第5話 或る想い。

神様が人間に恋をした。





人間はいつも帽子を被っていた。古臭い言葉遣いをして洋服も何処か可笑しく、まるで武士のようだった。



人間は学生という職業だった。学校という場所では、いつも熱心に紙と筆で何かを書いている。



神様は、長い間楽しげに人間を観察していた。



人間は毎朝同じ時間に起きて同じ事を繰り返す。その毎日が彼にとって幸せな物であるのだろうかと、神様は思った。



……話がしたい。


聞いてみたい。


触れてみたい。


時々作る美味しくなさそうな手料理が食べたい。



神様は直に、まるで自分が人間のような感情を持ち出している事に気付いた。


これがきっと愛しいという気持ちなのだろうと。


神様はきりきりと痛い胸を抑え思った。全く感情というものは困ったものだ。




そして、神様は微笑んで精一杯の笑顔を作り、言った。






「やあこんにちは人間君」








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人間と神様の御話。 @pyui

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