・・・・


「ホラ、悠一君・・・口についてるよ・・・―――――パクッ」

由里は少し食べるか迷いながら俺の口に付いたモノをパクッと食べて笑みを浮かべていた。

そして、ランチを食べ終えると食後の飲み物を飲むと、お会計を済ませ店を出る事にした。


「お昼も食べたし、今度は雑貨屋でもいかない?」

「あぁ・・・俺はどこでも・・・由里の行きたい所ならどこでも行こう。」

由里は笑いながら俺の手を握ると、ブロッサムにルミ子からの連絡が入った――――


「変態マスター、ラブラブデート中申し訳ありませんが・・・・

戦争について情報が追加されましたのでご報告いたします。」

ルミ子の急な発言に由里も真剣な顔になり新たに公開された情報を近くのベンチに座りルミ子から聞くことにした。


「まずは、公開された情報をお伝えいたします。」

―――――本日、午後18時から行われる黄昏戦争トワイライト・ウォーズの内容を公開します。

今回のクエスト完了項目は、他次元から現れる未知のプレイヤー複数名と未知なる世界の女神を止める事。

止める手段はどのような手段でも構いません。

参加推奨レベル:50

未知のプレイヤー人数:4名

未知のモンスター(モブ):???

勝利項目:未知のプレイヤーの全滅、女神の停止。

敗北項目:全プレイヤーの全滅、女神の停止、他。

参加取り消し項目:ログインしてからログアウトしたモノは棄権とみなし参加資格を失うものとする。


「―――――と、戦争イベント公式ページは公開しておりました。

ですが、これらはグロリア側がオブラートに良い部分だけを書いた文に過ぎないかと。

開始直前までに一体何が起こるか私にも女神にもわからない以上、注意をしておいてください。

それでは私はさらに情報を集めてまいります・・・何か動きがあり次第すぐにお伝えします。」

「あぁ・・・ありがとうルミ子・・・」

「ルミ子ちゃんありがとう。」

ルミ子はペコリと頭を下げると次元の穴に消えて行った――――


「さて、事態が少しややこしくなってきたな。」

「そうだね・・・一応、皆にもこの情報を流しておいたけど・・・・

どうなっちゃうのかな――――」

震える由里の手を俺はそっと握り――――


「大丈夫だ由里!俺が俺たちが付いてるだろ。

俺たちは仲間だ、だから今回もうまくやってクリアしよう!」

「うん、そうだね・・・私も昔のような弱い私じゃないから!

悠一君の・・・皆の為に私は全力で戦うよ!」

由里の手が俺の手を強く握り返し、お互いに気合を入れると―――――


「悠一君・・・・その・・・この戦争が終わったら・・・また、デートしてくれる?」

「あぁ・・・もちろんだ。

今日は由里と一緒に色々なモノが見れて楽しかった。

戦争が終わったら必ず・・・またデートしよう・・・・

なんだか恥ずかしいな――――」

俺が照れていると由里が俺に抱きつき、そっとキスをしてきた。


「あはは・・・急にゴメンね・・・でも・・・悠一君がどこかに行っちゃう気がして・・・」

「大丈夫だ、俺はどこにも行きはしない。

いつだって由里の隣にいるよ。」

俺は由里をギュッと抱くと由里も強く俺を抱き返しながら、不安な気持ちを押し殺しながら強く強く抱きしめていた――――


――――――――12時56分・・・商店街:ベンチ

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