旅立ち
夕日を背に、田んぼのあぜ道をガイを乗せた大型バイクが走っている。サイドカーには白狐が乗っていた。
「本当によかったのかえ?」
「何がだ?」
「あの親子の事じゃ。家族みたいなものだったんじゃろ? 助けなくてよかったのかと聞いておるんじゃ」
白狐はどこか寂しそうな顔で言う。もしかしたら、巻き込んだことに対して多少の後悔があるのかもしれない。
「ふーん……意外と優しいとこもあるんだな」
「ば、馬鹿もの! 心配などしてはおらぬ」
白狐は言いながら顔をそむけてしまった。その様子にガイは小さく笑う。
「まあ、大丈夫だ。あの場所も元々は再開発をする予定だったからな。ちょいと被害は大きくなったが、おやっさんもケン坊もそのうち普通の暮らしに戻れるさ」
あぜ道にはバイクの音だけが響き渡る。夕日が二人を照らしている。
「それにやつらが次に現れる場所がわかるんだろ?」
「そうじゃ、わらわの占術によれば、次の襲来の日と場所はすでにもうすぐわかるじゃろう」
「じゃあ、そいつをぶちのめさねぇとならないな。凶つ星だか何だかしらねぇが、それで困るやつらが出るなら、助けてやらねぇとならないからな」
ガイは空を見る。そこには常人には見えるはずのない黒き星がはっきりと存在していた。
「……本当に人のまま戦うんじゃな?」
白狐は真剣な声で聞いてくる。
「なんだ、いくら言ってもオレは変わらねぇぞ」
「……人の心は弱い、いつか己の強大な力に心が潰されるときがくるやもしれぬ。本当にいいんじゃな?」
白狐はガイの顔を見つめる。
「なんだ? 心配してくれるのか?」
ガイはにやりと笑いながら言う。
「ば、馬鹿者! わらわが人間如きを心配するはずがなかろう! お主が負けたらこの国が滅ぶやも知れぬから忠告しておるのじゃ!」
白狐は顔をそむけてしまう。その様子にガイは大声で笑う。そして言い放つ。
「安心しな。困ってる人がいる限り、オレの心が折れることはねぇからな」
~鋼鉄武将 凱炎王 完 ~
鋼鉄武将 凱炎王 鶏ニンジャ @bioniwatori
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