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「留空、久しぶりだね。悪阻つわりはおさまった?無理しなくていいのに。有給使い切ればいいのよ。ねぇ、庶務さん」


 陽乃は私に視線を向け、笑みを浮かべる。


「そうだね。そうすれば?」


「退職願いを今月末で受理してもらったから、そうはいかないわ。引き継ぎもあるし……」


「留空は真面目ね。挙式披露宴の日取り決まったの?望月さんは医師だし、派手婚でしょう?楽しみだわ」


「陽乃は望月さんのセレブな友人目当てなんでしょう」


 美空の言葉に、陽乃は笑って答える。


「当たり前じゃない。披露宴は最高の出逢いの場。みんな気持ちは昂っているからね。恋の連鎖反応起こすのよ」


「陽乃らしいわね」


 留空は気分が悪そうに、口元にハンカチをあてる。


「悪阻が酷くて、退職したら入籍するつもりだけど、挙式披露宴は安定期に入ってからするつもりなの」


「そう。赤ちゃんが一番だもの、体大切にしてね」


「ありがとう。それよりも柚葉、木崎さんとの結婚前提のお付き合いを断ったって本当?」


「……ぇっ」


 美空や陽乃にはまだ話していなかったことを、留空に意図も簡単に暴露され、思わず首を竦めた。


「柚葉!それ、本当なの?私聞いてないよ」


 ほら、陽乃が騒ぎ始めた。


「だって……誰にも話してないもの」


「やだ、上手くいってると思っていたのに。信じられない」


「私がいけないの。木崎さんのことを……好きになれなかったから」


 陽乃はフーッと溜め息を吐いた。


「吉倉さんが吹聴しているアノ噂が原因なの?」


「陽乃、アノ噂ってなによ?」


 美空が陽乃の言葉に反応した。吉倉は陽乃と同じ秘書課だ。素知らぬ顔をしていただけで、私と日向のことは吉倉から聞いていたはず……。

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