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「つうか、俺、進学する気ねぇから、悪いけど帰ってくんねぇかな」
彼は制服のシャツを脱ぎ捨て、黒いTシャツを着る。Tシャツの背中には
自分が獣だと、ちゃんと自覚しているようだ。
「それは困ります。初日でクビなんて、会社に何を言われるか……。そんなことをしたら、もう生徒さんを紹介してもらえなくなる」
彼は私に背を向け、鏡を見ながら殴られた口角を触った。鏡越しに彼と目が合う。
「そっちの事情なんか知らねぇよ。あんたプロじゃねぇのか。もしかして大学生のバイト?」
彼は持っていた鏡をベッドの上に放り投げ、私の顔をマジマジと見つめた。
「……私は大学生ですけど、それが何か」
「小遣い稼ぎのバイトが、落ちこぼれの俺に勉強教えられんの?大学なんてくだらねぇ。学歴なんてクソくらえだ。俺は受験するつもりはねぇから。ていうか、どうせ受験しても落ちるだけだ。金のムダだよ」
「でも……。電話申し込みの際も、今も進学希望って……。あなたが本気でやればまだ間に合うと思うの」
彼はベッドにゴロンと横たわり、私を見ている。
「まだ間に合うねぇ……。俺の成績知らねぇくせに」
彼の視線が、私の頭のてっぺんから足下まで、這うようにゆっくりと動いた。
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