第9話 沈黙

言葉は想いを伝えるためにある。

でも…想いの全てを言葉にすることはできない。

どんなに饒舌じょうぜつな人でも、その想いを統べて吐き出すことなどできないと思う。


僕は…伝えたい想いを口に出せない。

「もう会いたいよ」

彼女のそんなメールの返信にすら戸惑う。


僕の逢いたいと彼女の逢いたいは同じではない。


彼女の逢いたいは一時でいいのだ。

仕事へ行く前の1~2時間、逢えればいいのだと思う。


僕は…送迎ついでに食事を奢って…それだけ…。

そんなこと好きでやってるわけじゃない。

そんなことでしか逢えない自分が情けなく…嫌悪している。


時々、彼女と居ても無口になる。


僕の沈黙は…僕の想いの全てを吐き出しているようにも思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る