第6話 会社員時代

1984年4月2日。私はアサヒビール株式会社に入社した。当時の社長は村井勉氏。樋口廣太郎氏が社長になり、スーパードライが発売される前のことである。


さて、会社員時代のことを書いて良いのだろうか。守秘義務の問題がある。業務上知りえた事は、すべて守秘義務の対象なのだ。だから、会社員時代のことをどこまで書いて良いかは、アサヒグループホールディングスの人事部に事前に確認をとる必要があるだろう。


なに、会社員時代のプライベートな部分についてなら書けるだろうって。はて、会社員にプライベートがあるだろうか。「サラリーマンは個人ではない」と言い放ったのは西部暹氏だった。多少意見は異なるが、同意できるところもある。


私が、同僚の中島君と飲みに行った。私費だったとしよう。はて、これは会社とは関係の無い話だと言い切れるか。ああ、哲学か、政治学か、社会学の問題になってきた。人事部の見解が出るまで、この章は中断しておこう。


(以下、アメブロ2016より)20200124コピペ


入社2年目。25歳で東京に転勤になった私は、自動的に労働組合の本支店支部の組合員になった。ユニオン・ショップ制なので選択権はない。そして、組合費が給料から天引きされる。


当時の私の会社員としての評価は切れ者だった。まだ、パソコンの普及していない時代にシステムを作っていた。面倒な仕事は外注先をみつけてアウトソーシングにした。私が仕事にもとめていたのは、給料はもちろんだが面白さだった。イノベーション(革新)こそが仕事の本質だと考えていた。昇進など学歴の時点で諦めており、興味がなかった。


そんな時、労働組合の書記長が次の書記長になって欲しいと言ってきた。寮が一緒で、良く知る先輩だったので、断りにくかった。結局、私は書記長候補となり信任投票を経て本支店支部の書記長になった。


労働組合にはそれぞれ体質がある。私のいた会社は典型的な御用組合で、エリートが組合本部に専従で行き、彼らは人事部とツーカーで出世コースだったのだ。私はそういう世界に興味もなければ、あまりにも無知だった。熱心に組合員の声を聞くだけでなく、意識調査のアンケートを行うなど、本部や人事部を刺激することを平気でやった。会社の施策に直接、異議申し立てもしたし、異例ながら団交を申し入れて実施したりもした。大胆不敵である。


お陰で人事考課はブラックリストに入り、同期のようには昇進しなかった。


しかし、仕事は楽しかったし、お金はあった。書記長は会計担当も兼ねていたので、かなりの経費を使えたのだ。会議費や教宣費の名目で、頻繁に飲食していた。今なら考えられないだろうが、それが当時の慣行だった。


毎月1回、執行委員会という会議があった。会議の後には必ず飲み会。執行委員には組合費から手当が出ていた。確か、月5000円だ。書記長はもっとあった。もちろん、会議後の飲み会は会議費だ。無茶苦茶である。


それでも病気で入院した人のお見舞いに行ったり、木目細かい活動もしていた。ボーリング大会などもした。数百人の大所帯だ。それは壮観だった。


流石に内容は書けないが、この本支店支部が人事部の標的になり、定期異動で問題児が全員転勤になった。もちろん、私もだ。もっとも、私は希望通りにシステムの子会社に出向になったのだが。


青い空と青い海のような20代。眩しい時代が、私にもあった。


(順前後)


3ケ月の東京での研修を終え、7月1日に発令があった。事務系は8割方が営業担当だ。ドキドキしていたのに、発令はなんと神戸支店総務課だった。は、地元ですか、実家から通えって。チョベリバ最悪。家族とは仲が悪いし、神戸は嫌いなんです。俺はマジでショックを受けた。銀座から上野まで歩きソープランドに行った。慰めて欲しかったのだ。おい、こんな奴が総務課でいいのか。

配属に意義申し立てはできない。家は豪邸で両親はまだ同居していた。当時の神戸支店はJR神戸駅そばのビル全棟。1階は倉庫、2階が事務所、3階は無かった気がする。いや、あったかな。まあ、私は大人だった。数年上の先輩が子供に見えた。擦れていたということだ。仕事は出来た。仕事は真面目だった。まあ、少しずつ書こう。長編になるかもしれない。編集は難しいだろうな。乱脈。断片的な自伝の次は。乱脈的履歴書か。まあ、お許しください。


引っ越し。神戸の実家には、父と母と弟がいた。みんな仲が悪かった。私は嫌気がさして、父からお金を貰い、ワンルーム・マンションに引っ越した。阪急六甲から徒歩すぐのところである。わがままだったのだ。貧乏なのに。

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