33

 部屋に入り机の引き出しを開け、ボタンを放り込む。


 なんであんなに哀しそうな背中してんだよ。


 俺がキスしたからか?

 それとも、あのコンビニ店長……。


 ベッドに寝転がり考え込んでいると、階下で男の怒鳴り声とガチャンと何かが壊れる音がした。


 誰かが店内で暴れているようだった。


 ただ事ではないと理解するのに、数分時間を要する。


 階段を駆け降りると、人相の悪い男達が店の椅子やテーブルを壊し暴れていた。さっきまで楽しく酒を飲んでいた客は店の外から遠巻きに見ている。


「何やってんだよ!父ちゃん、母ちゃん大丈夫か!」


「はん?威勢のいいガキだな。ガキには用はねぇんだよ!引っ込んでな。俺達は借金の取り立てに来たまでだ」


 借金……?

 親父の借金か?

 親父の借金なら、毎月きちんと返済しているはずだ。


日向弘美ひなたひろみはあんたの妹だよな。あんたは弘美の連帯保証人になってる。日向弘美は借金を踏み倒して行方不明なんだよ、元金と利息合わせて一千万、あんたが払ってくれるんだろうな」


 日向弘美は親父の実妹。

 小さなスタンドを経営している。


「一千万!?そんな大金はない」


「ない?あんたは連帯保証人だろ、あんたには支払う義務があるんだよ!」


「どうかこの店で暴れるのだけは勘弁を……。お願いします。弘美の借金なら毎月少しずつ返済しますから」


 店の床に額を擦り付け、取り立て屋に土下座する親父を見て怒りが沸き起こる。


 苦労してやっとここまで築き上げた店なのに……。


 叔母さんの連帯保証人になったばっかりに……。


「父ちゃんも母ちゃんも悪くない!うおぉー!!」







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