第7話 18時の嵐・・・

俺とユリハは休憩するため、俺が昔使っていたプライベートルームに向かうことにした―――

ゲームということもあり、部屋がホコリで汚れたりしていなくて助かった・・・

俺はルームBOXにある万能薬を取り出しユリハに使用した。


「ムクロ君ありがとう、ムクロ君が黒騎士だとあのPVPの時に感じてたけど・・・本当に黒騎士だったなんて・・・・。

えぇっと・・・高価な万能薬もらちゃったけど、私リムドあまり持ってない・・・・どうやって払えば―――」

ユリハは俺が黒騎士だった事に驚いていたが、使用した万能薬が高価なモノと悟りユリハはお代は幾らかと聞いて来た。


「いや、お金はいいよ。

キメラとの戦闘の中でユリハの状態を確認していなかった俺のせいだし、ユリハがいなかったら勝てなかったのも事実だ。

あと、黒騎士の話はまたな・・・俺は今、ユリハや皆と楽しんでるんだ。

そんな理由じゃ、駄目か?」

「ムクロ君、ありがとう。

そうだね、今この瞬間が私たちの大切な1ページになっているんだよね。

黒騎士の話はムクロ君が話してくれるまで私、待ってるから――――」

ユリハがそう言うと、俺の手を握り優しく微笑んだ。

俺はユリハに礼を言うとキメラ討伐でのリザルト報酬のアイテムについて話をした。


「ユリハはリザルトで何かレアドロップしたか?

俺は、合成獣の爪やら牙やら大血爪やらだった――――」

俺がアイテムをスクロールしながら見て話していると大血爪のワードにユリハがソワソワし始めた。


「ねぇ・・・ムクロ君は料理スキルとか裁縫スキルって上げてる?

その、交渉条件なんだけど・・・私の料理や裁縫スキルをいつでも貸すから大血爪と交換して欲しいなと。」

なるほど・・・・新しい武器生産にボスモンスターのドロップ素材が必要な訳か・・・

こんな素材、山のようにあるのだが―――――

俺はソロでやってた頃にレベル上げやスキル上げにボスを数百匹を狩る荒技をしていたとは口が裂けても言えず―――――


「そうだな、価値はどうあれユリハが欲しいのならタダでやるんだが、ユリハはタダでは受け取らないだろ?

なら、ユリハの裁縫と料理スキルを貸してもらう代わりに大血爪をやるよ。

つまり、交渉成立だ!」

「少しは私の事がわかってきたのかな・・・少し、嬉しいな。

でも、もぅ交渉成立したんだから返してとかナシだよ?」

ユリハは色々な意味で嬉しそうにしながら喜んで大血爪を受け取り、鍛冶屋に何かを作成依頼を出していた――――


――――――17時55分・・・・


そろそろ耀子がグロリアにインする頃か・・・・

一応、メールでユリハと一緒にプライベートルームにいると場所情報と一緒に送ると――――


―――――――ピロピロリン~~♪


メールポストにメールが届いた音がしてメールマークが点滅していた。

何か嫌な予感がするが、メールの中身を確認すると――――


「すぐ行くから待ってて・・・byクーリア(怒)」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「ムクロ君どうしたの?顔色が悪いよ?」

これから何かが起こるという事を想像すると、俺はアバター越しに顔色が悪くなっていた―――


「だ、大丈夫だ・・・少ししたら騒がしいのが来ると思う・・・18時参加者の・・・・」

18時参加の情報だけでユリハは誰とやり取りしていたか大体察し、少しムッとした表情になっていた。

俺はまた何かマズイ事、言ったかな・・・・

クーリアが何故怒りマーク付きのメールを送りつけてきたのか考えていると――――


――――ピンポーーーン!


部屋の中にインターホンが鳴り響き扉をドンドンドンと強く叩く音も聞こえてきた。

俺は扉を開けたくないと思いながら、ゆっくりと扉を開くと――――


「この・・・・泥棒猫ォ!!!

ムクロっちを横取りしようとしてもそうはさせないよ!

ムクロっちと穴場クエスト行ったりハントライフを独占するのは私なのよ!!」

――――入ってくるなり大声で叫ぶクーリアに対し、お淑やかにお茶をすすりながら微笑むユリハ・・・

クーリアはその優雅さや余裕のあるユリハの仕草にさらにイライラして床をドンドンと踏みつけていた―――――


「クーリア、ユリハも・・・・ちょっと落ち着・・・・・・」

「「落ち着いてるよ!!ムクロ(君)(っち)は黙ってて!!!」」

「――――あ・・・・ハイ・・・・お邪魔しました・・・・」

2人の剣幕に圧倒され、俺は少し2人の様子を見ることにした――――


―――――数分後・・・


「クーリアも一緒にお茶でも飲んでお話ししよ?ね?」

「ムムムゥ~・・・し、仕方ないわね・・・そ、その・・・冷静じゃなかったわ・・・騒いでごめん。

それで、何の話をするの?」

2人とも落ち着いたか・・・・これでやっとクエストか何かに――――――


「クーリアはムクロ君とどうやって知り合ったの?」

「――――私が教室に居たムクロ君にでグロリアやってるなら遊ばない?って誘ったのがきっかけかな~それがどうかしたの?」

ユリハはクーリアからそう聞くと俺に詰め寄りそうなのかと追求し、俺は嫌でもそうですと言うしかなかった――――

その時のユリハの顔は穏やかではなかった――――――


「かの・・・コホン、友達ならこれから私もクーリアとも友達よ、私のフレンド申請送っておくね、これから3人で楽しくクエストできると考えると楽しくなってきたね、ムクロ君!」

ユリハが最初に言いかけた発言が気になったが気にせずに、3人で気兼ねなくクエストやイベントに取り組むことができるのは俺にとっても嬉しい事であった。


「し、仕方ないから・・・ユリハとフレンドになってあげる・・・承認っと。

でも、仲間外れとかナシだからね!絶対に絶対だよ?」

「大丈夫。

ムクロ君も私もそんなヒドイ事しないよ。

私も・・・仲間外れとかされたら悲しいし・・・」

「あぁ、そう言った事はナシだ。

リアルでも知り合ったわけだし、俺のブロッサムの連絡先必要なら送るけど・・・俺のなんて必要ないか。」

俺は笑いながら冗談のつもりで言ったの・・・・だが――――


「「教えて!」」

2人とも目を見開きながら俺に近づき3人でブロッサムの連絡先を交換し合った―――


―――――18時50分・・・・・


「今日はゲリラクエスト無くなったし、これからどうする?」

今日のメインであるゲリラクエストが緊急クエで無くなった事で、これから3人で特にやることがなくなっていた。


「そうだね・・・でも、あのキメラは本当に強かったよね・・・私もBSでやられそうになったし・・・・」

「い~なぁ~私も支援攻撃とか補助魔法のサポート枠で参加したかったなぁ~

2人だけでズルいよ~」

「キメラは中々手強かった。

クーリアは用事で参加時間が18時からだったから仕方ないな。」

俺がラストキルやVIPを取った事をクーリアはSNSで知り、さらに現在いま流行りの噂を話し始めた――――


「その噂って言うのは、今回の緊急クエストの戦闘中に女性プレイヤーを庇って体力が0になったプレイヤーがいて、体力やステが上限以上になって・・・姿が黒騎士になったって言う噂なんだけど。

嘘や作り話なのかそれとも真実なのか気になってる噂なんだよね。」

俺はその噂についてすぐに情報サイトやSNSに目を通すと確かに黒騎士が現れたという情報が流れていた。


「その事についてはリアルでも仲間のクーリアたちだけ教えるが――――」

俺は緊急クエストについて起こった事を全てクーリアに伝えた。


「ふ~ん、で・・・ムクロっちがユリハを守ってドヤ顔して黒騎士になって大暴れしたと?」

ドヤ顔したとは言っていないが・・・・概ね伝わった。

全てを話すことによって少しユリハが俺の過去について知りたがっている事を察し――――

俺はついでにと思い、クリアを目指し現在に至るまでの事を話した。


「ムクロ君・・・話してくれてありがとう。

でも、昔はソロだったかもしれないけど、今は私やクーリアがいるから・・・これからいっぱい楽しい思い出作ろうよ!」

「そうだよ~ムクロっちはフレンドであり仲間なんだから~黒騎士でもなんでもいいけどムクロっちはムクロっちだからそれでいいんじゃないかな?」

気が楽になり俺はこの勢いでこれからの目的を2人に話した――――


「これからの方針を言うとだな・・・目指してる事は―――

皆で笑い合いながらクエストをしたりイベントに参加しながらゲームクリアをする事だ。」

「そうだね、これからゲームクリアを目指してイベントやクエストを皆でいっぱい楽しみたいよね。」

「2人がそう言うなら私もクリアする旅に付き合うよ。

どうせ、野良で情報集めしながらのプレイスタイルだったしね~」

俺たち3人の向かう先はゲームクリアという路線で決まり、その道中で起こるイベントやクエに一つでも多く参加して楽しむ事にした。

そして、これから俺たちの新たなグロリアでの騒がしくも愉快な生活が始まった――――――――――

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