第38話 ゲームセンターと秘密

―――――――――17時43分・・・地下ゲームセンター:アンダーゲームス


地下のゲームセンターは薄暗くライトアップされ多数のゲーム機が所狭しと並べられ、プリクラコーナーやブロッサムで遊べるアーケードゲームなどがあった。


「悠一~このもっふもふ人形可愛い~」

「耀子はこういうふわふわした人形が好きなんだな。」

俺たちはクレーンゲームの景品を見ながら移動していたのだが―――――


「悠一!これやろうコレ!」

耀子が目を輝かせながらプリクラの方に指をさしていた。


「こんなのまだあったんだな・・・・アナログ撮影機。」

「悠一はまたそんなことを言う~ホラホラこっちこっち!」

耀子は俺の手を掴みプリクラ撮影機の中に入った。


「これをこうしてこうしてこうこうこうっと・・・・・

はい、悠一ここに立って!」

「え・・・ここか?

これでいいか?」

俺は耀子に指定された場所に立つと、耀子が俺にひょいとくっつくとプリクラのアナウンスがカウントを開始し―――――


―――――――さぁ~ポ~~ズを決めてね~3・・2・・・1・・・カシャッ!


写真を撮り終えプリクラ機から出ると写真がすでに印刷されていた。


「悠一の分はコレね。」

「あぁ・・・ありがとう・・・ははは」

俺は耀子から半分に切り分けたプリクラを受け取ると、耀子との密着ツーショットが写真にバッチリと映っていた。


――――これは姉さんや由里たちには見せない方がいいかもな・・・・


「悠一そろそろ帰ろっか。

晩御飯とグロリアが私たちを待っている~なんてね!」

「そうだな、俺も姉さんを心配させるわけにはいかし・・・帰るか。」

俺たちはゲームセンターを出ると空は紅に染まり、綺麗な夕焼けになっていた。


「こんなに綺麗な夕日を見るのは久々だな~

いつもこの時間辺りはグロリアでクエスト情報を漁ってたりする時間だし。」

「耀子は6時くらいからグロリアに潜ってるのか。

情報ってどこかに交換するコミュニティでもあるのか?」

「そりゃ・・・交換コミュニティもあるけど色々だよ!色々!

女の子の秘密を問いただす事はいけない事だぞ~

そんなに私の秘密が知りたいなら・・・私と秘密を共有できる関係にでもならないと教えられないかぁ~」

耀子の挑発的な問いかけに俺はそれならいいやとそっぽを向くと―――――


「悠一は・・・その・・・私とじゃ・・・秘密の関係に、なったりできない?」

「耀子、冗談ならグロリアで―――――」

俺が最後まで話を言う前に耀子は俺に抱きつき力いっぱい抱きしめていた。


「冗談でこんな事・・・言うわけないじゃん・・・・

空気読めよ・・・・バカ・・・」

耀子は俺の胸に顔を埋めながらボソボソと何かを言っている。


「おい、耀子・・・その・・・悪かったから。

離れてくれないか?

過ぎ去る人に見られて恥ずかしいんだが。」

「それは私も一緒でしょ!

それで・・・どうなの?

ヒミツで特別な・・私の・・・かか・・・彼氏とかに・・・なってくれるの?」

「それは・・・・俺には大切な人がいる・・・耀子ゴメン・・・」

「謝らないでよ~そんな事くらい初めっからわかってたから!

そんな暗い顔しないでよ!(由里の方が少し早かったのかな・・・・)

さぁ~悠一帰ろっか!」

俺の返答を聞くと無理矢理元気に振る舞っているようにも見え、変な事を言わずに俺たちは分かれ道の地点まで適当に雑談をしながら歩いた。


「その、耀子・・・・明日は頑張ろうな。

勝って、皆でグロリアをもっと楽しもう!」

「あったり前だよ!私も全力で頑張っちゃうんだから!それじゃ、バイバイ!」

耀子が大きく手を振りながら家の方向に歩いて行く際、地面に雨でもないのに雫が数滴落ちていた―――――


―――そして俺は耀子の後姿をただ見送る形でしか慰める事が出来なかった。

耀子の姿が見えなくなるまで見送ると俺も自分の家に向かい歩きだした。


―――――――18時43分・・・・帰宅


「姉さんただいま~」

「お帰り悠ちゃん・・・今日は早く帰ってきてお姉ちゃんも安心よ。

その・・・今日は久々に奮発してお外にでも晩御飯を食べに行かない?」

俺は二つ返事で姉さんと外食をすることにし、着替えたらいつもの玄関で待ち合わせということで待っているのだが・・・・・

――――遅い・・・姉さんは一体何をやってるんだ・・・

俺が姉さんを呼びに行こうとした時、玄関が開くと中からは綺麗な私服に着替えた姉さんの姿があった。


「お待たせ、悠ちゃん・・・どうかな、似合ってる?」

「姉さん、綺麗だ・・・・凄く似合ってる!」

俺が姉さんを褒めるとすごくいい笑顔でありがとうと言い返し、俺と姉さんは何が食べたいか話しながら商店街の方に歩いて行くと―――――


「今日はせっかくだしいいモノ食べちゃおっか!」

「あまり無理はしなくていいよ。

ファミレスでもどこでも・・・」

歩く事数分、姉さんの目に止まったイタリアンの飲食店があり姉さんにココに決めたと言われ店の中に入ると良い雰囲気の落ち着いたお店で俺と姉さんは案内された席に座るとお互いにメニュー表を見たのだが・・・・


「姉さん、このボンゴレって・・・何?」

「悠ちゃんボンゴレは貝のパスタよ。

私はこのたらこのスパゲッティにしようかしら。」

「なら、俺はそのボンゴレで・・・・」

姉さんは店員を呼び商品を注文し終わると、俺の方をジーーーーっと見つめている。


「どうしたの姉さん・・・俺の顔に何かついてる?」

「そうねぇ~悠ちゃんを見ていると安心すると言うのか・・・飽きないと言うのか・・・」

姉さんが水の入ったグラスを一口飲むと、また姉さんが話し始めた。


「それで、悠ちゃんは誰を彼女にするの?」

「ぶはっ!?きゅ・・・急に何を言うかと思えば・・・・姉さんあまり俺をいじめないでくれよ。」

「これは真剣な話よ・・・由里さんや耀子さん・・・コトハさんも皆いい子よ。

それは私もよくわかるくらいのいい子・・・でもねその中から大切な1番を選ぶのは悠ちゃんなのよ。」

「その中に姉さんは入っていないんだな。」

「な・・・ななな!悠ちゃん!私は真剣に!!」

「姉さんのその慌てた姿を見るのも久々だな・・・・

家族で一番大切なのは姉さんで、俺の中で大切な彼女の位置は由里だよ・・・・

この前・・・由里に告白されて・・・俺が答えを出したんだ。」

俺は由里との関係を話せる部分を話すと姉さんの持つグラスがかたかたと震えていた。


「私が家族で一番か・・・それはそれで複雑だけど嬉しかな。

悠ちゃんと由里さんがすでにそんな関係だったなんて・・・・

由里さんも・・・・やるわね―――――」

姉さんが落ち着きを取り戻した頃、店員が料理を持ってやってきた。


「それでは、いただきます。」

「いただきます。」

俺と姉さんは挨拶を済ませると並べられた料理を食べ始めた。


「姉さん、このボンゴレ美味しい!ホラ!」

「もしかして、由里さんにこうやって食べさせてあげたりしてないでしょうね?」

「し、してない!」

「怪しいけど、これは頂くわ。

んん~そうね、中々おいしいわね。

なら、私の食べてるこれも味見してみる?」

俺は姉さんが一口にまとめたスパゲッティをパクッと一口で食べると姉さんが妙に笑顔になるのが気になるが、このたらこのスパゲッティも中々に美味であった。


「「ごちそうさま」」


そして俺と姉さんは夕食を食べ終えると、皆でグロリアをする時間までに風呂ややるべき事を済ませるため早足で家に帰った。


―――――――――――19時40分・・・・帰宅

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