第5話 クロスリンクシステム

―――――――午前7時・・・・


朝の日差しが俺を襲い、ぐったりしながら顔を洗い軽く朝食とり身支度を済ませると、これから通う高校の入学式へ向かった・・・・


―――――長い校長の話や高校生活の説明が終わり、教室に戻ると男子生徒や女子生徒がグロリアの話題で盛り上がっていた。


「ねぇねぇ、昨日の始まりの都であった2連続PVP見た?」

「何ソレ?僕はダンジョン潜ってたからわからないけど、それがどうかしたの?。」

「マジかよ、掲示板でもどこでも話題だぞ!?

相手はLv15キャラ2人でその内の1人はあの白百合の剣士でさ、相手がLv1っていう・・・・・お前ならどっちが勝つと思う?」

「そりゃ普通に考えたらLv15の2名に勝てるわけ・・・・ん?まさか・・・Lv1が勝ったのか?」

「そのまさかだ、ルーキーの名前は確か・・・ムクロ、とか言ってたな――――」

俺は自分の席に着いてグロリアの情報収集をしながら聞こえてくる自分の評価に笑みを浮かべていた。

普通に考えたらLv15にLv1がPVPして勝てるわけがない―――――

そう、なら――――

転生の情報はどこのサイトでも出ていない、クリアした俺の名前が全世界に知れ渡った程度でその先のクリア特典の情報等や女神の情報などはどこにも存在していなかった。


――――――ピロピロピロ~


俺の頭に付けているカチューシャ型の携帯型拡張コンソール「ブロッサム」にグロリア本社からゲームクリア祝いのメールが届いた。


俺は軽く目を通し、特に何も要件が書いているわけでもなく削除ボタンを押した瞬間――――


「ねぇねぇ、キミも・・・えっと・・・たしか、名嶋悠一なじまゆういち君だよね?

私は同じクラスの、燈柿耀子ひがきようこ!気軽に耀子ようこって呼んでね!

でさでさ、悠一ゆういちもグロリアしてるの?

私もグロリアのプレイヤーなんだけど、良かったらクロスリンクで今から少しグロリアアッチでお話しない?」

――――何やら元気なクラスメイトが話しかけてきた・・・・しかもカワイイ。

前のアバターは有名すぎて一緒に遊ぶとか考えもしなかったけど、今なら―――――


「あぁ、いいぜ。

まだ、駆け出しでLv1だけどいいか?」

「いいよいいよ、クエに行くわけでもないし、ただの顔合わせだよ!顔合わせ!

場所はここだと始まりの都のショップエリアになるのかな・・・今なら誰もいないと思うし先にログインして待ってるね~」

そう言って耀子は自分の席に着きクロスリンクしていた。

少し強引だったけど悪い奴じゃなさそうだし、ひとまずクロスリンクするか―――――

俺はグロリアの項目を開きクロスリンクボタンを押した。


―――――――クロスリンクイングロリア

―――――――――俺の目の前にはたれウサ耳を生やした女性アバターがいた。


体力バーや名前があるって事はNPCじゃないな・・・このアバターが耀子か――――

名前には「クーリア」と書いてあり、アバターはショートヘアーに長いたれウサ耳・・・このアバターも長い時間かけて作られたアバターだと一目でわかる作りをしていた。


「やぁ、来たね~って・・・えぇッ!?

あなた・・・・ムクロッ!昨日、大激闘した例のムクロなの!?」

「そうだ、昨日の始まりの都で大暴れしたムクロだ。」

ふむふむと言いながら、クーリアは俺の恰好コスチュームやアバターをじろじろと見始めた―――――


「クーリア何してるんだ?」

「いやぁ~ムクロがどうやってLv差を覆したか気になって・・・装備品や何か特殊なモノがあるのかと気になって・・・えへへ。」

「俺は装備品も武器も武器屋で買った一般のモノだし、違いは外見ではなく中身の勝負だったな。」

「ふむふむ、でもそのようだね・・・危険アラート出ていないということはチートアバターでもなさそうだし、よし私はムクロっちとフレンドになる!!いいよね?」

普通Lv差で勝ったとなると異常な装備品とかチートを疑われても仕方がない。

だが俺はステルス機能等の隠しコマンドを使っていないことからチートや改造の疑いがないと言う事が証明された。

そして――――

―――――美少女の新たなフレンド・・・俺の女性PTがちゃくちゃくと・・・


「変態マスターまた変なこと考えてましたね、何がハーレムPTですか。

編成の偏りはPTプレイでの全滅を意味しますので気をつくてください。」

そう言いながら俺の頭にちょんッとルミ子が頭に座った。

相も変わらず毒舌だな・・・・・


「キャーーーーかわいい!!!何この子!サポ妖精の人型なんて超激レアを持ってる人、初めて見たよ!ムクロっちは一体何者なの?

あと、フレンド申請送っておいたから!」

ルミ子を持ち上げワーワーキャーキャー騒ぎ喜んでいるクーリア。

ユリハと違って元気な子だな・・・・・

俺は色々PT等の事を考えながらフレンドの了承ボタンを押した――――


「わーい、これでムクロっちと私はフレンドだ!これからまた掘り出しクエストとかイベントクエストを遊ぼうね!それじゃログアウトして帰ろっか。」

「そうだな、今日は家に帰ってくつろぎたい。」

俺はログアウトボタンを押そうとした瞬間、ショップエリアの外を見るとそこには白百合の剣士ユリハの影があった――――――

ここは高校の敷地内で、クロスリンクで視認できているということは・・・・ユリハもこの学校の生徒なのか?

俺は少し気になりユリハの後を追うことにした。


―――――――どこだに行ったんだ、見失ったか・・・・でもあの服装はユリハだよな・・・


「もぅ、ムクロ君・・・・どうして私を付け回すの?話しかけてくれればいいのに。」

俺の後ろからユリハの声がしてビクッとしながらユリハの声のする方を向いた。

その姿は、前回のPVPでボロボロになった服を綺麗に整えた格好コスチュームになっていた――――

「その・・・人違いの可能性があってだな・・・その悪かったな、服をボロボロにしちまって。」

「別にいいよ、本気で戦ってたんだし、だから仕方ないよ。

でも、整えたら・・・ほら、前と違って可愛くなったでしょ?」

ユリハがスカートをひらひらさせながらくるっと回った―――


「そうだな、似合ってる。

で、何故こんなところにユリハがいるんだ?ユリハ?」

ユリハに似合っていると言った途端ユリハの動きが止まり、顔が真っ赤になってフリーズしていた。

何かまずい事でも言ったかな・・・


「あ・・・あ、ありがとう・・・スーーーハー

えっと、私がココに居た理由を話すことは・・・その、リアル割れする可能性があるけど・・・

うん、いいよ。

ムクロ君になら特別に教えてあげる。

私、この嵩桐高校かさぎりこうこうの生徒なの――――――」

薄々と感じていたが、まさか同じ高校の生徒だったのか・・・

ゲームは広いのに世間は狭いな――――


「ユリハ・・・・」

「ムクロ君、どうしたの?そんな険しい顔して。

それとも私、変なこと言ったかな?」

「いや・・・俺もその高校の生徒・・・だったり・・・・」

「ッえ!?そうなんだ・・・フフ、すごく奇遇だね。」

ユリハはすごい驚いた顔をしながら空をそっと見据えるように笑みを浮かべながら眺めていた。


「さて、俺もそろそろ家に帰るかな。」

「ねぇ、ムクロ君は今学校に居るの?

良かったら、一緒に帰らない?

プライバシー厳守はゲームの常識だけどダメかな?」

そう、基本的にMMOに限らずゲーム全般でプライバシー厳守は当たり前の事であって。

普通なら拒否をするのだがここまで繋がりがあると無碍にもできないよな――――


「まぁ~いいけど、なら校門前で待ち合わせだな。」

「うん♪わかった、ムクロ君それじゃ校門前で。」

ご機嫌な顔をしてユリハはログアウトして消えていった。

―――――はぁ・・・・いつまで聞いているつもりなんだ?


「クーリア・・・そこに居るんだろ?

ログアウトしたはずじゃ・・・・」

「―――――だって、ログアウトしてもムクロっちはまだインして戻ってきてなかったし・・・・

気になってログインしたら、誰かを追いかけてムクロっちはどこかに行っちゃうし。

見つけたと思ったら白百合の剣士とイチャイチャしてるし・・・」

俺の行動は全部見られていたのか・・・・あと、イチャイチャなんてしてたか?


「クーリア誤解だ、話してた内容は昨日の謝罪とかで――――」

「嘘、だって、今さっき一緒に帰るとか言ってたじゃん」

本当に全部聞いてたか――――あのウサ耳・・・飾りかと思ったらちゃんと機能しているな・・・・

敵に回すと厄介だが仲間だとすごく便利そうだな。

俺がゲームの事を考えながらニヤリとすると、クーリアが近づき長いウサ耳でビシビシ攻撃してきた。

「悪かった悪かったから、ならクーリアも一緒に帰るか?」

「えッ!いいの!?そうならそうと早くいってよぉ~」

扱いやすいのか扱いにくいのかどうなんだ―――――

色々考えながら俺たちはゲームからログアウトし、校門前に移動した―――――――――

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