第37話 メイド喫茶・・・

――――――――――16時32分・・・喫茶店――――「森妖精の庭」


喫茶店に入るとメイドがおかえりなさいませと定番と言うべき口調で挨拶し、俺たちはペア席に案内された。


「耀子、俺・・・メイド喫茶初めてなんだが・・・」

「そうなんだ、私は週に1回くらいで来てるから安心して。

大丈夫、お値段も他のメイド喫茶と比べて凄くリーズナブルだから。」

耀子がこのメイド喫茶について話しているとメイドさんがメニュー表を持ってやってきた。


「当店のオススメは恋愛ジュースになりまぁ~す!それでは~」

「・・・・・・へ、へぇ~~れ・・れれ・・・恋愛ジュースなんて出てたんだ~何々・・・

好きな人を思いながら飲むと・・・恋が実る―――――」

メイドさんがメニュー表を置きおすすめ商品を伝えると耀子がオススメ商品に穴があくまで細かく目を通していた―――――


俺は普通のメニュー表を見ていたが・・・・メイドのデコが入った可愛らしい名前の商品がいっぱいで、どれにも愛や魔法が入った・・・と書かれていた。


「耀子は決まったか?

俺はこの魔法のコーヒーを頼もうかな。」

「私は・・・このジュース・・・にする。」

耀子はふるふると震えながらオススメ商品を指差していた。

耀子の様子が少しおかしいと感じ俺が代りにメイドさんに注文を伝えた。


「ご・・・ごめんね・・・少しテンションあがっちゃって、エヘヘ。

1人で来る時はこんな感じじゃないんだけどなぁ。」

「へぇ、そうなのか。

俺と一緒じゃ緊張する・・・か?」

「なッ!?そ・・そんなこと・・・ないよ・・・」

耀子が八重歯を出しながら驚き、手を振ってないないと言っていると―――――


「お待たせいたしました~こちらが魔法のコーヒーになりまぁ~す♪

―――キラリラリ~~~ン、さぁメイド魔法の入ったコーヒーをどうぞ!

こちらは、恋愛ジュースになりまァ~す♪」

俺は魔法の入ったコーヒーを受け取ると、メイドが耀子の前に可愛いコースターを置きメイドが耳元でボソボソと何かを伝えるとジュースを置いて戻って行った―――――


「魔法のコーヒー・・・・普通のコーヒーだな。」

「ズズズズーーーーーーーーーーー」

耀子はジュースを凄い勢いで飲み干し、今日買った情報誌を読み始めた。

俺は自分のペースでコーヒーを飲みながら今日買ったストラップの箱の入った袋を取り出した。


「耀子、これ・・・1つやるよ。

姉さんが女の子にプレゼントくらいは何かしてやりなさいって煩く言われてるから。

その・・・いらなかったらアレだけど――――」

「いる!悠一からのプレゼントなんて明日は雪でも降るんじゃない?

な~んちゃってね!どれどれ・・・・・」

俺たちは同時に箱を開封しラバーストラップを取り出すと――――


「こんな事もあるんだな。

同じウサ耳のラバーストラップが出るなんてな。」

「・・・・・・・そう・・・だね・・・何か運命的な何かがあったりね・・・はははは――――」

耀子が驚きながら嬉しそうに笑い、ラバーストラップをギュっと握りしめていた。


「ホラ、悠一!ココ!

このポイントで釣りをすると大物が釣りやすくなる・・・だって!」

「でも、そのポイントはこの情報誌で知ったプレイヤーがそこに集まるわけだろ?

俺は人気のないスポットでのんびり釣りをしながら皆と笑えればそれでいいんだ。」

「もぉ~悠一はすぐそうやって正論を言う~むむぅ~

でも、その・・・のんびり釣りをしながら皆で過ごす時間も・・・大切だよね。

グロリアはもう1つの私たちの生きている世界だもんね。」

耀子はしみじみ思いながら俺にグロリアの情報誌を渡してきた。


「割と細かいところまで情報が書き込まれているな。

弱点、ドロップ報酬に時間限定クエストやレアモンスターの出現予想ポイントまで。」

「でしょでしょ~あながちこの情報誌も悠一のプレイ情報にも劣ってないでしょ。」

耀子が情報誌と俺の情報が肩を並べる程に完璧とと豪語していた事に俺は黙っていられず抜けている情報の個所やより細かいポイントを耀子に細かく教えると呆れるような顔で俺を見ていた―――――


「悠一って本当にグロリア中毒者だよね・・・・」

「そんな冷めた顔で言うのは止めてくれないか?

昔、ソロでやってた時は自分で情報収集することでしか強くなる為のルートがなかったからな。

――――その後遺症と言うか副産物と言うかだけどな。」

「でもそれってエラーモンスターを倒すために・・・エリエントを救うためにだよね・・・・

、強くなろうとした・・・悠一の・・・

その・・・ごめんね・・・少し言いすぎた。」

「いや、耀子の言う事が正しい。

そう・・・・・・だが、それは今を見ると間違った選択だったのかもしれないって、たまに感じる時があるんだ。

皆がいて楽しいと感じたり、1人でいたルームに賑わいが生まれたり。

強いだけの俺には到底、手の届かなかった世界だったのかもしれない。

だけど今は違う、皆がいて大切な人がいて・・・やっと俺が望んだ世界に届いた気がする。」

俺が手を窓の方に伸ばしそっと握ると俺の手を包むように耀子が触れた――――


「私も悠一や皆と一緒にグロリアができて、私が思い描いたグロリアの世界になってるよ!

だから、これからもよろしくだよ!」

「あぁ・・・こちらこそ、よろしく。」

俺と耀子は握手を交わすと、飲み物も飲んだ事でメイドカフェから出て商店街の方に向かいながら歩いて行った。


「ねぇねぇ、悠一はこの地下のゲーセン行った事ある?

私はたま~に行くんだけど、寄って行かない?」

「俺はこのゲーセンは初めてだな。

よし、この際だ寄り道していくか!」

そうこなくっちゃと言いながら耀子が俺の手を掴み、ぐいぐいと地下に降りて行った――――


―――――――――17時43分・・・地下ゲームセンター:アンダーゲームス

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