第6話 ゲリラクエスト

校門前に着くと、カバンを持ち誰かを待っている髪の長い女生徒が校門前で待っていた。

その風貌はどこかユリハに似ていて、この女生徒がユリハのプレイヤーだということが直ぐに分かった。

俺がユリハのプレイヤーらしき人物に近づくとその女性が小声で話しかけてきた――――


「えぇっと、君が・・・ムクロ君?」

「あぁ、俺がムクロのプレイヤー、1年の名嶋悠一なじまゆういちだ、よろしく

そう言うアンタがユリハのプレイヤーなのか?」

「アンタって・・・悠一君より私1学年上なんだけどな~

まぁ・・いいよ、そうよ私がユリハのプレイヤーで2年の澄田由里すみだゆり、こちらこそよろしく。」

俺は由里と握手を交わしすと―――――

握手を止めさせるかのように俺と由里の間に耀子が割り込んで入ってきた。


「私は悠一君と同じクラスの燈柿耀子ひがきようこです。

その・・・握手はも~いいですよね、由里先輩?

私は、悠一君と帰る約束してるので、これで!」

耀子は俺と由里の握手を無理矢理とくと俺の手を握り、移動しようとした。

―――――その瞬間、俺の片方の腕を由里が掴み逃がそうとしない。


「耀子ちゃんね、よろしく。

私も偶然にも悠一君と帰る予定なのよね・・・・

ね~悠一君♪」

うぉッ!?・・・・笑っているけどコレは断ればタダでは済まないと全身の細胞がアラートを出していた―――

何か仲良くする方法はないものか・・・・

そう言えば、今日17時からゲリラクエストが来るとか言う噂が掲示板とか攻略サイトで書かれていたな・・・

ここは仲良くなるために誘ってみるか――――


「ひとまず、腕を放してくれないか?

あと、今日17時からゲリラクエスト来るらしいから早く帰って、3人でPT組んでやらないか?」

2人は冷静になると顔を真っ赤にして俺の腕から離れた。

今日のゲリラクエストの時間を聞くと2人は今日の予定をブロッサムで確認していた―――――

――――という俺もブロッサムを起動させクエストの内容や小さな情報をサポート妖精のルミ子に調べるように連絡しておいた。


「悠一君、今日の予定は特にないから私は17時から参加大丈夫だよ。」

「私は、少しやることがあるから、18時から参加になるわ・・・(抜け駆けなんてしたら許さないわよ・・・)」

「なら、17時に由里とPT組んで、18時に耀子と合流だな。

クエストの場所は始まりの都から少し歩いた先にある地下ダンジョンが指定ポイントらしいからそこで集まるか。」

3人は帰り道を歩きながらゲリラクエストの出現モンスターや落ちたら嬉しいドロップアイテムの話をしているうちに家の方向から分かれ道に来ていた―――――


「というわけで、夕方に地下ダンジョンで会おう、それじゃ。」

「うん、わかった。」

「りょ~かい。」

―――――――こうやってゲームの話をしながら誰かと帰るの初めてだな・・・・


いつも1人で帰って、帰ってからも1人でゲームをしていた頃を思い出していた―――――


昔の事を思い出しているといつの間にか家に着き。

すぐさまシャワーを浴び、17時までグロリアに潜り装備品を整えることにした――――


―――――――――――17時・・・・・地下ダンジョン1層:「出入り口ゲート」


まだ、ユリハは来ていないか。

目に映るアバターの中にはユリハの影はなかったが――――


「だ~れだ!」

俺の目の前が急に真っ暗になると同時にいい匂いと聞き覚えのある声が聞こえてきた。

この手の小ささとこの透き通った声は――――


「ユリハだろ?

匂いと、手の大きさと、声で十分わかるぞ。」

俺の推理にユリハが少し恥ずかそうに当りとつぶやいた。

少ないながらも得た情報を分析して出た結果で、簡単な推理であった――――


「さすがね・・・このゲームには匂いや痛みや五感があるけどムクロ君は凄い分析力ね。」

「色々、ソロで実験とか経験してきたからな・・・・嫌でも身につくさ。」

俺はユリハと無事に合流し2人で一旦PTを組んでゲリラクエスト開始のコールを待つことにした―――――


―――――――――ピンポンパンポーーーン、緊急、緊急、緊急、デンジャー、デンジャー


鳴り響いたアナウンスはゲリラクエストのコールではなく緊急クエストのコールであった。

なんだ?運営のミスか?それとも元々緊急だったのか―――――

と、考える暇もなく地下ダンジョンの1層に大きな魔方陣が現れ、その中から巨大なキメラが現れ―――――


「ムクロ君、これって・・・・上級層のボスモンスターだよね・・・・

こんなの、始まりの都のプレイヤーたちで勝てるの――――」

ユリハが最後まで言葉を言う前に俺はユリハの手を握り、走りながら近くのプレイヤーたちにも聞こえるように物陰に避難と叫ぶと同時にキメラの身体が光だし何かしらのスキルが発動した兆しであった―――――


「おいおい、何もないじゃないか・・・何が逃げ・・・・グハッ!!」


―――――――魔の閃光・・・・プレイヤーが一定以上いる場合又は召喚時、登場時に発動する対軍技の一つ。


特殊スキル・・・普通のプレイヤーにはわからない技だぞ・・・・運営は何を考えているんだ。

俺はブツブツ言いながらルミ子に生存しているプレイヤーの人数とキメラの様子を見るように指示した。


「マスターは妖精使いの荒い変態ですね・・・でも、マスターなので仕方ないですから命令に従います―――――

生存者はマスターを含め14名、キメラは召喚された魔方陣から動かず待機状態。」

ルミ子が戻ってくると俺の頭にチョンと座り、俺はその情報から作戦を練る事にした――――


「ねぇ、ムクロ君はどうして、あのキメラの行動がわかったの?

あんなので戦うモンスターじゃないし・・・・

どこかで誰かと一緒に戦った事がある?

それとも・・・まさか、ねぇ・・・」

「そのまさかで、にソロで討伐した事があるんだ。」

俺は笑いながら話すと作戦の内容をルミ子に伝え生存したプレイヤーに伝達してもらった。

この伝達で何人参加してくれるかによって、作戦も変えなくてはならなかった――――

1分後に戻ってきたルミ子に作戦参加者はどれくらいいるか聞いた。


「マスター・・・やはり駆け出しのプレイヤーが多いので参加者は0人でした。

仕方ないです、見たこともないボスモンスターのキメラがいきなり出てきてプレイヤー30名を一瞬で葬ったのを見せつけられたら駆け出しじゃなくても動けなくなります。

それで、マスターはこれからどうなさるのですか?」

やはり、誰も参加しないか・・・・

俺は少し困ったような顔をしながら考えていると―――――


「ムクロ君!私はムクロ君の作戦ならどんな事でも協力するよ!

私は何をすればいい?」

ユリハの目は挫折や絶望の中でも希望を見出す生きた眼で輝いていた――――

こんなキラキラした目のユリハには何を言っても参加するだろうな・・・


「よし、わかった。

2人であのボスモンスター倒してレアドロップ狙うぞ!!」

「うん!で、作戦はどうするの?」

「それはだな・・・・ごにょごにょ・・・・・」

現状しかできない作戦を考えユリハに伝えると・・・・


「本当にするの?少し無茶なような気もするけど・・・でもムクロ君を信じるよ。」

「危ないと思ったらユリハだけでもコレで帰還してくれて構わない。」

俺は即時帰還スクロールを手渡した。

ユリハは何も言わずにスクロールを受け取るとアイテム欄に登録し――――


「ムクロ君、私はこのアイテムを登録したけど絶対に使わないよ!

だって私たちでキメラを倒すんだから!ね、がんばろ!」

ユリハに手を差し伸べられた俺は昔のことを考えながら転生してよかったと思いながらユリハの手を握り気合を入れてキメラの方に向かって走り出した―――――


―――――作戦はこうだ、俺が先に攻撃し、俺にタゲが移った事を確認して横からユリハが技を叩き込み、タゲが移ると今度は俺が技で叩くという・・・連鎖を繰り返して倒すループタゲ作戦!


「さて、やるぞ!!まずは一撃ィィ!!」

俺の一撃を叩き込むと少し体力バーが削れるが4カラ―ゲージの体力バーからすると長い戦いになると予想しながらも技を入れ―――――


「タゲがムクロ君に移った・・・・そこぉ!!!」

タゲが移りキメラの攻撃モーションの際にユリハの強烈なレイピアの一撃をキメラに喰らわす――――


―――――キメラ戦闘から10分・・・・・・


「ハァハァ・・・残り1本半で俺たちの勝ちだ・・・・・

ユリハ、まだやれそうか?」

「ムクロ君、ごめん・・・私・・・少し・・・マズイ・・・かも・・・くッ!」

ユリハのステータスを見ると出血のBS(バッドステータス)が表示されていた――――

バッドステータス:出血・・・・行動するたびに一定量のダメージを受け、特定のアイテムを使用するか宿屋といった施設で回復可能。


―――あと少しで終わりそうだってのに・・・・くそ・・・どうしたら・・・・


「ムクロ君・・・・私、もぉ・・・体が・・・」

ユリハは出血のバッドステータスで大量に体力がなくなり動きが止まった瞬間、キメラがユリハにタゲを移し強烈な攻撃がユリハを襲う瞬間―――――――


「――――くそ・・・仕方ない・・・・・クイックシフトォォ!!」

―――――――グシャッ!!!


ユリハが目をあけると目の前には――――


「――――ムクロ君!?どうして・・・どうして、私の身代わりに・・・・

ムクロ君の体力が・・・・」

ユリハの前にスキルで庇う形で移動し、良く見ると俺の腹を大きく抉られ体力バーがジワジワと消えていく―――

こりゃ・・・致命傷だな・・・回復する隙もない・・・・か・・・・


「ユリハは・・・くっ・・・仲間だから・・・・初めての仲間だったから――――

ユリハが無事でよかった・・・・」

俺は笑いながら話すが、全ての体力がなくなり体が消えてしまう瞬間――――


――――――例のが効力を発揮した。


「ムクロ君!!!!!」

ユリハが俺の名前を叫ぶと、死亡時に出るエフェクトが起こった――――

俺の体が黒い結晶体に包まれ砕け散ると、中から皆が口を揃え伝説の人と言う存在・・・・黒騎士の姿になった。


――――黒騎士の鎧全体は名前の如く全てが漆黒で染め上げられ、鎧以外の装備は一切装備していないがレベルも転生前の完全状態に戻っており体力バーや全体的にステータスが異常な数値をしていた――――


キメラが俺を睨みつけると魔の閃光を発動する構えをとるが俺は後ろにユリハがいることもあり移動せずに、仁王立ちの態勢をとった。


「ムクロ君!逃げて、あの技が・・・・私を置いて逃げて!!」

ユリハが叫ぶとキメラが最初に放った時よりも強い魔の閃光がダンジョン内を照らしだした――――


辺りに強い魔の光が広がり、浴びたものを光とともにかき消す威力があるのだが――――


「・・・・・シャドー・クリエイト――――」

スキルを唱えると、俺の手に影の剣が1本現われ――――


「・・・・・・・シャドーペインブレイク!」

その一撃は、キメラと地面を一閃し、キメラの体力バーを一撃で消し飛ばした、キメラが消滅すると緊急クエストの終了アナウンスが流れ始めた――――


―――――緊急クエスト終了~VIPムクロ&ユリハ~ ラストキラー:ムクロ 

――――なお、報酬は参加者2名に分配されます、次回は皆さんも是非是非参加しましょう。



アナウンスや周りいたプレイヤーが騒ぐ中、俺はすぐに鎧状態の解除ボタンを押しムクロの姿に戻るとユリハに近づいた。


「ユリハ、大丈夫か?

ほら、応急処置だ。」

「あ、ありがとう、ムクロ君がやっぱり・・・人だったんだね・・・・黒き・・」

俺はユリハにシッとジェスチャーしながら耀子にクエストに少しイレギュラーがあったとメールを送り、俺はユリハを連れて静かな場所に向かい体を休めることにした――――――

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