第4話
自分の涙で目が覚めた。気が付けば、日が昇りはじめていた。
懐かしい夢を見た。あくびと共に大きく伸びをする。朝ご飯を取りに歩き出す。
彼と会ったのはもう何十年も前になる。あれから月日は流れ、すっかり景色も変わってしまった。
土がむき出しの道はきれいにアスファルトで舗装され、木造の低い家が多かった街並みも高層ビルが多く立った。
なじみの魚屋に行くき一声鳴くと、気づいた店主のおじさんが前日の売れ残った魚をくれた。器用にくわえ店をあとにする。
長い年月を生きてきた。親兄弟と過ごした日々、一人ぼっちになって猫又と呼ばれるほどに生きるとは思ってもいなかった。
人間は仲間同士でも争う。殺し合い、奪い合う。猫である自分も無関係ではいられなかった。
食糧難で食べるものもろくに手に入らなかった。時として食べられそうになったこともあった。
それに比べたら今は毎日が穏やかすぎて、あくびが出る。
朝食を終え、日差しにまどろんでいるうちに再び過去へと思いをはせる。
家を出てから数日が経った。そうしても彼のことが忘れられない。
もう一度撫でてほしいと思った。お礼の一言も言えていない。ふと、一つの考えが浮かぶ。
その家は
チャイムを鳴らすと中から彼が出てくる。
ドキドキする胸を落ち着け、用意していた言葉を口にする。
「あ、あの、飼い猫がお世話になったようで」
「ああ、あの猫ちゃんの。無事に戻ったんですね」
ずっと気がかりだったと、青年は顔を崩す。その笑顔に胸がさらに跳ねる。
「あ、ありがとうございました」
もっと沢山話したいことがあったのに、頭が真っ白になった。気恥ずかしくなって青年の顔も見れずに、頭を下げ帰ろうとした。その背中を青年が呼び止めた。
「もし、よければお話しませんか」
客間へと通される。しばらくしてホットミルクを出された。一瞬正体がバレたかと固まっていると、嫌いだろうかと、青年のオドオドした声がした。
お茶などよりは、こっちのほうが大好きではある。
「い、いただきます」
ぎこちなく返事を返し、一口含む。人肌程度に温められたミルクが口に広がる。
助けてもらってからも何度か口にした懐かしさに、自然と笑みがこぼれる。
名前を聞かれ、とっさに
30分ほど話をして家を後にした。
緊張でどんな話をしたか覚えていなかった。唯一彼の名が
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