第3話 白百合の剣士

PVPが開始される直前、俺の構えに周りにいたプレイヤー達はブツブツの噂をするように話し始めた。


「――――――おいおい、あの構えって・・・・」

「――――――あぁ・・・の構えだな。

駆け出しのプレイヤーならあの構えの真似をしたくなるのもわかるが・・・・」

「――――伝説になったあの人の構え・・・・」

所々から伝説やあの人の構えやら飛び交っていた。

「―――――伝説ねぇ・・・響きは悪くない。

だが、たった1日で伝説とは・・・ラスボスを倒すだけで簡単な称号モノだな。」

「あのとか言うプレイヤー・・・あの人の構えを・・・いくら伝説の人の型だからと言って、誰でもできる動きではないのだけれど・・・・」

フードの少女は遠くからどちらが勝つか初めから分かっているような顔をしながら俺の構えに視線が釘付けになっていた。


「―――――あの若いの、可哀相に・・・・レベル差ありすぎだろ・・・・ライザーがLv15、あの初心者がLv1・・・・これじゃ、ただのイジメだな。」

「あぁ・・・ライザーも趣味が悪いよなぁ。」

俺とのレベル差で、皆は俺が勝てない、無理だ、負ける、だとか色々と悲観してるが・・・・

俺は初めから負けるつもりはなく・・・所有スキルを確認した。


「――――上等、スキルも残ってる・・・・余裕だな―――――」

「んじゃまぁ、始めようか!坊主よぉ!!」

お互い戦闘態勢に入るとPVPの戦闘アナウンスが響いた――――


――――PVPモード展開・・・・

――――――――3・・・2・・1・・・レディーーーーーファイッ!!!


――――――開始の合図の瞬間・・・・・ライザーが走りだし斧を振り回しながら襲いかかってきた。


「おりゃあああああぁぁぁ!!怨むなよ!坊主ゥ!!」

「遅い・・・・武器の熟練度マスタリーがまだまだだな・・・!」

ライザーの縦振りを俺は潜りこむように回避しながら腹、足、腕に強烈な連撃を入れると・・・ライザーの体力バーが一瞬にして無くなり・・・・


「・・・・・・ガッハッ!?・・・・バカ・・ナ・・・・」

ライザーは連撃によるダメージで体力バーが消し飛び、その間・・・何が起こったのか周りのプレイヤーも状況をあまり把握できておらず・・・ライザーが倒れたとこを見ると、俺が勝った・・・やっと認知した。

そして、周りが賑やかに騒ぐ中、フードを被ったプレイヤーが近づき・・・


「―――――あの動き・・・・本当にあの人の・・・・

あのプレイヤーは一体、何者?」

フードを被ったプレイヤーはPVPカーソルを俺に合わせ、ニヤリと笑いながらPVP申請をした。


―――――バトルエンド!!ウィナァァーームクロォォォ~


「―――――――――あの一瞬で何が起こったかわからなかったが・・・あのムクロとかいうプレイヤーがマジでライザーをやりやがったァ!!!」

「――――――――うぉぉーーーーーすげーぞ!!ムクロ!!!」

辺りのプレイヤーが勝利の歓声で沸いていた。

そして、公式のPVP戦でちゃっかりとライザーはアイテム賭けにチェックを入れており、勝利した俺にシステムの案内が入った。


「―――――勝利者の権限により相手のアイテムから戦利品を選べます、何にしますか?」

俺に勝利者権限で受け取るアイテムを選ぶカーソルが現れ、ライザーのアイテムカーソルを見ると・・・どれもゴミばかりで受け取る気が失せ・・・・


「いらねぇ・・・・・キャンセルっと。」

そう一言呟き、俺のステータスアイコンを見ると新たにPVPの申し込みが届いていた・・・・

その相手は―――――――


「次は、私の番ね。

ライザーはガサツで乱暴だけど戦闘の面では腕の立つプレイヤーの筈よ、あなたは・・・一体何者なの?」

そう言いながらフードを投げ捨て・・・そのプレイヤーの中身が露わになった。

――――――整った顔立ち、長い銀色をした綺麗な髪、そして特徴的なデザインの施された独特な白い服装の剣士であった。」


「――――――ふむ、キャラメイキング・・・・4時間ってところか―――」

「―――――何、じろじろ見て判定しているのよ!!

あと、メイキングはもっと時間かかってるわよ!!」


「――――――あれは・・・白百合の剣士だ!!」

「―――――――マジかよ!噂通りの美人プレイヤーじゃん!!」

「―――――――あぁ~~~PTくみて~~~いや、組んでください!!」

ライザーとは違って、男どもの黄色い声援が女剣士に降り注いでいた。

その言葉を聞くと女剣士は顔を赤く染め震えていた――――


「お前、結構人気モノだな。

それだけ人気なら、少しは腕がいいって事でいいんだよな?」

「お前じゃないわよッ!私にもちゃんと名前があるのよ!

体力バーの横にも書いてあるでしょ!ユリハって!」

――――――ユリハは凄い顔をしながら俺に怒鳴りつけていたが・・・・

腰にぶら下げている剣は中々いいモノを使っている様子で。

防具も今までに見たことないモノで丁寧かつ大胆な作りをしていることからオリジナルデザインの装備とみてまず間違いはなかった。

そして・・・何より見栄え良し、スタイル良し、それに――――このノリ・・・・是非、これから一緒に冒険したいものだ―――――


「変態マスター、それ以上あの方で妄想遊びするのはおやめになってください。

マスターの意識が感じ取れる私の事も考えてください。

それにしても先程の戦闘、見事でした。

マスターがレベル差で勝てる可能性は0でした。

―――――そして、お次の・・・PVPも受けられるのですか?」

「当たり前だろ?だって目の前にいる噂になるほどのプレイヤーからの挑戦状だ。

逃げたら絶対に損だろ!」

俺が俄然やる気になるり、戦うというとルミ子がため息をついてパッと宙に飛び、観察モードに入った。


「えぇっと、その・・・私はあなたの事をムクロ・・・君と呼ばせてもらうわ・・・それはそれとして!!ムクロ君は一体私でどんな妄想してたのよ!?

これ以上私の妄想恥辱は許さない!!

さぁ!!勝負よ!ムクロ君!」

レイピアを引き抜きカタカタ震えているユリハを見ながら俺はニヤリと笑みを浮かべながら提案した。


「なぁ、・・・このPVPで賭けをしないか?

俺が負けたら、何でも言うことを聞いてやる。

ユリハが負けたら、このゲームを遊びつくしてクリアするまで俺と冒険仲間になる・・・で、どうだ?」

「――――――フフフ、いいわ!その賭け乗ったわ!!」

ユリハは呼吸を落ち着かせ、真剣な目をしてレイピアをゆっくりと構え直し。

構えや目の力強さを見るだけで・・・ユリハは、普通のLv15の域ではないプレイヤーだとすぐに分かった。

その覚悟の入った面を見ると俺も少し力を出して戦うことを意識し、PVPカーソルの了承ボタンを押した。


「負けても泣かないでくれよ?」

「そっちこそ!負けてからやっぱなしとか言わないでよ!」

俺が剣を構えると、PVPアナウンスが始まりの合図を告げようとしていた――――――


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